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円形脱毛症とステロイド塗り薬 [医学・医療短信]

円形脱毛症治療で評価が上がったステロイド塗り薬
  齊藤典充 / 横浜労災病院皮膚科部長

「円形脱毛症」と「男性型脱毛症」には、日本皮膚科学会の診療ガイドラインがあり、どちらも7年ぶりの改訂となる2017年版が公開されています。

 診療ガイドラインは、現時点でのエビデンス(科学的根拠)に基づく最善の治療とその推奨度を提示したものです。

 これらの作成には、私も委員の一人として参加しています。

 17年版ガイドラインでは、それぞれ何が変わったのか--。

 まず円形脱毛症について新たに評価された治療などを取り上げてみましょう。

 推奨度がランクアップした治療法

 診療ガイドラインでは、科学的な根拠に基づいて治療の推奨度がA~Dに分類されています。

 最も評価が高いのはA「行うように強く勧める」。

 次はBで「行うよう勧める」。

 C1は「行ってもよい」、C2は「行わないほうがよい」、

 Dは「行うべきではない」という評価になります。

 円形脱毛症の治療には残念ながらAと評価されるものがなく、最も高い評価がBで、4項目あります。

 ステロイド局所注射や、一時的にかぶれを起こさせる局所免疫療法は、推奨度が変わらずBです。

 今回の改訂では「ステロイド外用療法」がC1からBにランクアップし、新たに最高評価になりました。

 ステロイド外用療法は、ステロイドの塗り薬を用いる治療です。

 湿疹やアトピー性皮膚炎などによく処方される薬なので、いまさら円形脱毛症の治療として“評価”されることは、意外に思われたのではないでしょうか。

 なぜランクアップしたのでしょうか。

 効果は知られていたが、根拠が足りなかった

 円形脱毛症は、アトピー性皮膚炎を合併している人が多く、湿疹を治すためにステロイドの塗り薬を処方することがあります。

 すると薬を塗っていた頭皮から髪の毛が生えてくることがあり、円形脱毛症に効果があることは、皮膚科医の間では知られていました。

 しかし、ステロイド外用薬はあまりになじみのある治療のため、皮肉なことに科学的な根拠となる研究報告がなかなか集まらなかったのです。

 診療ガイドラインでは、「使ったら効きました」では有効とは評価されません。

 前回の改訂以降、ステロイド外用薬とプラセボ(偽薬)を比較した二重盲検法の報告がいくつか出てきたことで、ようやく効果が証明され、今回の評価につながりました。

 新しい治療ではありませんが、自信をもって勧められる治療が一つ増えたことになります。

 副作用が少なく効果があるステロイド外用薬

 ステロイド外用薬は、塗り過ぎると皮膚が薄くなる副作用があります。

 使用には注意が必要ですが、それを守れば効果のある治療です。

 ステロイドの内服薬より副作用が少なく、さらに、地域の皮膚科クリニックでも治療が受けやすいこともよい点だと思います。

 ちなみにその他の治療は、前回の評価と変わらないものが多く、ステロイド内服療法、静脈注射によるステロイドパルス療法、紫外線療法は、ともにC1になっています。

 B評価になったかつらの使用

 17年版の診療ガイドラインでは、推奨度がBになったものがもう一つあります。

 それは、「かつら(ウイッグ)の使用」についてです。

 かつらは治療ではありませんが、着用によって見た目が回復すると、患者さんの生活の質が大きく改善するという研究報告が多数出てきたことで、評価が上がりました。

 円形脱毛症は、再発しやすく、脱毛の状態もそのたびに変わります。

 ですから、髪が生えてくるかどうか治療のことばかり考えるのではなく、「日常生活がふつうに送れる」「楽しいと思って過ごす」「病気によって変わった見た目を改善し、自信を取り戻す」ことが大事です。

 かつらはそのためのアイテムであり、つけることは恥ずかしいことではありません。

 各社から販売されているかつらは、質が良くなり、値段も高価なものからそうでないものまで幅広く、選びやすくなっています。

 必要になった時だけレンタルを利用する、部分的なウイッグで脱毛した箇所をカバーするという選択肢もあります。

 特別なものと思い込まずに、おしゃれのためのグッズという感覚で前向きに活用してみませんか。 【聞き手=医療ライター・阿部厚香】
 <毎日新聞 医療プレミア>による
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頸動脈プラークの進展、待っているのは? [医学・医療短信]

吹田研究が世界に示した頸動脈エコーの意義
 頸動脈プラークの進展が循環器病発症を予測

 国立循環器病研究センター予防健診部医長 小久保喜弘

 われわれは、地域住民を対象にした吹田研究において、頸動脈プラークの進展が循環器病〔脳卒中、冠動脈疾患(CHD)〕の発症に関連することを世界で初めて明らかにした。

 この研究のポイントと臨床的意義について解説したい。

 研究の背景:現行GLでは「根拠がないので勧められない」

 頸動脈エコーは、頸動脈壁の内膜と中膜の複合体の厚さ(intima-media thickness;IMT)を定量的に測定する検査である。

 IMTと循環器病との関連を検討した代表的な研究としては、PROG-IMT共同研究による16論文のメタ解析がある。

 それによると、総頸動脈平均IMTと循環器病の発症に関連が見られたが、総頸動脈平均IMTの進展と循環器病の発症リスクとの間には関連が見られなかった(Lancet 2012;379:2053-2062)。

 日本脳神経超音波学会によるガイドライン(GL)『超音波による頸動脈病変の標準的評価法 2017』では、IMTを予後指標の代用マーカーとすることについて、一般住民に対しては「C2:根拠がないので勧められない」となっている。

 研究のポイント: 総頸動脈最大IMT 1.1mm超群で発症リスク増加

 今回の吹田研究では、1994年4月~2001年8月に健診時に頸部超音波検査を実施し、追跡可能な4,724人を解析対象とした。

 頸部超音波検査は総頸動脈、分岐部、内頸・外頸動脈の測定可能な全ての領域を計測した。

 平均12.7年の追跡期間中に脳卒中発症が221人、CHD発症が154人で観察された。

 総頸動脈平均IMT、総頸動脈最大IMT、全頸動脈最大IMTのいずれも、大きいほど循環器病発症リスクが高かった。

 10年後のCHD発症リスクを予測するアルゴリズムである「吹田スコア」に各種頸動脈IMT値を加え、C統計量と純再分類改善度を用いて検討すると、総頸動脈と全頸動脈の最大IMTで有意な予測精度の向上が認められた。

 次に、総頸動脈最大 IMT1.1mm超を頸動脈プラークと定義し、ベースラインで頸動脈プラークを有さない追跡可能な2,722人に対して、頸動脈エコー検査を2年ごとに行って2005年3月まで追跡したところ、193人が追跡中に新たに頸動脈プラークに進展した。

 それ以降2013年12月(平均8.7年の追跡期間)までに、脳卒中69人、CHD 43人の発症が観察された。

 頸動脈プラークに進展した群では進展しなかった群と比べて、循環器病と脳卒中の発症リスクの上昇が見られた。
 
 さらに、追跡期間5年当たりに総頸動脈最大IMTが 1mm進展(肥厚)すると、循環器病発症のハザード比(HR)は2.9、脳卒中発症のHRは3.1と有意なリスク上昇を示したが、全頸動脈最大IMTが1.7mm進展する場合の循環器病の発症リスクは有意でなかった。

 また、追跡期間5年当たりの総頸動脈最大IMTの進展が最も大きかった群(上位25%、第4四分位)と最も小さかった群(下位25%、第1四分位)を比較すると、5年間に両群とも糖尿病の増加、喫煙率の低下が見られた。

 一方、最も小さかった群では、高コレステロール血症治療薬(主にスタチン)および降圧薬の服用率の上昇、過剰飲酒の減少、拡張期血圧の低下が見られ、最も大きかった群ではBMIの増加が見られた。

研究の臨床的意義:集約的で有効な予防法となる

 今回の研究により、循環器病の予防における頸動脈エコー検査の意義を示すことができたと考えている。

 すなわち、頸動脈エコー検査を実施して、分岐部や内頸・外頸動脈の狭窄や潰瘍などを確認し、総頸動脈最大IMTが1.1mmを超えるかどうかを判定することが集約的で有効な予防法となる。

 今後、頸動脈硬化症のリスクスコアを開発することが可能となった。

「Medical Tribune 」 6月22日  による。

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日本人前立腺がんの特徴 [医学・医療短信]

剖検標本から見た日本人前立腺がんの特徴

 ラテントがん研究の最前線

 生前、臨床的に前立腺がんの徴候が認められず、死後の解剖により初めて前立腺がんの存在を確認した症例と定義されるラテントがん。

 ラテントがんは前立腺がんの真の罹患率を知る手がかりといわれている。

 従来、日本人は欧米人と比べて前立腺がんの罹患率が低いとされてきたが、近年は増加しており、その原因は明らかでない。

 前立腺がんに人種差が存在するか否かを明らかにするためには、統一のプロトコル(手順、規約)に基づく検討が必要となる。

 東京慈恵会医科大学泌尿器科講師の木村高弘氏は、ラテント癌研究に基づく日本人前立腺がんの特徴について第106回日本泌尿器科学会で解説した。

 日本人の前立腺がんは白人並みに増えている

 2008年からラテントがんの調査を行っている木村氏らは、白人とアジア人の前立腺がん罹患率の比較を、カナダ・トロント大学と共同で実施。

 前立腺特異抗原(PSA)検診の普及率が同等である日本人とロシア人剖検例を対象に、統一プロトコルおよび中央病理診断でラテントがんの頻度を検討した。

 その結果、ラテントがんの頻度はロシア人37.3%(220例中82例)、日本人35.0%(100例中35例)と同等であった。

 一方、ラテントがん症例の詳細を見ると、日本人では白人と比べて高齢で前立腺重量が軽く、悪性度が高いことが明らかになった。

 日本人の前立腺がんは増えているのか。

 同氏は東京慈恵会医科大学病院における1983〜87年の剖検例501例と、2008〜13年の剖検例127例でのラテントがんの頻度を比較。

 ラテントがんの割合は1983〜87年では20.8%、2008〜13年では43.3%と増加、その比率は全ての年齢層において約20%増加していた。

 また、前立腺重量はどの年齢層でも2008〜13年の剖検例において有意に増加しており、70歳代以降に大きな増大傾向を示した。

 腫瘍体積も有意に増加しており、特に70歳代以降で急激に増加していた。

 このことから同氏は、日本人の前立腺がんが増えているのはおそらく事実であり、しかも「有意な(臨床上問題となる)がん」が増えていると述べ、日本では人種的変動が少ないことから、罹患率の上昇は環境要因(食生活の欧米化など)が示唆されると考察した。

 日本人の前立腺がん局在の特徴はapex-anterior cancer(前立腺尖部側の前方がん)

 それでは、白人並みに増えた前立腺がんは、欧米型になったのか。

 従来、欧米人ではほとんどが尿道の後面に位置する後方がん(posterior cancer)であるのに対し、日本人の前立腺がんは移行領域(TZ)、尿道の前面に位置する前方がん(anterior cancer)が多いとされている。

 木村氏が2007〜16年の東京慈恵会医科大学病院における剖検例171例のうち、ラテントがんと診断された68例を対象に前立腺がんの局在を検討したところ、前立腺尖部側の前方がん(apex-anterior cancer)が多いという日本人の前立腺がんの特徴が、現在も保持されていることが明らかになった。

 日本人に多いanterior cancerは、腫瘍が大きいが転移は少なく予後が良好といわれている。

 以前は、前立腺全摘症例のうち、ほぼanteriorに位置するTZ(移行領域)では術後の再発も少なく予後が良好とされていた。

 しかし、最近の全摘標本での検討によると、anterior cancerとposterior cancer(後方がん)の腫瘍容量に差はなく、切除断端陽性率も同等であるという。

「以前は直腸診が診断の中心であったため、前方がんの発見が遅れていたが、今ではMRIや生検方法の進歩によって前方がんがより早期に見つかっていることを反映している」と同氏は考察した。

 日本人前立腺がんは分子学的にも欧米人と異なる

 さらに木村氏は、日本人前立腺がんの分子学的特徴を検討した。

 前立腺がん特異的融合遺伝子TMPRESS2-ERGが欧米人では約50%の前立腺がん症例に認められる。

 一方、日本人ではこの頻度が低い特徴があるが、同氏らの日本人前立腺全摘症例においても16.3%にとどまったという。

 関連分子としてSPINK1の過剰発現があるが、欧米人におけるSPINK1の発現の頻度は5.9〜15.3%である。

 そこで、膀胱全摘検体で発見された偶発がんと生検時に転移を認めた転移がんを対象に、日本人前立腺がんのフェノタイプを検討したところ、ERGの発現は偶発がん、転移がんといった病期にかかわらず15%程度と欧米人よりも低く、SPINK1の発現は偶発がん6.5%、転移がん12.2%とおおむね欧米人と同等であった。

 このことから同氏は、日本人前立腺がん特有の特徴は分子学的にも保持されていると述べた。

 化学療法未施行の去勢抵抗性前立腺がん

(CRPC)に対するアビラテロンの第Ⅲ相試験COU-AA-302に参加した患者を対象に、生検時の前立腺がんにおけるTMPRESS2-ERG遺伝子変異の状況と予後を比較した成績によると、ERGの発現量だけでなく融合遺伝子コピー数の増加などがアビラテロンの有効性に関係しているとの報告がある。

 また、同氏の研究結果からSPINK1の発現が転移性前立腺がんに対するホルモン療法導入からCRPCとなるまでの期間と相関することが分かった。

 これらのことから同氏は、日本人前立腺がんの治療戦略について「日本人特有のTMPRESS2-ERG遺伝子変異の頻度、ERGやSPINK1の状態が薬物療法の効果に影響を与えている可能性があり、今後の検討が必要だ」とまとめた。(長谷川愛子)

医学新聞「MedicalTribune」による
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歯周病が認知症を悪化させる [医学・医療短信]

歯周病が認知症の症状を悪化させる!?

 歯周病とは、歯肉などの歯周組織が、歯周病菌によって炎症し破壊される病気です。

近年、歯周病菌が、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎、早産などと関連している点が明らかとなっていますが、認知症についても炎症を介した解明が進んできました。

 認知症の原因疾患のひとつ「アルツハイマー病」。

 アミロイドβなど特殊なたんぱく質が蓄積することで、脳内の神経細胞が壊れ、脳が次第に萎縮していくと考えられています。

 しかし、なぜアミロイドβが蓄積するのかについては、明らかとなっていないのが現状です。

 国立長寿医療研究センター、名古屋市立大学などによる研究グループは、歯周病菌がアルツハイマー病の危険因子となる可能性について研究を進めてきました。

 研究は、アルツハイマー病のマウスに、歯周病の原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を感染させるというものです。

 Pg菌に感染していないアルツハイマー病のマウスに比べ、認知機能が低下し、脳内のアミロイドβの沈着が増加するということです。

 同研究では、Pg菌に感染することで、血清中や脳内の炎症性サイトカインなどが増加して、神経・血管にも炎症を起こし、最終的にアルツハイマー病を悪化させる可能性も指摘されました。

 研究グループは、今後Pg菌がどのように脳内に広がっていくのかを解明し、歯周病によるアルツハイマー病の悪化を抑制できる可能性についても研究を進めていく予定です。

 アミロイドβの蓄積は、認知症を発症する20年ほど前から徐々に始まっているといいます。

 アルツハイマー病の好発年齢は70歳前後と考えられていることから、50歳前後からすでにアミロイドβの蓄積は始まっているわけです。

 現在はまだアルツハイマー病を完治させる治療法は開発されていません。

 しかし、歯周病は治療可能な病気です。早くから慢性炎症である歯周病対策に取り組んでおくことが、アルツハイマー病の予防にもつながるかもしれません。

 歯周病の症状が出始めるのは、おもに40歳代以降といわれています。

 歯科医院での定期的な検査を受けるようにしましょう。

 また、忙しい毎日を送っていると、歯みがきも手抜きになってしまいがちです。

 歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを併用した丁寧な歯みがきを心がけてください。

 最近では歯周の嫌気性菌をレーザーで焼く治療が広がり始めています。

 歯周病進行を防ぐ効果が期待されています。

 監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純
 「ケータイ家庭の医学」(C)保健同人社
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さびる体を防御する食べ物 [健康短信]

年齢とともにさびる体 抗酸化の食べ物で防御を
山下理絵 / 湘南藤沢形成外科クリニックR総院長

 世間をにぎわしたアメフットの悪質タックル事件は衝撃的でした。

 私は学生時代、バスケットボールをしていました。

 体育学部ではないので、コートでできる練習は週2回です。

 大学時代はコーチも監督もいませんでしたが、バスケが好きで、少しでもうまくなりたくて、試合に勝つために練習をしていました。

 命じられてタックルをさせられた選手は会見で「好きだったフットボールがあまり好きではなくなってしまった」と話していました。

 自分が好きでがんばってきたものを嫌いになるなんて、とても悲しいことです。

 62歳の指導者に対しては、誰もが怒りを感じていることと思います。

 トップに立つものは常に人の声を聞き、特に自己の意見と反する声を考える必要があります。

 権力を持った人の悪い典型例なのでしょう。

「男性更年期」になるとイライラとし攻撃的になり、ますます他人の声が聞こえなくなることも多いようです。

 ところで、「記憶にない、言ってない」と言う皆さんは、黒塗りの車に乗って病院に逃れますね。

 でも、病院は治療をするところ。

 静養やメディアからの逃避は別の場所でしてほしいものです。

 さて、この事件が世間をにぎわしていたこの1カ月ほどの間は学会シーズンと重なり、私は毎週1時間講演をしていました。

 肌の老化の原因と対策に重要な酸化の話です。

 活性酸素から身を守る“掃除屋”の抗酸化物質

 美肌の大敵のひとつが酸化です。

 リンゴをむいて放っておくと、シワシワになって茶色にくすみます。

 これが酸化現象です。

 体の一番表層にある皮膚は、常に酸化の脅威にさらされていますが、皮膚の上にある皮脂膜が防御しています。

 しかし、酸化にかかわる、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、過酸化水素などの「活性酸素」が増え過ぎると、シミやシワなどのさまざまな障害が生じます。

 私たちは、呼吸をして生きています。

 普段の呼吸で取り込んだ酸素全量の約2%が活性酸素になります。

 これが過剰になると、除去しきれなくなり、体内の細胞や組織を傷つけるため、あらゆる病気の原因になるのです。

 最近では、老化も活性酸素が原因ではないかと言われています。

 私たちは体内に、活性酸素と結びついて排除する掃除屋(スカベンジャー)という抗酸化物質を持っています。

 代表的なのは、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)やカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼです。

 しかし、このスカベンジャーの生産は22~23歳がピークで、40歳になると半減します。

 25歳で“お肌の曲がり角”を迎え、40歳で生活習慣病が増えるのは、これらの物質の生産量と関係があるのかもしれません。

 酸化で、お肌をサビさせないようにしましょう。

 抗酸化物質の積極的な摂取で酸化を防御

 加齢とともに、体内のスカベンジャーが減少するので、体外からの補充が必要になります。

 また、活性酸素が増えないように気をつけることも大切です。

 活性酸素が増える原因として、紫外線や放射線、電磁波、ストレス、たばこ、排ガス、アルコール、腸内の悪玉菌の異常発酵、過度の運動などが挙げられます。

 自己防御には、食物やサプリメントで抗酸化物質を摂取し活性酸素を減らすことも一つの方法です。

 ビタミンA(β-カロテン)、ビタミンC、ビタミンE、CoQ10、α-リポ酸、グルタチオン、カテキン、ポリフェノールなどのサプリメントや、これらの栄養素を含む食物を摂取することを心がけましょう。

 ビタミンCなら、レモンなどの柑橘(かんきつ)系の果物や、ブロッコリー、ピーマン▽Eなら、大豆、うなぎ、しじみ▽β-カロテンでは、ニンジンなどの緑黄色野菜▽リコピン(カロテン)ならトマト▽ポリフェノールはゴマや赤ワイン--から得られます。

 年齢とともに、体はサビ(酸化し)ていきます。

 暑くなってきました。

 紫外線対策を十分に、排ガスやPM2.5などの大気汚染に気をつけ、ストレスをためず良質な睡眠を取ってください。

 そして、抗酸化物質を上手に取ることが、アンチエイジング、美肌対策の一つだと言えます。

 明日は今日よりきれいになーれ。

「毎日新聞 医療プレミア」による。
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歯はいのち、全身病のもとになる [医学・医療短信]

40歳以上の8割が罹患 歯周病は怖い“国民病”
落合邦康 / 日本大学歯学部特任教授

 歯周病は、40歳以上の日本人の80%以上がかかっていると考えられており、「国民病」とも言われています。

「単なる口の中の病気でしょ?」と思っている人もいるかもしれませんね。

 歯周病を軽く考えてはいけません。

 実は、全身の病気に関わる非常に怖い病気なのです。

 自分の歯を持つ高齢者が増加

 歯周病患者が増えた理由の一つとして、年を取っても自分の歯を持っている人が多くなったことが挙げられます。

 口の中の病気では、かつては虫歯(う蝕<しょく>)が国民病と言われていました。

 歯科界は事態の改善に向けて、

「砂糖の摂取量を減らす」

「歯磨きの習慣を定着させる」

 という啓発活動に取り組みました。

 それが功を奏し、虫歯の患者数を大きく減少させることに成功したのです。

 そして現在は、高齢でも自分の歯を持っている人がたくさんいるようになりました。

 ある調査によると、高齢者の70~80%が20本以上の歯を持っている地域さえあります。

 歯がなければ歯周病にはならない

 自分の歯で食事をすることは、健康を維持するために重要です。

 皮肉なことに、このことが歯周病患者を増やしているのです。

 歯周病は、歯と歯肉の間にある歯肉溝内に、細菌が歯垢(プラーク)を作り、歯周組織(歯肉組織や血管)の中に原因菌(ジンジバリス菌を中心とした多くのグラム陰性桿菌<かんきん>)が入り込むことで起こります。

 歯がなければ歯肉溝は存在しませんので、細菌が生息できず、歯周病も起こらないわけです。

 歯肉炎と歯周炎

 歯周病は、歯肉が炎症を起こす「歯肉炎」から始まります。

 歯肉炎の時は、歯肉溝は3mm以下で、歯肉が赤く腫れ、軽い出血があります。

 その炎症が続くと、歯肉の下で歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶けてしまう「歯周炎」になります。

 歯肉溝は4mm以上と深くなります。

 口臭や違和感などの自覚症状があり、歯肉溝から膿(うみ)や出血があります。

 歯周病の治療

 歯肉炎は、歯科医や歯科衛生士から歯磨きの指導を受けて実践することで、比較的よく治ります。

 しかし、歯周炎になって歯槽骨が溶けてしまうと、健康な歯周組織の回復は困難です。

 ですから、軽度の歯肉炎の段階で早めに治療を行うことが大切です。

 予防方法は、日々適切に歯を磨き、定期的に歯科医による専門的な口腔(こうくう)ケアを受け、原因となるプラークを一定量以下に抑えることです。

 日常生活でもさらされる歯周病のリスク

 歯周病は歯周組織に原因菌が入り込むことで起こると説明しました。

 実は日々の生活でも、私たちは常に歯周病のリスクにさらされています。

 歯磨きや食べ物をかむだけでも20~50%、つまようじや糸ようじなどによる歯間の掃除(デンタルフロス)の後は約50%の確率で細菌が血管に侵入することが分かっているのです。

 健康で正常な免疫機能が維持されていれば、侵入した細菌は数時間で全て排除されます。

 しかし、免疫機能は加齢によって低下し、喫煙や肥満、ストレス、不十分な口腔清掃などが低下を加速します。

 高齢になるほど、また、生活習慣が乱れるほど、歯周病のリスクは高まるのです。

 歯科医だけでは治せない

 歯周病は「歯科医だけでは治せない」病気だということも覚えておいてください。

 虫歯は歯科医院に行けば、歯科医が治してくれます。

 一方、歯周病は、患者自身が生活習慣を改善し、歯科医師に指示された口腔ケアを長期間にわたって行う努力をしなければ治りません。

 歯周病は原因から結果まで、全てにおいて自分自身が関わる病気なのです。

 全身疾患とも深い関係

 冒頭にも説明したように、歯周病の問題は口の中だけにとどまりません。

 歯周病の炎症部位から細菌や炎症物質が血液によって全身に流れると、全身のさまざまな病気の発症に関わることがわかってきています。

 そのことについては、次回お話しします。

「毎日新聞 医療プレミア」2018年6月25日
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全世代適応。 熱中症の年代別注意点 [健康短信]

子どもからお年寄りまで 熱中症の年代別注意点
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長

 朝っぱらから太陽ギラギラ、猛暑到来!を実感。

 いよいよ熱中症の季節が始まります。

 専門医の助言をうかがいました。

 まず症例。
 
 夏の朝9時、佐藤さん(70歳女性)は、散歩中に足に力が入らなくなり、コンビニエンスストアの前で動けなくなってしまいました。

 頭痛と吐き気を訴えています。

 お店の人が119番、救急搬送されました。

 救急外来で医師の診察を受けました。

 外気温、運動中の出来事、症状から熱中症の診断となり点滴などの治療をうけました。

 夏の運動といえばやはり熱中症が心配です。

 熱中症が起こる3要素

 夏だから誰でも熱中症になるというわけではありません。

 熱中症になりやすいのは、どのようなことがそろった時でしょうか?

 1.環境(気温・湿度・風速・日射輻射<ふくしゃ>などが関係)

 2.からだ(高齢者、精神や心臓の病気を持つ方、普段の活動度の低い方にリスク)

 3.行動(屋外でのスポーツ、運動や労働など)

 この三つの要素のバランスによって起きるものと考えるのがいいでしょう。

 夏を中心に心配な熱中症は、体内における熱の産出と体外への熱の放散のバランスが崩れて、体温が上昇してしまう状態を指します。そして、夏以外でも気温が高ければ起きます。

 どのようなときに、熱中症を疑うべきでしょうか?
 
 具体的には、暑い環境にいる、もしくはいた後に、以下のような症状が表れている場合、熱中症の可能性を考えます。

 熱中症の症状は

 ▽めまい▽だるさ▽頭痛▽吐き気・嘔吐(おうと)▽失神(立ちくらみ)▽生あくび▽大量の発汗▽強い口渇感▽筋肉痛▽筋肉の硬直(こむら返り)▽意識障害▽けいれん▽高体温(深部体温 >40℃)--など。

 暑い環境にいたあとに、これらの症状を呈しており、なおかつ感染など他の原因疾患が考えられないという場合には、熱中症と診断します。

 どんなことが熱中症のリスクになる?

 熱中症は、若年や中壮年の人が体を動かしているときになる「労作時熱中症」と、高齢者が暑い環境にいることでおきる「非労作時熱中症」に大別されます。

 平日にオフィスワークをしているみなさんは、普段あまり運動をしていないのに休日の炎暑の日中にサッカー・野球などのスポーツをしたといった時に注意が必要です。

 前述の環境、からだ、行動の要素が見事にそろうため、熱中症で調子が悪くなることが多いのです。

 労作時熱中症は、「行動」の面から男性に多く起こります。

 熱中症が起こりやすい時間帯としては、正午ごろと午後3時前後に二つのピークがあります。

 スポーツは昼間の時間帯を避け、朝夕など比較的涼しい時間帯にやりましょう。

 ▽高齢者の場合は?

 毎年夏になると、熱中症による高齢者の死亡例が頻発します。

 高齢化と温暖化に伴う避けられぬ状況です。

 高齢者の熱中症の多くは「非労作時熱中症」です。

 典型的には、気温の上昇とともにエアコンがない、またはあってもつけていない自宅内で重度の熱中症を発症するお年寄りが増えます。

 非労作時熱中症とは、文字通り「運動や仕事など」がなくても日常生活の中で徐々に進行する熱中症です。

 そして、労作時熱中症よりも重症化しやすいという特徴があります。

 室内で発症する非労作時熱中症は、高齢の1人暮らしの人に多く、精神疾患や高血圧、糖尿病、認知症などの持病があると重症化しやすいと報告されています。

 認知症患者さんのご家族は、このタイプの熱中症があること、気温の上昇とともに注意が必要なことを知っておいてください。

 ▽子どもの場合は?

 子どもの難しいところは、コミュニケーションです。

「調子が悪い」「普段と違う」ということを大人のように自ら伝えられないことが多いからです。

 家族や大人が子どもの様子を観察し、「普段と違うのでは?」と気をつけることが大切です。

 気温が上昇した時に、

「いつもはとっても元気なのにだるそう」

「頭が痛いといって機嫌が悪い」

「食欲がなくてだるそう」などというサインを子どもが出していたら、家族や大人が見つけてあげてください。

 なかでも、水分が取れない、歩けないなど状態がより悪い場合には、医療機関を受診する必要があるでしょう。

 医療関係者も、ぐったりしているお子さんが来院した場合には熱中症を疑い、鑑別診断にあげることが肝要になります。

 予防で大切なことは?

 熱中症は重症化してしまうと入院なども必要になるため、高温多湿な環境で働いている人は日ごろから予防を徹底することが大切です。

 労作時熱中症の特徴は、今まで元気だった健康な人が、気温の高い外気にさらされることで短時間のうちに発症するということです。

 中壮年の場合は仕事中の発症頻度が高く、屋外の工事現場などで作業している人や、分厚い衣服を着て訓練を行う消防士などに多くみられます。

 以下、仕事中の熱中症予防のためにできることをあげます。

 ●涼しい服装をする

 ●体調を整える、体調の悪いときに無理しない

 ●炎天下での行動を避ける、慣れない運動などを控える

 ●休憩の頻度を増やす

 ●こまめに水分と電解質(ナトリウムなど)を補給する

 ●夜しっかりと寝て疲労回復に努める

 ●飲酒は疲労・脱水の原因となるため控えめに

  どんな飲みものがいいの?

 熱中症の対策の飲み物としては、経口補水液やスポーツドリンクなど、水分と電解質の補給に適した市販飲料を取ることをおすすめします。

 スポーツドリンクは糖分が多すぎるのではないかという意見もありますが、普段健康な人であれば、私はあまり気にしなくていいと考えています。

 こまめに水分をとって脱水にならないようにすることを重視してください。

 また、高齢者は自身の脱水に気づきにくい傾向があり、さらに、水分補給の際、塩分が少ない「お茶」を飲む傾向があります。

そのため、水分を取っているつもりでも、熱中症対策に必要な電解質が十分に補えているとは限りません。

 いかがでしょうか?

 「環境」についてはコントロールできませんが、「からだ」「行動」についてはコントロール可能です。

 これからの猛暑の季節に向けて、良い対策をして楽しい夏を過ごしていただければと思います。

「毎日新聞 医療プレミア」による
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夏に流行、「手足口病」? [医学・医療短信]

流行病の「手足口病」とは?

夏はさまざまな病気が流行しやすい季節です。

感染症の原因は、ウイルスや細菌などの病原体。梅雨時も高温・多湿となるので、病原体が繁殖しやすい時期です。

夏に流行りやすい病気のひとつ、「手足口病」について解説します。

夏風邪と間違いやすいので注意

手足口病は、主にコクサッキーウイルスA16(CA16)やエンテロウイルス71(EV71)といったウイルスによる感染症です。

5歳以下の子どもがよくかかります。

感染すると、3~5日後に口の中や手のひら、足の裏などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。

そのほか、発熱や食欲不振、下痢、嘔吐などの症状も出ますが、発熱のない場合もありますし、発熱してもあまり高い熱は出ません。

発疹が少なく見逃してしまっていたり、あせもなどと勘違いしたりすることもあり、夏風邪と間違いやすい場合があります。

発疹は水疱瘡(みずぼうそう)のときのように「水ぶくれ」になっていますので、よく注意してみてください。

確かに水疱瘡とも似ていますが、この病名にあるように、「手足口」を重点的にチェックです。

水疱瘡であれば、お腹やお尻なども含め、体中に出てきます。

特効薬はありません。

症状に応じた対応を

手足口病の原因となるウイルスは、上記でご説明したもの以外にも多くのものがあり、そのときどきで広がるウイルスは異なります。

そういった要因により手足口病に特効薬はなく、症状に応じた対応をしていく必要があります。

ただし、一般的に言えば、手足口病はそれほど重い症状が出る病気ではありません。

念のため一度は小児科に行くことをおすすめしますが、その後はおうちで経過観察をしながら安静に過ごしましょう。

ただし、2日すぎても高い熱や嘔吐が続く、うまく水分摂取ができない、ぐったりしているなど、明らかに普段と違う様子であれば、再度受診するようにしてください。

口の中が痛い場合は、食べ物に気をつけてあげて

手足口病では口の中にも発疹ができ、食欲が落ちてしまったり、お腹が空いても上手に食べ物を食べられなくなってしまったりすることがあります。

このような場合には、柔らかいもの、冷たいものなどを用意するようにしましょう。

おかゆ、うどんやそうめんなどの麺類、スープ、豆腐、ゼリーや寒天、ヨーグルトなどがおすすめです。

監修:高田佳輝 40年間小児外科を中心に小児医療に携わる。小児外科指導医。

「ベネッセ教育情報サイト」による
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自閉症、環境は関係ある? [医学・医療短信]

自閉症の発症に環境は関係があるの?

【Q】小学1年の孫は自閉症です。2歳の時、妹の入院で両親がかまってやれず、発達の遅れに気づきました。環境要因でも発症するのでしょうか。(兵庫県川西市、女性、72歳)

【A】自閉症は生まれつきの脳機能障害で、環境的な要因はあくまできっかけです。

 自閉症は生まれつきの脳機能障害で、人との関わりやコミュニケーションが苦手だったり、こだわりが強く想像力が働きにくかったりする症状があります。

 一般的には1歳くらいで指さしをしない、言葉がないといった兆候がみられます。

 2歳まで発達の遅れを感じなかったそうですが、専門医が診れば分かったかもしれません。

 軽い症状で自閉症と気付かなくとも、不安な経験をきっかけに特性がはっきり表れる子もいます。

 下の子の出産で母親と離れ、久しぶりに会うと目線が合わなくなっていたケースなどがあります。

 また、まれに2~3歳で、これまで出ていた言葉がなくなるなど、持っていた能力がなくなる「折れ線型」の自閉症もあります。

 環境的な要因はあくまできっかけです。この時期、情緒が安定していれば症状の出方が少なかった可能性はありますが、経過を大きく変えたとは考えにくいでしょう。

 療育で症状を軽減することができます

 自閉症は療育で症状を軽くできます。

 まず不安や緊張のない環境を整えることが必要です。

 電車や人形遊びなど本人の好きなことに共感し、たくさんほめる機会を作ることも良い影響があります。

 気持ちのいいやり取りは学ぶ意欲を高め、ソーシャルスキルの習得にもつながります。

 できることとできないことがアンバランスなのも特徴で、例えば絶対音感がある人、記憶力が突出した人などもいます。

 得意な分野で力を伸ばすことは充実した人生につながります。

 お孫さんの可能性を引き出してあげてください。

 回答者 石崎朝世院長(公益社団法人発達協会・王子クリニック)

 6月22日「毎日新聞 医療プレミア」による


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「フレイル」「サルコペニア」の恐怖 [医学・医療短信]

低栄養が招く衰弱、筋肉減少 =「フレイル」「サルコペニア」の恐怖

 高齢者は日常生活の活動量減少による食欲低下などから、食事を十分取らず低栄養状態に陥りやすい。

結果、全身が弱って外出することが難しくなる「フレイル」や、筋肉量が減少する「サルコペニア」になるケースもある。

フレイルやサルコペニアの認知度は低いが、日常生活に大きな影響を与え、寝たきり状態を招く恐れもあるため、決して軽視できない。

フレイルやサルコペニアの症状は、加齢による全身の機能低下が目立つ75歳以上の高齢者で問題になっていた。

しかし近年、糖尿病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性心不全、肝機能障害などを患っている人の場合、50~60代でも前駆的な「プレフレイル」「プレサルコペニア」の症状が見られる。

このような状態にどう対応したらよいか、専門医や管理栄養士に聞いた。

大事なのは全身状態

一部の若年性認知症などを除き、原則として75歳以上の患者の診療を専門とする東京医科大学病院(東京都新宿区)高齢診療科の羽生春夫教授(老年医学)は、

「高齢になればなるほど、病気の治療だけでなく、全身の状態をどれだけ良好に保てるかが重要になる。

全身の状態の悪化を少しでも緩やかにすることが、患者がどれだけ自立的に日常生活を送れるかどうかを大きく左右する」と強調する。

このため、初診時には認知症やうつ病などともに、「フレイルになっていないか」「サルコペニアの兆候はないか」といった点も含め、全身の状態の把握に努めるという。

一般的にはあまりなじみのないフレイルには、数値化され統一された判断基準はない。

ただ、注意すべき複数の項目が提唱されている。

主なものとして、

(1)意図せずに年単位で生じた一定以上の体重減少
(2)強い疲労感
(3)歩く速度の低下
(4)握力などの筋力低下
(5)日常の歩行や家事など活動量の減少
―などが挙げられている。

このうち、該当するのが3項目以上ならフレイル、それ未満であれば、注意が必要なプレフレイルとされている。

 しかし、実際にフレイルやサルコペニアの兆候があっても、医療現場で施せる治療は少ない。

「基本的には、十分な栄養の摂取と散歩など低負荷の運動の励行が一番の対策だ。

その意味では介護分野との連携が重要になってくる」と羽生教授は話す。

このため「介護予防」「転倒予防」などを目的に地域で開催されているイベントに参加してもらうことも有効だ。

羽生教授は、

「フレイルやサルコペニアは、適切な対応を取れば回復することができる。できるだけ早期に発見して対応することが大切だ」と指摘する。

63歳でピンチ

記者は63歳。身長は174センチほどだが、不摂生がたたり体重は50キロを割っている。

羽生教授に診察してもらった。

二の腕の裏側の筋肉をつまんだり、両手の親指と人さし指を合わせて輪を作ってふくらはぎの最も太い箇所に当てたりする。

後者では、作った輪から少しはみ出す程度のふくらはぎの太さが目安になる。

記者の場合はスカスカ。「サルコペニアだね」。

診断は迅速だった。

記者のような事例はもちろん、老年医療の対象にならない50~60代でプレフレイル、プレサルコペニアに陥っている場合は問題だ。

放置していれば加齢による活動量や身体機能の低下が加わって本格的なフレイルやサルコペニアに移行し、持病の改善も身体機能の回復も難しくなる。

本来なら医師の治療が必要になるが、この段階で治療に携わる専門医や日常の健康管理を担う地域のかかりつけ医の間では、フレイルやサルコペニアに対する認知度はまだ不十分で、治療が受けにくいこともある。

 羽生教授は、

「高齢患者が増えてきた分野では、この問題に関心を向ける専門医も増えてきた。
しかし、他の領域は目の前の病気の治療で手いっぱいの状態だ」とした上で、

「老年医学を専門とする側からみれば、50~60代でプレフレイルやプレサルコペニアを発見しても、その患者を受け入れて適切な指導ができる診療科がほとんどない、これが最大の問題だろう」と課題を挙げた。

「キョウイク」と「キョウヨウ」

 タニタヘルスリンクの管理栄養士・健康運動指導士の龍口知子さんは、

「低栄養はフレイルの原因の一つだ。外出するのが嫌になる。

すると、おなかが減らないから、食べる量が減る。

外出するのか、家に閉じこもるのかは健康に密接に関わっている」と話す。

 龍口さんら同社のスタッフが自治体や企業を対象に開催する健康セミナーで繰り返す言葉がある。

「キョウイク」と「キョウヨウ」だ。

「教育」と「教養」ではない。

「キョウイク」は、きょう行く所がある。

「キョウヨウ」は、きょうは用事がある。

「外出の機会があったり、他人とのコミュニケーションが保たれていたりすることが大事。

自治体などが開催する健康維持や介護予防のための教室に参加することはとてもよいことだ」

10種類の食品を

 龍口さんは、

「高齢者にとってなかなか取りにくいかもしれないが、取ってほしい食品群のチェックリストがある」と言い、10種類の食品を挙げる。

10種類は、
(1)卵(2)肉類(ソーセージやハムを含む)(3)魚介類(4)大豆製品(5)牛乳や乳製品(6)カボチャやニンジン、ホウレンソウなどの緑黄色野菜(7)ワカメやヒジキ(8)果物(9)イモ類(10)油脂。

「(1)から(5)はたんぱく室を摂取することで筋肉をつくる。
(6)から(8)の食品は、ビタミンとミネラルが豊富。(9)と(10)はエネルギー源となる」

 この食品一つを1週間で4、5回食べている場合は、「1点」とカウントする。

龍口さんは「合計で9~10点を取ることができれば、生活の質(QOL)が高いと言える。

大変かもしれないが、カレンダーに書き込んでチェックするなどして、点数を上げてほしい」と力説する。

 運動面では、無理のないペースで毎日、歩くようにすることだ。

「『きょうは○○歩』といった目標を掲げても、なかなか実行できないが、それは当たり前だと思ってほしい。

『きょうはきのうより多く歩いた』『きょうは少し足りない』という意識を持ってもらえたらよい」

 筋肉トレーニングなども有効だが、龍口さんはお金のかからない方法も勧める。

「駅では、エスカレーターではなく、できるだけ階段を使う。ショッピングセンターに行った時は、駐車場の最も遠い場所に自動車を止め、店舗まで長い距離を歩く」。

お金がかからない健康法だ。

用語説明

フレイル

 欧米などの老年医学分野で使われる「FRAILTY(フレイルティ)」に対応する用語。日本老年医学会が2014年から提唱。

「加齢に応じて運動機能や認知機能などが低下して生活機能が傷害され、心身両面での衰弱がみられる状態」と定義する。

一方で、「外部からの適切な介入・支援があれば、支障なく日常生活が送れるようになる」としている。

サルコペニア

加齢や疾患により、筋肉量が減少。握力や下肢筋・体幹筋など全身の「筋力低下」が起こること。

または、歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなど、「身体機能の低下」が起こること。 
ギリシャ語で筋肉を表す「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた造語。
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