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医療用手袋、今すぐパウダーフリー化を [プロテスト]

供給停止後も使用禁止ではない日本の現状

医療者と患者の双方を防御するために使用される医療用手袋について、2016年12月、米食品医薬品局(FDA)はパウダー付き手袋を「使用する医療従事者と患者の双方の健康に有害」として使用を禁止すると発表した。

これを受け、わが国では厚生労働省が「2018年12月31日までに医療用パウダーフリー手袋への供給切り替えを求める」との通達を発表した。

しかし、日本では流通が禁止されても、使用は禁止されておらず、パウダー付き手袋の危険性がいまだ十分に認識されていないという問題もある。

国保中央病院(奈良県)緩和ケア科・加藤恭郎部長が、第4回日本医療安全学会で報告した。

スターチ腹膜炎の認知が不十分

医療用手袋にパウダーが使われている理由として、ゴム素材への「非粘着性」および「低摩擦性」の付与が挙げられる。

パウダーに用いられる原料としては、コーンスターチ(トウモロコシの澱粉)しか使用できないことになっているが、このパウダーが患者の炎症、癒着、肉芽腫などの誘引となることが明らかになっている。

欧米では、開腹術時に腹腔内で使用した手袋のパウダーに対する反応である「スターチ腹膜炎」がよく知られているが、

「日本では教科書にも記載されていない」と、加藤部長。

消化器外科医である同氏は、スターチ腹膜炎の16歳の女性患者を経験した。

パウダー付き手袋を用いて開腹虫垂切除術の術後10日に腸閉塞および炎症〔C反応性蛋白(CRP)の上昇〕を認め、再入院となった。

その後、保存的治療で改善せず、術後12日目に再手術となった。

再手術時点での診断は癒着性小腸閉塞で、術式は腹腔鏡下癒着剝離術を選択した。

ところが、再手術後も再び腸閉塞を来し、発熱、炎症、癒着が認められたことから、スターチ腹膜炎を疑った。

そこでパウダー液を用いて皮内反応を見たところ、発赤が認められたため、ステロイドホルモンのプレドニゾロンを投与した。

結果、急速に炎症反応が治まり、再度手術を行うことなく退院することができた。

「このように、スターチ腹膜炎は診断されずに手術が繰り返される可能性がある。

スターチ腹膜炎であることに気が付けば、急性期の炎症にはステロイドホルモンが有効である場合が多い。

気付かずにパウダー付き手袋で手術を行えば、手術を繰り返すという悪循環になる」と警鐘を鳴らした。

供給停止前に買いだめを図る施設も

スターチ腹膜炎に関して、1960~2015年に報告された文献数を見ると、米国の110件に対し、日本ではわずか7件しかない。

なぜ欧米では広く知られているスターチ腹膜炎が、日本では十分に認知されていないのか。

加藤医師の考察によると、米国ではパウダー付き手袋に用いられるスターチパウダーが1947年に実用化されたが、その時点でパウダーは安全性が高いものではなく、吸収が遅れたり、吸収困難に至る可能性があることなどが報告されている。

一方、わが国では1957年にスターチパウダーが実用化されたが、その添付文書には、

「必要量の3倍でも癒着全くなし」「粉末は漿膜表面から完全に吸収」「1年使用で癒着の危惧全く不要」といった文言が記載されている。

そのため、スターチパウダーは"安全で全く害がない"との見方がそのまま広まったのではないかと考えられるという。

手術用手袋におけるパウダー付きの比率を2008~15年で比較しても、欧米では30%前後であったのが10~14%に下がっているが、日本は65%から37%にまでしか低下していない。

同氏は「日本は、欧米に10年遅れている状況だ」と指摘。

またパウダー付き手袋は、患者だけでなく医療者にも手荒れ(乾燥、機械的刺激による刺激性接触皮膚炎)を引き起こし、皮膚のバリア機能を低下させることでさまざまな害を及ぼすと強調した。

さらに同氏は、日本における問題として、厚労省は2018年末までに「パウダーフリー手袋への供給切り替えを求める」としているだけで、「使用禁止」とはしていないことを指摘した。

FDAは2017年1月18日からは供給済みパウダー付き手袋の使用も禁止している。

国内では、パウダー付き手袋を今のうちに買いだめて、供給停止後の使用を図る施設も見受けられるという。

 二重手袋の普及を

こうしたパウダー付き手袋の危険性を報告した加藤医師は、最後に二重手袋について紹介した。

手袋は一重の場合は、術中の損傷(穴が開く)が15%ほどで認められることが報告されている。

一方、二重に装着(二重手袋)すると、外側の手袋が損傷しても内側の手袋の損傷はほとんど起こらないことが報告されている。

すなわち二重手袋を用いることで、手術部位感染のリスクが低下できる。

また、針刺し事故による医療者の感染予防につながることも報告されている。

パウダー付き手袋は内外面にパウダーが付着しているため、二重装着が容易だが、パウダーフリーの手袋では二重装着がやや難しくなる。

そうした中で、「二重装着下履き用パウダーフリー手袋」が開発されている。

この下履き用手袋には、内外面に滑り加工が施されており、色違いの外履きと組み合わせることで、外側の手袋が損傷した場合の確認が容易であるという利点もある。

二重装着下履き用パウダーフリー手袋は原料として天然ゴムラテックスを使用している製品も一部にあるが、大多数は合成ゴム製だという。

合成ゴム製手袋は、「パウダーフリー」「二重装着が容易」「ラテックスフリー」という3つの利点を兼ね備えていることになる。

同医師は「このように優れた手袋が普及していない理由として、まだ存在が十分に知られていないこともあるが、コストの問題もある」と指摘。

手袋の単価は、パウダー付きで約70円、パウダーフリーで約90円だが、合成ゴム製では200円ほどになる。

たとえば、手術1,000件を外科医3人と看護師1人の計4人で行い、術中に手袋を2回交換すると、パウダー付き手袋を一重で用いると84万円だが、合成ゴム製手袋を二重で用いると320万円になる。

医療施設では膨大な手袋を使用するため、こうしたコスト面で、なかなか導入に踏み切れない施設もあるという。

「合成ゴム製手袋を二重で用いた場合には診療報酬面でなんらかの加算を認める、天然ゴム製手袋も法律で規制するなどの行政による動きかけがあれば、普及が進むでのはないか」と加藤医師は展望した。

(髙田あや)=『Medical Tribune』2018/03/13より。 

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