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意外! 問題! 緑内障! [健康小文]

 先年、6月7日の「緑内障を考える日」を前に、眼科医療製品メーカーの日本アルコン株式会社が実施した意識調査で。意外な(+憂慮すべき)実態が明らかになった。

 調査は、全国の40歳以上の男女360人を対象に、「一般層」「緑内障の疑いがある層」「緑内障患者層」の三つのグループに対しておこなわれた。

 緑内障は、現在、日本の中途失明原因の第1位、40歳以上の20人に1人の割合で発症している。

 ところが、一般層の約8割(79.2%)は、その事実を知らなかった。

 それどころか、そもそも「緑内障」という病気について、「まったく知らなかった」と「名前のみ知っていた」を合わせると、約4割(39.2%)にも達した。

 健康情報に最も深い関心をもっているはずの世代にして、この数字。ちょっと(どころか、大いに)意外であり、問題だと思う。

 そうした状況の反映なのだろう。

 現在、治療中の緑内障の患者のうち、自覚症状に気づき、自分から眼科を受診した人はわずか2割弱(18.3%)にすぎない。

 ほかの人たちが、緑内障と診断された主なきっかけは、「定期健診」が50.8%で、別の「眼の病気で通院、指摘された」が17.5%である。

 このことは、緑内障が自分では気づきにくい病気であることと、健診の有用性を強く示唆している。

 緑内障の専門医、桑山泰明・福島アイクリニック院長の解説。

「緑内障は、視神経が傷み、視野が狭くなっていく病気です。

 視神経はおよそ100万本の細い神経線維でできていて、その数が減るにつれて見えない部分が広がっていきます。

 初期は自覚症状に乏しく、なかなか気づかないことが多いため、受診が遅れ、症状が進んでしまうことがよくあります。

 実際、緑内障患者さんのうち、治療を受けている人は1割程度といわれ、残りの9割の人は未発見のまま放置されている潜在患者さんです。

 緑内障には、眼圧が高い緑内障も、眼圧は高くない緑内障もあります。

 日本人の緑内障の約75%は「正常眼圧緑内障」とよばれる、眼圧は正常範囲内の緑内障で、視神経に原因があると考えられています。

 したがって、眼圧だけで緑内障の判断はできません。

 緑内障の診断には、眼底検査で視神経の状態を直接確認し、確定のために視野検査(鮮明に見える範囲)を行います。

 緑内障の初期段階では、鮮明に見えない範囲は狭い(視野は広い)ので、日常生活での支障はほとんどありません。

 その初期段階から治療を開始し、継続すれば、病気の進行を抑えることができます。

 ですから早期発見・治療がとても大切なのです。

 40歳以降は定期的に眼の検査を受け、緑内障と診断されたら、毎日欠かさぬ点眼治療を続けてください。

 それがあなたを失明から守る唯一絶対の方法です」

 緑内障のシグナル

 緑内障には、いくつかの種類があるが、最も多いのが原発緑内障で、急性タイプ(閉塞型)と慢性タイプ(開放型)がある。

 急性タイプの発作は、激しい頭痛と吐き気で始まる。

 このとき目の異常に気づかず、眼科の治療を受けるのが遅れると失明することさえある。

 慢性タイプの緑内障は、じわじわ進行するので、なかなか気づきにくい。

 ■本などを読むとき目がぼやける。

 ■夜、ふと目覚めたときに目がぼやけているが、朝になると正常に戻っている。

 ■電灯のまわりに虹が見える。

 ■目が疲れやすく、頭が重い。

 こんな症状があったら眼科で精密検査を受けるべきだ。

 遠視の人、近親者に緑内障患者のいる人、ひどい近視の人、糖尿病の人などはとくに要注意だ。

 なお、クモ膜下出血の前ぶれとして、眼球の位置がずれて斜視になり、ものが二重に見えて、どちらか片方のまぶたが下がるといった症状がみられることがある。

 脳内の動脈瘤(りゅう)のため、眼筋まひが起こったのだ。

 ただちに脳神経外科へ!
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日本的緑内障とは [健康短信]

 日本的緑内障

 きょう6月7日は「緑内障を考える日」。

 日本人の中途失明原因の第1位は、ずっと糖尿病網膜症だったが、2004年からそれが緑内障に代わった。

 同年、厚生労働省が発表した「視覚障害の原因」は、

 緑内障25%、糖尿病網膜症20%、黄斑変性症11%、網膜変性症11%の順。

 緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が高くなって視神経が損傷され、視野が狭くなる病気。

 近年、眼圧は正常範囲でも視神経が侵される「正常眼圧緑内障(NTG)」が非常に多いことがわかった。

 日本では40歳以上の20人に1人が緑内障で、その70%がNTGと推定される。

「NTGは日本人に特徴的な緑内障のタイプといえる」と専門家は指摘している。

 5年、10年単位でじわじわ視野が欠けていくが、かなり進行するまで自覚症状はほとんどない。

 気づいたときは手遅れという例も少なくない。

 早期発見のためには、眼圧検査だけでなく眼底検査、視野検査が必要。

 とくに、

 ▽家族に緑内障の人がいる。

 ▽強い近視。

 ▽頭痛もち。

 ▽冷え性などの人はぜひ早めに眼科へ──。

 眼圧と緑内障

 眼圧は正常範囲内なのだが、目の神経が侵されて視野が狭くなる「正常眼圧緑内障(NTG)」は、日本人に特徴的に多い緑内障といわれる。  かなり進行するまで自覚症状がないために治療が手遅れになる例も少なくない。  しかし、早期に発見し治療を始めると、病気の進行を抑えることができる。  眼圧は正常なのに、なぜ視神経障害が起こるのか?  視神経がもともと弱く、眼圧がその眼の許容範囲を超えて高くなる(言い換えると、「正常」な眼圧が、その人にとっては「異常」に高い)ことで発症すると考えられている。  だからNTGの治療も、やはり眼圧を下げる点眼薬から始まる。  そして、視野障害の進行がみられない(薬が効いている)場合は、同じ薬による治療を続ける。  進行が認められたら点眼薬を替えたり、追加したりして薬物治療を続け、それでもなお進行していく場合は、房水の排出を促進する(ひらたく言えば眼球内の水はけをよくする)レーザー治療や外科手術を行う。  ともあれ、40過ぎたら一度は目の検診を──。
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血圧を下げる外来 [医学・医療短信]

血圧を下げる「減塩外来」

 簡単そうで難しい「減塩」を無理なく続けることはできないだろうか。

 千葉県内の病院に日本で初めて「減塩外来」を開設した渡辺尚彦(よしひこ)医師は独自の方法で指導している。

 ●徐々に慣れる食事

 高血圧を中心とした循環器病が専門の渡辺先生は、普段の生活を少し工夫するだけで血圧を下げるさまざまな方法を提唱し「ミスター血圧」と呼ばれる。

 1987年8月から携帯型の血圧計を装着し、血圧の動きを記録し続けている。

「減塩は患者側はもちろん、医師や管理栄養士といった指導者側にも『難しい』という意識の人が多い。まずその先入観を変えなければいけません」

 減塩の指導歴は30年以上。患者の食や生活習慣を把握し、丸1日(24時間)に排出された尿を全て集めて尿中成分を調べる「蓄尿」を実施しながら生み出したのが「反復1週間減塩法」だ。

 最初の1週間はしっかりと減塩し、次の1週間は以前に摂取していたのと同じ塩分量(=いつもと同じ食事)に戻す。これを繰り返すことで、徐々に減塩食に慣れていく。

 減塩期間中は塩やしょうゆ、ソースといった類いを一切取らない。

 例えば刺し身はワサビを付けるだけ。料理は素材そのものをしっかり味わう。

 減塩外来はこれを軸に、患者に合った指導を心掛けている。

 厳しくもみえるが、塩分を控え続けるほうがハードルが高いという。

 例えるなら中学や高校の試験勉強と同じだ。

「入学から卒業までずっと試験勉強を続けるのはエリートしかできない。テスト前にだけドンと勉強するのを繰り返すことで、学力が少しずつ上がるようになるのと一緒です」と渡辺先生。
 
 減塩生活からいつもの食事に戻った時に、しょっぱいと感じることで味覚の変化が自分で分かり、減塩への意識が高まっていく。

「要は外食になじんだ舌の味覚のリセットです」。

 塩分摂取量は徐々に減り、1桁台になるという。蓄尿検査では、1日の塩分排出量からほぼ同等の塩分摂取量が把握できる。

 これまでの経験から、治療中に外食をおいしく感じている人は1日あたり14グラム、おいしくないと感じる人は7グラムほどの塩分摂取量になっている。

 ●動脈硬化の予防に

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、1日あたりの塩分摂取量の目標値を18歳以上の男性で8・0グラム、女性で7・0グラムとしている。

 一方、国民健康・栄養調査(16年)によると、摂取量の平均は20歳以上の男性は10・8グラム、女性9・2グラムと高いままだ。

 世界保健機関(WHO)が5グラム未満を推奨し、減塩先進国のイギリスが25年までに3グラムに引き下げる予定の中、日本の取り組みは遅れている。

 日本人は人口の3分の1近い約4000万人が高血圧と推計されている。

 高血圧は動脈硬化を進行させ、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの原因になる。

 交感神経は緊張状態となり、ちょっとしたことで血圧はさらに上昇する。

 血圧を下げるには減塩以外に運動などさまざまな方法があるが、どれも継続するには強い意志が必要だ。
 
 渡辺先生は「手っ取り早く下げられるのが減塩です」と力を込める。

 ●置き換え法も一手

 反復1週間減塩法に加え、渡辺さんが指導するのは、朝食をシリアルの一種「グラノーラ」に置き換えること。

 みそ汁1杯や梅干し1個にはそれぞれ約2グラムの塩分量がある。

 6枚切りのトースト1枚も0・8グラムある。

 一方、グラノーラは1食分(50グラム)にヨーグルト(200グラム)を加えてもわずか0・5グラム。

 1日の摂取量を大幅に減らせる。

 朝に摂取した塩分はアルドステロンというホルモンが体内にため込んでしまう。

 だからこそ3食のうち、朝食が最も効果が高いと指摘する。

 渡辺先生は聖光ケ丘病院(千葉県柏市)に開設した減塩外来に加え、東京女子医科大東医療センター(東京都荒川区)や日本歯科大付属病院(千代田区)など計7カ所で減塩指導をしている。

 ●栄養バランスのよい「グラノーラ」

 グラノーラは、オーツ麦やライ麦、玄米などの穀物に蜂蜜などを混ぜて焼いたもの。

 ドライフルーツやナッツ類などが入ったものも多く、ザクザクとした食感が楽しめる。

 2016年のシリアルの国内市場規模(生産額)は約600億円。

 シリアルといえばコーンフレークをイメージしやすいが、約7割をグラノーラが占める。

 カルビー、日本ケロッグ、日清シスコの大手3社を中心にさまざまな商品が販売されている。

 もともと米国で一般家庭に浸透しており、1991年にカルビーが「フルーツグラノーラ」(現在の「フルグラ」)として商品化。

 当時は認知度も低く売り上げは伸びなかったが、12年ごろから若い女性の朝食向けにPR戦略を展開。

 30億円規模で推移していた売り上げは16年度は292億円にまで増加した。

 現在はファミリー層を中心に定着したうえ、「減塩」を前面に出し、中高年層にもアプローチしている。

 フルグラ事業本部は「食物繊維が豊富で栄養バランスに優れている。忙しい朝にもササッと食べられるので、朝食として受け入れられた」と分析。

 健康志向の高まりを受け、市場の更なる拡大を目指している。

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簡易塩分摂取量テスト

 次の1~5に答えてください。各回答の点数を合計した数値が、1日の大体の塩分摂取量(グラム)と同じになります。

Q1 料理の味付けは?

 (1)薄い味付けを好む 6点
 (2)どちらともいえない 8点
 (3)濃い味付けを好む 14点

Q2 1日にみそ汁、すまし汁、スープを飲む量は?

 (1)ほとんど飲まない 0点
 (2)1杯程度 2点
 (3)2杯程度 4点
 (4)3杯程度 6点

Q3 麺類をよく食べますか?

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 2点
 (3)よく食べる 3点

Q4 しょっぱいもの(塩ザケ、塩辛、つくだ煮など)を食べますか? 

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 1点
 (3)よく食べる 2点

Q5 漬物類をよく食べますか?
 (1日にキュウリ1/2本程度として)

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 1点
 (3)よく食べる 2点

 (渡辺尚彦医師への取材に基づき作成)

 「毎日新聞 医療プレミア」より転載
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関係ある? 糖尿病と「睡眠障害」 [医学・医療短信]

糖尿病と「睡眠障害」は関連している 日本で最大規模の研究

 京都大学と長浜市が共同で行っている「ながはまコホート」の、世界最大規模の7,000人超を対象とした研究で、睡眠時間や睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)が肥満と相互に関連していることや、高血圧・2型糖尿病とも関連していることが明らかになった。

 研究では、一般の健診受診者の集団において、治療が望ましいと考えられる睡眠呼吸障害が成人男性では約4人に1人、閉経後女性では約10人に1人の割合でみられることが判明した。

 睡眠障害が高血圧や糖尿病のリスクに

 24時間休みなく活動している現代社会で、短時間睡眠は増加しており、日中の眠気だけでなく2型糖尿病や高血圧などとの関連が注目されている。

 また、睡眠呼吸障害の大部分を占める睡眠時無呼吸は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるだけでなく、高血圧、2型糖尿病、心血管障害発生とも関連することが知られている。

 短時間睡眠や睡眠呼吸障害は高血圧や糖尿病のリスクになると考えられている。

 睡眠に関する研究は多いが、アンケートを用いた自己申告の睡眠時間による報告がほとんどで、客観的な睡眠時間によるものは少ない。

 そこで京都大学の研究グループは、ながはまコホート事業に参加した7,000人以上を対象に、睡眠障害の程度と客観的な睡眠時間を測定した。

「ながはまコホート事業」は、市民の健康づくりと最先端の医学研究を目的に、京都大学と滋賀県長浜市が共同して行っている研究。

 5年ごとに一般の特定健診項目に加えて、遺伝子解析を含む血液検査や睡眠検査などのさまざまな検査を行っている。

 今回対象となったのは、2013~2016年にながはまコホート事業に参加した9,109人(92.5%)のうち、機器の持ち帰りに承諾し、そのうち活動度計で週末1日を含む5日以上の測定とパルスオキシメーターで2日以上の測定のデータが取得可能であった7,051人(全体の71.6%)。

 睡眠時間の客観的な評価のために腕時計型の加速度計と睡眠日誌を、睡眠呼吸障害の評価のためにパルスオキシメーターを用いて、前者は7日間、後者は4日間の測定を依頼した。

 研究グループは、同意が得られた参加者に対して機器の操作方法を説明し、参加者の測定意欲を高めかつ測定ミスを防ぐために、一人ずつ意義や測定方法を説明した。

 閉経前女性では糖尿病リスクが28倍に上昇

 研究は、短時間睡眠と睡眠呼吸障害、肥満の3つの条件が、高血圧や2型糖尿病にどのように影響するかを解明するかを目的とした。

 また、睡眠呼吸障害のリスクは男女差、さらには閉経前後でも差があると考えられるため、女性の閉経を含めた性差についても検討した。

 その結果、客観的な睡眠時間に関しては性別や閉経前後であまり違いはみられなかったが、睡眠呼吸障害は明確な違いが認められ、特に治療対象となる中等症以上の睡眠呼吸障害の頻度は男性では23.7%と多いことが分かった。

 女性では閉経前は1.5%と少ないものの、閉経後では9.5%と頻度が高くなることが判明した。

 また、睡眠呼吸障害は男女とも高血圧に関連しており、その重症度が高くなるにつれて関連度が高くなりった。

 糖尿病に関しては、女性においてのみ関連していた。

 特に、閉経前女性においては、中等症以上の睡眠呼吸障害があると糖尿病が28倍と著明に多くなった。

 糖尿病の治療に加えて睡眠障害の治療も必要

 研究では次のことが明らかになった――

(1)短時間睡眠が睡眠呼吸障害と関連している
 睡眠時間が短い人は睡眠呼吸障害がないか検査するのが有用である可能性がある。

(2)睡眠呼吸障害は高血圧、糖尿病の頻度の上昇と関連しており、さらに、性差が認められる
 治療すべき睡眠呼吸障害のある人は高血圧、糖尿病がないか検査するのが望ましい。特に閉経前女性の睡眠呼吸障害では糖尿病に注意する必要がある。

(3)肥満と高血圧、糖尿病との関連は睡眠呼吸障害が間接的に媒介している
 高血圧、糖尿病の基礎病態である肥満の治療としての減量以外に、睡眠呼吸障害の治療も加えて有用である可能性がある。

 なお、睡眠呼吸障害のほとんどが大きな鼾がみられる閉塞性睡眠時無呼吸とみられる。

 今回の研究は、客観的な睡眠時間、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)同時測定データを用いた世界で最大規模の研究結果だ。

 現在第3期のながはまコホート事業として、今回の研究の対象者の5年後の睡眠時間や睡眠呼吸障害の程度、高血圧や糖尿病の状態などを調査中だという。

 研究グループはこのデータを用いて、睡眠時間や睡眠呼吸障害のもともとの程度、あるいはそれらの変化が高血圧や糖尿病にもたらす影響を縦断的に解析し、因果関係について検討する予定としている。

 また、高血圧や糖尿病の参加者ではさらに頻度は高くなっているので、高血圧や糖尿病患者でいびきの大きい人や治療効果が乏しい人では、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)の検査も考慮する必要性が示された。

 肥満があれば肥満の克服が極めて重要だとしている。

 研究は、松本健・京都大学医学研究科客員研究員(大阪府済生会野江病院医長)、陳和夫・同特定教授、松田文彦・同教授らの研究グループによるもので、医学誌「SLEEP」オンライン版に発表された。
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「ナポレオンの3時間」、ホント? [健康短信]

偉人の“ショートスリーパー伝説”は本当か?
内村直尚 / 久留米大学教授

 睡眠時間が短くて済む人をショートスリーパー(短眠者)と呼びます。

 健常成人の適切な睡眠時間は6~8時間ですが、5時間未満の睡眠でも日中に耐えがたい眠気や倦怠(けんたい)感を訴えない人がショートスリーパーです。

 著名人の中にはショートスリーパー伝説が語り継がれている人が多くいます。

 代表例が、1日3時間しか睡眠を取らなかったというフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトです。

 発明王と呼ばれたトーマス・エジソンは1日4時間睡眠だったといわれています。

 こうした人は、なぜショートスリーパーでいられたのでしょうか?

 本物のショートスリーパーは皆無

 短時間睡眠が実現できるならば、時間をより有効に使えるので、「その秘訣(ひけつ)は何ですか?」と身を乗り出してくる人もいるでしょう。

 まず、残念な結論を申し上げると、ショートスリーパーはこの世にほとんどいません。

 私の30年以上に及ぶ臨床経験でも、真正のショートスリーパーにお会いしたことはただの一度もありません。

 このように言うと、「自身の経験の範囲内のみで語っている」と反論されがちです。

 でも、真正のショートスリーパーに関する症例報告や実態調査に関する医学論文は、ごくわずかしかありません。

 つまり、それほどショートスリーパーはまれなのです。

 最近、体内時計を制御する「時計遺伝子」の研究が盛んになり、特定の遺伝子を持つ人がショートスリーパーであるとの報告はあります。

 しかし、睡眠状態は脳波を常時測定しない限り正確には分かりません。

 ですから、医学的にショートスリーパーと確定診断された人は極めて珍しいケースでしょう。

 きわめて難しい睡眠欲の制御

 私が真正のショートスリーパーはほぼいないと言う理由は他にもあります。

 人間の三大欲求である「食欲」「性欲」「睡眠欲」の中で、最も制御しにくいのが「睡眠欲」だからです。

 ごく特定の期間を1日3~4時間睡眠で過ごす人は珍しくありませんが、そうした人は休日などにかなり長時間の睡眠を取っているものです。

 また、徹夜の経験がある人ならばお分かりでしょうが、睡眠を極限まで抑え込むと、ある瞬間に突然眠りに落ちてしまいます。

 このようにして、どこかで必ず眠っているのです。

 ショートスリーパー伝説には「昼寝伝説」が付き物

 では、ナポレオンのショートスリーパー伝説はうそだったのでしょうか? 

 うそだと言えます。

 ナポレオンの秘書官ブーリエンヌの回顧録には、実際のナポレオンは夜から朝にかけておおむね7時間は睡眠を取り、昼寝もしていたと記述されています。

 もちろん戦争と内政に明け暮れ、多忙だったナポレオンですから1日3時間睡眠という日もしばしばあったでしょう。

 しかし、そのような睡眠不足の時には居眠りぐらいはしていたはずです。

 ここからは想像ですが、出征が多かったナポレオンならば移動中に騎乗で居眠りをしていたと思います。

 エジソンも昼寝をしていたことが知られています。

 他には、午前3時に寝て午前8時に起きていたというイギリスの元首相ウィンストン・チャーチルも国会議事堂の中に専用ベッドを設けて、昼寝をしていたといわれています。

 余談ですが、ショートスリーパー伝説のある人は往々にして地位の高い人です。

 もし、そうした人が時々居眠りをしていたとしても、周囲は叱られることへの恐れや、対外的なメンツなどから、口外しないものです。

 実際は寝ている自称ショートスリーパー

 真正のショートスリーパーにはお目にかかったことがない私ですが、「自称ショートスリーパー」には数多くお会いしています。

 会社員でも常に1日2~3時間しか寝ていないとおっしゃる方はいます。

 しかし、そういう方の場合、ほとんどがマイクロスリープと呼ばれる超短時間睡眠を取っています。

 通勤電車の中で立ったまま寝ている人などがその例です。

 そうした細切れ睡眠を合計すれば、ほとんどの人は1日6時間程度寝ているのです。

 不眠症を訴えるショートスリーパー

 一方、不眠症で「私は1日2~3時間しか寝られない」と訴える方々がいます。

 こうした人は、一気に熟睡する時間は2~3時間でも、昼寝などを合計すると6時間以上寝ていることが少なくありません。

 過去に私の元を受診した患者さんの中に、「3年間一睡もしていない」と言う方がおられました。

 でも、決してそのようなことはありません。

 このような患者さんの夜間の脳波を測定すれば、実際には寝ていることがすぐに分かります。

 しかし、その事実を突きつけたところで何も解決しません。

 私も「あなたは実際には6時間寝ていますよ」などとは言いません。

 そもそも、自分自身が眠った瞬間について確証を持って知ることはできません。

 こうした患者さんは眠れないと思い込む心理的な不安を抱えていることがほとんどです。

 実際には悩みを共有できる相手を求めているのです。

 私は「寝られなくて苦しいのですね」と声をかけながら話を聞くことにしています。

 それだけで、その晩からぐっすりまとまった時間眠れるようになる人もしばしばいるのです。

 みなさんも不眠症によるショートスリーパーを訴える人には日常的に出会っていると思います。

 そのような人に「気のせいだ」というのは避けるべきです。

 時間が許せば、本人の悩みなどを聞いてあげてください。

 ショートスリーパーを目指すな

 最後に改めて強調しておきますが、むやみにショートスリーパーを目指そうなどとは思わないでください。

 ナポレオンやエジソンやチャーチルの睡眠実態からは、昼寝できちんと睡眠を補うことが切り替えの良さにつながり、日中の激務にも耐えられたということが推察されます。

「1日3時間睡眠にする方法」などという書籍やセミナーなども見かけます。

 しかし、そのような努力よりも、睡眠時間を確保する努力、起きている時間の生産性を高める努力をすることの方が合理的かつ前向きな努力です。

 短時間睡眠による昼間の眠気や注意力の散漫は大事故の元なのですから。

【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】=毎日新聞医療プレミア」より転載

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なぜ? 昼食後睡魔 [医学・医療短信]

誰も逃れられない「昼食後睡魔」の理由
内村直尚 / 久留米大学教授

 毎日、昼食後に眠気を感じる人は少なくないはずです。

 一般的にこの理由は「食後は消化のために胃に血流が集中し、脳の血流が低下するため」と理解されているようです。

 もしその通りならば、朝食後や夕食後にも同様の眠気に襲われてしかるべきです。

 しかし、そのような訴えを耳にすることはほとんどありません。

 そもそも毎食後に眠くなるようでは日常生活に支障が出てしまうでしょう。

 昼食後の眠気がなぜ生じるのか。

 体内時計が定めた覚醒低下の時間帯

 2017年にノーベル医学生理学賞をアメリカ人研究者3人が受賞しました。

 そのテーマは「概日リズムを制御する分子メカニズムの発見」でした。

「概日リズム」とは、生物が体内に備えている時間測定機能(体内時計)によって、日常生活が約24時間周期に規定されることです。

 この体内時計の仕組みにより、ヒトは昼間活動し、夜間は睡眠で休息をとり、それに応じて臓器などの活動もリズムが保たれています。

 実はこの体内時計をより詳しく調べていくと、ヒトの覚醒レベルは朝の起床直後から急上昇し、昼前に右肩下がりに低下していきます。

 そして、午後2~3時ぐらいに覚醒レベルが最も低くなります。

 その後、再び夜に向けて覚醒レベルが上昇し、午後9時前後を境に再び低下していきます。

 つまり体内時計の働きで、昼食後の午後2~3時は誰もが眠くなってしまう時間なのです。

 神経伝達物質「オレキシン」の影響

 もう一つ、昼食後に眠くなる科学的な理由があります。

 それは日本人の研究者が1990年代後半に発見した「オレキシン」という脳内神経伝達物質の一種が関係しています。

 オレキシンは主に、「空腹時の食欲増進」と「覚醒の維持」の二つの働きを持つことが知られています。

 オレキシンはヒト以外の動物の脳内にもあり、「食事を取る」という行動と密接な関係があります。

 動物は、おなかがすいたら食べ物を探さなくてはなりません。

 特に肉食動物や大昔のヒトにとっては「食事を取る=狩りを行う」ことです。

 つまり空腹時はオレキシンにより覚醒が維持される必要があるのです。

 そして、食後は体内で作られるオレキシンの量(分泌量)が低下します。

 このように、昼食後の時間帯は、体内時計の仕組みとオレキシンの作用が、共に覚醒低下に向けて働く時間帯なのです。

夜間の十分な睡眠と昼寝で予防

 避けようのないこの昼食後の眠気は、仕事や学業に励む人にとっては面倒なものです。

 これを防ぐ方法は、二つあります。

 一つは、夜間に6~8時間の睡眠をしっかり取ることです。

 夜間に十分な睡眠を取れていない人は、当然ながら昼食後に眠気を強く感じます。

 もう一つの予防法は昼寝です。

 ただし、昼寝の時間は30分までにとどめる必要があります。

 昼寝のコツ

 睡眠は、脳も体も眠る「ノンレム睡眠」で始まり、その後、脳は起きていても体が眠っている「レム睡眠」へと移行します。

 ノンレム睡眠は眠りの深さに応じて4段階に分けられます。

 最も深い4段階目の睡眠は、早ければ眠り始めてから30分後に到達してしまいます。

 4段階目のノンレム睡眠から起きた直後は、体は起きているのに脳は眠気を引きずってボーっとした「睡眠慣性」という状態です。

 この時に活動すると、不注意でミスをしたり、思わぬ事故を起こしたりするなどの悪影響が出かねません。

 ですから、4段階目のノンレム睡眠に到達する前に起きるのが昼寝のコツです。

 昼休みの一部を昼寝に当てよう

 昼寝に適した時間帯は、日中の覚醒レベルが最も低下する午後2~3時です。

 しかし、その時間帯に昼寝をするのは難しいでしょう。

 そこで、昼休みの一部を昼寝に当ててみましょう。

 完全に横になる必要はなく、椅子に座って机に伏せた状態でいいのです。

 短時間の昼寝でも、脳の活動は低下し、疲労回復と眠気の解消に役立ちます。

 これにより、脳はリフレッシュし午後の業務や学業の能率がアップするはずです。

【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】=「毎日新聞 医療プレミア」より転載。

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昼間の眠気の真相 [医学・医療短信]

新社会人を襲う昼間の眠気の真相
内村直尚 / 久留米大学教授

梅雨入りが始まっています。

毎年この少し前の時期から、私が勤めている久留米大学病院の睡眠外来では、4月に就職したばかりの新社会人の受診者が増えてきます。

彼らの多くは「昼間の耐えられない眠気」を訴えます。

中には業務時間の会議中や上司と話しながら居眠りをしてしまい、上司の命令で受診したという深刻な事例もあります。

なぜこの時期に新社会人の受診者が増えるのでしょうか。

中学校を境に始まる日本人の夜型化

彼らがなぜ睡眠外来を受診したのかという答えは、極めてシンプルです。

睡眠不足だからです。

睡眠不足を甘く見てはいけません。

医学的には「睡眠不足症候群」という病名が付く、立派な病気です。

しかも、とりわけ新社会人の睡眠不足は、現在の日本社会が抱える子供の生活の夜型化という社会的な問題と無縁とは言えません。

文部科学省が小学5年~高校3年を対象に2014年11月に行った「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」というデータがあります。

全国の公立学校から学年ごとに100校ずつ選んで実施し、計771校の2万3139人から回答を得たものです。

その結果から子供たちの就寝時間を見てみると、小学生は85.4%が午後11時までに就寝していますが、中学1年になると59.8%に減り、2年で45.6%、3年で22.6%にまで激減します。

高校生はさらに減少して16.4%になります。

つまり中学3年以降は、おおむね夜型生活となっているのです。

それでも中学、高校時はまだ校則や生徒指導が厳しいため、朝の起床時間はある程度厳守されています。

ところが、講義の出欠チェックが甘く、場合によっては代返でごまかせてしまう大学に入学すると、朝の起床時間を守る必要がなくなり、生活のリズムは大きく崩れ始めます。

1人暮らしならばなおさらです。

夜遅くまで友人と遊び歩く、あるいは飲酒する。自室でネットサーフィン、スマートフォンでチャットやゲームに興じ、就寝するのは午前3~4時。

そして朝は午前9~10時に起床ということも珍しくないでしょう。

にもかかわらず、4月に新社会人として勤務が始まると、大学生時代の起床時間前には会社に到着していなければなりません。

必然的に睡眠時間は3~4時間程度になります。

日常生活を円滑に送るために、成人はおおむね6~7時間の睡眠が必要とされていますので、明らかな睡眠不足となるわけです。

睡眠不足を悪化させる休日の「寝だめ」

さらにこうした睡眠不足が続くと、往々にして休日にこれを解消しようとします。

いわゆる「寝だめ」です。

しかし、実はこれが睡眠不足症候群を悪化させます。

ヒトの体内では生体リズムを調節する作用と催眠作用を持つメラトニンというホルモンが分泌されています。

メラトニンは起床後に日光を浴びると分泌量が減少し、そこから約16時間後に分泌量が増加し始めます。

つまり、ヒトは起床から16時間たたないと眠くならないといえます。

日曜日の正午に起床した場合、再び眠りにつけるのは翌日の午前4時。

こうなれば月曜日の業務中は当然、眠気に襲われるでしょう。

そもそもヒトは「寝だめ」、つまり睡眠の「貯金」はできません。

一方で、睡眠不足という名の「借金」の一部を、後の睡眠時間延長で「返済」することはできます。

しかし、この返済も生体リズムを考慮すると、1日当たり最大2時間程度が限界です。

成人に望ましい睡眠時間は1日6~7時間だと言いましたが、平日に毎日1時間不足するだけで、週末2日間に睡眠時間を1日2時間ずつ延長しても「債務超過」状態なのです。

不眠より治療が困難な睡眠不足

睡眠不足症候群は、不眠症と違って治療薬はありません。

就寝時間を早めるのが治療の要ですが、長年の生活習慣は容易に変更できないことを多くの人が自覚しているでしょう。

そこで、まず私たちが睡眠不足症候群の患者さんに実施してもらうのが、就寝と起床の時刻を記録する「睡眠日誌」を1カ月程度つけることです。

実際に目で見ることで恒常的な睡眠不足の深刻さを自覚してもらい、生活習慣の改善を促します。

これで改善する患者さんは良いのですが、本人のみでは無理なケースもあります。

例えば、患者さん本人が寝ようとしても、同居家族が深夜までこうこうと電気をつけて大音量でテレビを見ている場合や、職場の都合で帰宅時間が遅くなる場合などです。

このようなケースでは、家族や職場の上司に来院してもらい、協力を求めることもあります。

睡眠不足症候群は、生活の変化などがあれば、新入社員に限らず起こり得ます。

しかも、睡眠リズムの変更が定着するまでには最低1カ月は必要です。

もし、あらかじめ生活リズムの変更が予想されているならば、1カ月以上前から睡眠リズムの改変に取り組むことが何よりも大切です。
   ×   ×   ×
「眠りを知れば人生危うからず」

睡眠に悩みを抱える人は多いと思いますが、「たかが睡眠」と思っていませんか? 

それは大間違いです。睡眠は、生活習慣病や精神疾患などの健康問題だけでなく、産業事故や交通事故などの社会問題とも密接に関係しているのです。

私は、1981年に日本初の睡眠外来を設置した久留米大学病院で、日々睡眠に悩む患者の治療にあたっています。

長年の経験を基に、人にとって睡眠がどれだけ重要なのかをお伝えしたいと思います。

【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】=毎日新聞 医療プレミア 

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WHO、トランス脂肪酸の排除 [健康小文]

WHOがトランス脂肪酸の排除を計画

 世界保健機関(WHO)は5月14日に、世界の加工食品から工業的に製造されたトランス脂肪酸を段階的に排除するための戦略的行動指針「REPLACE」を発表した。

 WHOによると、トランス脂肪酸の摂取による心血管疾患で毎年5万人超が死亡していることから、トランス脂肪酸を排除することは人々の健康と生命を守るための鍵になるという。

 WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus氏は「加工食品に含まれるトランス脂肪酸を排除ための指針"REPLACE"を実行することを各国の政府に要求する。

 "REPLACE"の6つの戦略的行動を実行することで、食品からトランス脂肪酸を排除し、世界的な心血管疾患との戦いに勝利することができる」と述べている。

 非感染性疾患死の減少を推進

 工業的に製造されたトランス脂肪酸は、マーガリンなどの固形植物油やスナック菓子、焼成食品、揚げ物などに含まれる。

 製造業者は他の油よりも保存期間が長くなることからトランス脂肪酸を使用するが、風味やコストを変えずにより健康的な油を使用することもできる。

 "REPLACE"は、加工食品から工業的に製造されたトランス脂肪酸を迅速、完全、持続的に排除する6つの戦略的行動から成る。

●REview:工業的に製造されるトランス脂肪酸の原材料および必要な政策転換について展望する

●Promote:トランス脂肪酸をより健康的な脂肪や油に切り替える

●Legislate:トランス脂肪酸を排除するための規制措置を講じる

●Assess:食料品に含まれるトランス脂肪酸の量およびトランス脂肪酸の消費量の変化を評価、監視する

●Create:政策立案者、生産者、供給者、国民にトランス脂肪酸が健康に及ぼす悪影響に関する認識を促す

●Enforce:政策と規制のコンプライアンスを強化する

 幾つかの高所得国では、加工食品に含有できるトランス脂肪酸の量を法的に規制することで排除に成功した。

 また一部の国では、工業的に製造されたトランス脂肪酸の主な原料である部分水素添加油脂の使用を全国的に禁止している。

 トランス脂肪酸を最初に制限したデンマークでは、加工食品に含まれるトランス脂肪酸の量が劇的に低下し、心血管疾患死は経済協力開発機構(OECD)加盟国と比べてより急速に減少した。

 工業的に製造されたトランス脂肪酸を世界の食料品から排除することは、WHOの2019~23年の戦略的計画である第13回総合事業計画案(GPW13)の最優先目標の1つとなっている。

 GPW13は5月21~26日にジュネーブで開催される第71回世界保健総会の議題にも挙げられている。

 国際連合は持続可能な開発目標の一環として、世界の非感染性疾患による死亡を2030年までに3分の1に減少させることを目標としている。

 工業的に製造されたトランス脂肪酸を世界的に排除することで、この目標が達成できる可能性があるという。(大江 円)

 「 medical tribune」2018年05月21日

トランス脂肪酸は、構造中にトランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸。

トランス脂肪酸は天然の動植物の脂肪中に少し存在する。

水素を付加して硬化した部分硬化油を製造する過程で多く生成される。

マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングはそうして製造された硬化油である。

他にも特定の油の高温調理やマイクロ波加熱(電子レンジ)によっても多く発生することがある。

また天然にはウシ、ヒツジなど反芻動物の肉や乳製品の脂肪に含まれる。

LDLコレステロールを増加させ心血管疾患のリスクを高めるといわれ、2003年に世界保健機関(WHO)/国際連合食糧農業機関(FAO)合同専門委員会よって1日1%未満に控えるとの勧告が発表され、一部の国は法的な含有量の表示義務化、含有量の上限制限を設けた。

日本では、製造者が自主的に取り組んでいるのみであるが、同じように目標値が設定されている飽和脂肪酸の含有量が[1]増加している例が見られる。

パン、ケーキ、ドーナツ、クッキーといったベーカリー、スナック菓子、生クリームなどにも含有される。

他にもフライドポテト、ナゲット、電子レンジ調理のポップコーン、ビスケットといった食品中に含まれ、製造者の対策によって含有量が低下してきた国もあれば、そうでない国もある。

そうした食品を頻繁に食べれば、トランス脂肪酸を摂取しすぎることもある。
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安倍さん、大丈夫ですか? [健康小文]

 安倍晋三・首相の苦闘がつづいている。

 体調は大丈夫なんだろうか。

 2007年、第一次安倍内閣の首相を辞任したときの理由の大きな一つは「体調不良」。

 発表された病名は「機能性胃腸障害」だった。

 内視鏡検査では何ら異常は見つからないのに、胃もたれ、胃の痛み、胸やけ、下痢などの胃腸症状が続く病態を示す病名だ。

 以前はそうした病態はたいてい大抵「慢性胃炎」と診断された。

 内視鏡で見て、炎症があれば、もちろんのこと、なくても「慢性胃炎」といわれた。

 1998年、ローマで開かれた欧州消化器病学会で、「内視鏡検査では異常は認められないが、長期間にわたって胃腸症状が出没し、原因不明のものは、<ファンクショナル・ディスペプシア>と呼ぼう」と決められた。

 日本の消化器関連の学会もそれを受けて、「機能性ディスペプシア」という病名をつくった。

 ディスペプシアは、英和辞典には「消化不良」とあるが、医学的には「上腹部消化管症状」を意味する。

 わかりにくい病名だと、「機能性胃腸症」を推す意見もあったが、「機能性ディスペプシア」に決まったそうだ。

 だが、安倍さんの主治医も、そのカタカナ病名は使わなかった。

 その後、安倍さんは、本当の病名は「潰瘍性大腸炎」と公表された。

 大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍や糜爛(びらん)ができ、激しい腹痛や下痢、粘血便(血液や粘液、ウミなどが混じった便)が出る、原因不明の難病だ。

 同じように腸管に炎症が生じ、下痢などの症状が起こる病気の、クローン病と合わせて「炎症性腸疾患」と呼ばれる。

 潰瘍性大腸炎の炎症は、大腸だけに限られるが、クローン病では口から肛門までの消化管のすべてに炎症が起こる可能性がある(一般的には小腸から大腸にかけてが多い)。

「潰瘍性大腸炎は、焼夷弾で焼け野原。クローン病はテロリストが仕掛けた爆弾。一点集中したところに深い穴があく」と、専門医はたとえる。

 どちらも活動期(再燃期)と緩解期を繰り返すタイプが最も多い。

 活動期の程度は軽症、中等症、重症、劇症に分類される。

 軽症は下痢の回数が1日4回以下で、血便などの程度も軽く、全身症状はない。

 重症になると、1日10回以上もトイレに行き、食事もできなくなる。

 栄養がとれないからげっそりやせる。

 潰瘍性大腸炎は、1859年、イギリスで初めて報告された。

 わが日本は幕末、安政の大獄や桜田門外の変が起こったころだ。

 クローン病は、1932年、ニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医、バーナード・クローンが報告した。

 日本人には少ない病気だったが、近年急増している。

 現在の患者数は、潰瘍性大腸炎約16万人、毎年5000人程度増加している。

 クローン病の患者数は約4万人以上。

 どちらも自己免疫疾患といわれている。

 自己免疫疾患とは、病気に対抗し体を守る免疫反応のしくみが乱れ、自分自身の体を攻撃してしまう病気。

 自己抗体が関節を攻撃すると関節リウマチになるように、炎症性腸疾患では、大腸などの腸管を攻撃する。

 もう一つ、重要なのは食事で、食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取量の増加)につれて、潰瘍性大腸炎もクローン病も増えている。

 特にクローン病には食生活の影響が大きいことが、厚労省研究班の食事調査で明らかにされた。

 一方、潰瘍性大腸炎で特徴的なのはストレスで、病気になる前、あるいは病気が再燃する前に、非常に苦悩した症例が多いという。

 そう聞くと、つい、あの首相辞任時の憔悴しきった感じの安倍さんを思い出す。

 昨今、テレビで見る安倍さんにはあの面影は、ほとんどうかがえない。

 いま、いくつかよく効く新薬ができて、そのなかの一つが安倍さんにも著効を呈し、寛解同然の状態であるという。

 なお、潰瘍性大腸炎もクローン病も、平均寿命は普通の人と変わらない。
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発症時刻不明な脳梗塞、どうする? [医学・医療短信]

発症時刻不明な脳梗塞でも治療対象に

脳梗塞の発症直後は薬物治療が基本で、「血栓溶解療法」、「抗血小板療法」、「抗凝固療法」、「脳保護療法」などが行なわれます。

「血栓溶解療法」は、血管に詰まった血栓を、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)という薬で溶かし、血流を再開させる方法です。

「抗血小板療法」は血小板の働きを抑えて、血液が固まるのを防ぐ治療法です。

現在のところ日本で臨床的に用いられているt-PA製剤はすべて、遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクチベーター(rt-PA:アルテプラーゼ静注療法)です。

t-PA治療は、起こって4.5時間以内、カテーテル(細い管)を使用して詰まった血栓を除去する血管内治療は8時間以内の患者さんが対象となります。

この限られた時間内に専門病院を受診し治療を受けられるかどうかが、その後の経過を左右するのです。

発症時刻が不明の脳梗塞では、最終未発症時刻(元気であることが確認された最終時刻)をもって発症時刻とすることとなっており、朝目が覚めたら麻痺していたという症例の多くはrt-PA製剤の適応になっていません。

しかし、欧州脳卒中協会年次集会で発表されたWAKE-UP試験では、発症時刻が不明の脳卒中急性期で、MRI拡散強調画像に脳梗塞を示す信号変化が認められない患者において、rt-PA静注による血栓溶解療法とプラセボ投与を比較した結果、rt-PA群の方が90日後の機能的転帰が良好でした。

結果は、N Engl J Med(2018年5月16日オンライン版)に掲載されました。

熊本市民病院内科の橋本洋一郎先生の解説をご紹介します。

指針を変える可能性

現在、脳梗塞超急性期治療では、発症4.5時間以内のアルテプラーゼ静注療法、発症6時間以内の機械的血栓回収療法のエビデンスが確立している。

しかし、この2つの治療法を大きく変える可能性がある報告が発表された。

DAWN研究(N Engl J Med 2018; 378: 11-21)、DEFUSE3研究(N Engl J Med 2018; 378: 708-718)、さらに今回発表されたWAKE-UP試験である。

DAWN研究は発症時刻不明例を含む最終健常確認時刻から6〜24時間、DEFUSE3研究は最終健常確認時刻から6〜16時間の内頸動脈または中大脳動脈M1(主幹部)閉塞による急性期脳梗塞で、神経徴候あるいは灌流低下領域と虚血コア体積のミスマッチを有する例を対象に、内科治療+血管内治療と内科治療単独とを比較したランダム化比較試験(RCT)で、血管内治療の追加が3カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)スコアを改善させた。

これらの結果を踏まえて、日本脳卒中学会(幹事学会)、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会の3学会は「経皮経管的血栓回収機器の適性使用指針改訂第3版」を作成、公表した。

一定の条件を満たせば、血管内治療の適応が6時間以内から16時間あるいは24時間以内に拡大されることとなった。

「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版(2012年10月、2016年9月一部改訂)」 では、「rt-PA静注療法は、発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者に対して行う(エビデンスレベルⅠa、推奨グレードA)」「発見時刻は発症時刻ではない。発症時刻が不明な時には、最終未発症時刻をもって発症時刻とする(エビデンスレベルⅣ、推奨グレードA)」となっている。

24時に就寝し、朝7時に目が覚めたら麻痺が出ていたという症例では、MRI所見などから発症4.5時間以内が推定されても、最終未発症時刻が24時なのでアルテプラーゼが投与できない。

わが国で恩恵を受ける患者が多い

 今回のWAKE-UP試験では、発症時刻が不明の脳梗塞で、MRIの画像所見(DWI-FLAIRミスマッチ)で、発症から4.5時間以内と推定される症例に対してアルテプラーゼ静注療法を行ったところ、プラセボ群に比べて3カ月後の転帰良好例が増えることが示された。

この研究はDWIが撮影できるMRIがあれば実施可能な治療法であり、この結果に基づいて指針が変更されれば、人口に対するMRI数が世界で最も多いわが国で恩恵を受ける患者が多くなると考えられる非常に重要な結果である。

DWI-FLAIRミスマッチとはどのようなものであろうか。

わが国では睡眠中発症および発症時刻不明の脳梗塞患者へのrt-PA静注療法の適応拡大を目指した多施設共同試験THAWS が進行中である。

WAKE-UP試験の結果から、わが国におけるガイドラインの改訂、当局との交渉による適応拡大などが進むかどうかが今後の課題となってくる。

今回の結果から欧米でのガイドラインの改訂、あるいはアルテプラーゼの適応拡大を当局が認可するかどうかを見守っていきたい。

私は40年前の学生時代に神経内科の講義を鹿児島大学第三内科で受けたが、井形昭弘教授は「神経疾患は"分からない、治らない、諦めない、の3ない"だ」と言われた。

しかし、私が医学部に入学した1975年に日本で導入開始されたCT、その後の神経超音波検査、MRI、SPECTの登場で、脳梗塞を含めた多くの神経疾患もだいぶ分かるようになり、治せるようにもなり、疾患の病勢・再発をうまく調整できるようにもなり、諦めなくてもよくなってきた。

発症時刻が不明でもMRIの画像所見(DWI-FLAIRミスマッチ)から発症4.5時間以内であることが示唆される脳梗塞患者ではアルテプラーゼが有効となる可能性が高くなるので、わが国でDWI-FLAIRミスマッチのある脳梗塞症例に対してアルテプラーゼで治療できるようになることを期待している。

「Medical Tribune」2018年05月23日

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