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「健康常識ウソ・ホント」再録 ブログトップ
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お茶は薬、鉄剤禁忌はウソ。 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(46)  

鉄剤=OK、気管支拡張剤=NG。

♫夏も近づく八十八夜…も過ぎて、新茶の出盛る季節が訪れた。

急須に少し多めに茶葉を入れ、少し待ってつぐと、茶わんに緑色の光がみち、さわやかな香りが立ちのぼる。………。

「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり」と説いたのは、臨済宗の開祖、栄西禅師。宋から茶の種を持ち帰って栽培し、『喫茶養生記』を著した。日本で本格的に飲茶の習慣が普及したのはそれ以後といわれる。

現代科学が明らかにした緑茶の効能は、抗酸化作用、血中コレステロール低下作用、血圧降下作用、血糖低下作用、抗菌作用、抗インフルエンザ作用、虫歯・口臭予防作用、疲労感や眠気の除去作用……などなど。

「抗酸化」から「抗インフル」までを言い換えると、がん、動脈硬化、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病、風邪、食中毒を防ぎ・治す効果あり─ということになる。

健康な高齢者とアルツハイマー型認知症患者の「食品摂取頻度調査」を行った植木彰・自治医大教授(神経内科)によると、健康なお年寄りたちが緑茶を1日5杯以上飲んでいるのに対して、認知症の人はほとんど飲んでいなかった。

「緑茶のフラボノイド(カテキン)には、抗酸化作用があることが知られており、アルツハイマー型認知症の発症の予防に関与していることが考えられる」と、『ボケを防ぐ本』(マキノ出版刊)で述べている。

 金沢大学大学院神経内科の山田正仁教授は、緑茶に含まれるポリフェノール類が認知症の予防・治療に役立つ可能性について着目。

高齢化が進んだ石川県内の町で、飲んだ緑茶の量と認知症の発症リスクとの関連を調べている。

風邪の季節の「お茶うがい」を唱道した島村忠勝・昭和大学医学部名誉教授(細菌学)は、食中毒の季節には「食後のお茶」をお忘れなく─と強くすすめている。

緑茶1㍉㍑でO157を1万個死滅させる。だからたくさん飲む必要はない。湯のみ茶碗1杯(約100㍉㍑)で十分だそうだ。

ところで、お茶といえば、昔は「鉄剤服用の30分~1時間は緑茶の飲用をさける」が常識とされていた。

緑茶の渋み成分のカテキン(タンニン)が鉄と結合してタンニン酸となり、腸粘膜からの鉄の吸収を妨げるというのがその理由だった。

だが、この「常識」はウソだとわかった。

中程度の鉄欠乏性貧血の人を二つのグループに分けて、鉄剤服用30分前後にお茶を飲んだグループと、飲まないグループとで、貧血の回復の程度を調べたが、明らかな差異はなかった。

鉄欠乏性貧血で体内の鉄量が減少した状態だったら、茶を飲もうが飲むまいが(カテキンがあってもなくても)、腸管からは効率よく鉄が吸収される。鉄剤の貧血改善効果は同じなので茶を禁じるのは無意味─ということに今はなっている。

貧血は赤血球の中の血色素(ヘモグロビン)が減少して起こる。

血色素は、鉄とたんぱく質からできている。

貧血の約7割はその鉄が不足した「鉄欠乏性貧血」だ。

小学3年生の女児がしょっちゅう頭が痛い、痛いと言う。髄膜炎ではないかと心配したが、血液検査で貧血とわかった。鉄剤を注射したら頭痛もケロリと治った。

別の子は一時期、むやみに氷を食べたがるようになった。これも鉄欠乏性貧血による異食症だった。鉄剤を飲ませたら氷を食べるのが止まった。

小児科の先生から聞いた症例だ。

小学生のころは体の成長が速く、バランスのよい食事をしていても鉄分が不足することがあるという。

貧血になると体のあちこちで酸素不足が起こる。顔色が青白くなり、息切れ、動悸、めまい、疲労けん怠感、頭痛、耳鳴り、食欲不振、微熱……といった症状が出てくる。

注意力や集中力の低下も起こる。急に成績が下がった学童の原因が貧血だったという話もある。

貧血かどうかは2cc程度の採血検査でわかる。

●ひとこと追加。

お茶をたくさん飲んではいけないといわれるのは、ぜんそくなどの治療で気管支拡張剤を用いているときだ。

薬の主成分のテオフィリンとお茶のカフェインは、作用が似ているため、薬が効きすぎて副作用が出やすくなるからだ。

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やめよう! 早朝ジョギング・食後の運動。 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(45) 

やめよう! 早朝ジョギング・食後の運動。


自分の持てる力の半分でやる運動「ニコニコペース」の名付け親、荒川規矩男・福岡大学名誉教授は、高血圧の専門医である。

高血圧の運動療法として、最大運動強度(その人が出せる最大限の力)の50%程度でやる運動のすぐれた効果を、多くの患者の症例で証明した。

なぜ、50%程度なのか?

運動量が50%を超えると、血液中の疲労物質(と、当時は考えられていた)乳酸がふえ始めることが、臨床実験でわかったからだ。

しかし、力を50%以下に抑えた有酸素運動であれば、そんなことはない。

乳酸がたまってこないので、らくらく続けられる。

「荒川方式(アラカワメソッド)」と呼ばれるこの高血圧の運動療法は、WHO(世界保健機構)も強く推奨している。

「運動強度さえ50%程度なら、運動の種類は問わない。水泳、テニス、ゴルフ、なんでもいいのですが、私がいちばんお勧めしたいのは歩くことです。

ちょっと早足で、息が切れない程度で歩くと、だいたい50%の運動になります」

1時間でも2時間でもちっともつらくない。

ニコニコしながらやれるから、ニコニコペースというわけだが、何時間もやる必要はない。1日30分でじゅうぶんだという。

「雨の日も風の日も歩けとは言いません。1日や2日、休んでもどうってことはない。

そこが薬と違うところです。薬を1日のみ忘れると具合のわるいこともありますが、運動にはそんな心配はいりません」

と、荒川先生は請け合ってくれた。

さて、そこで問題になるのが、いつやるか、である。

「食後に軽い運動を─」とはよく言われることだが、あまり感心しない。避けるべきだ。

早朝も、夜間も、よくない。

食後、胃にどっさり食物が入っているうちの運動は、消化を妨げる。

だから胃や肝臓に病気をもつ人は、食後の安静を医師にきびしく指示される。

そうではない元気な人も、食後はゆっくりお茶など楽しみながら歓談するのがよろしい。

この件について、貝原益軒『養生訓』が、

「わかき人は食後に弓を射、鑓(やり)・太刀を習ひ、身を動かし、歩行すべし。労動を過(すご)すべからず。

老人も其気体(そのきたい=その気や体)に応じ、少労動すべし。

案(おしまずき=脇息)によりかかり、一処に久しく安坐すべからず(長く楽な姿勢でいてはいけない)。気血を滞らしめ、飲食消化しがたし」(巻三)

―と勧めているのは暴論にひとしいと思う。「労動を過すべからず(体を動かし過ぎてはいけない)」の一行は別として。

もしかしたら、昔の日本人の胃弱の一因はここにあるのではないか。

『養生訓』といえば、必読順守の健康法の教典だったのだから─。

早朝の運動がよくないのは、体温が低く、エネルギーも水分も不足しているからだ。

そんなコンディションでジョギングなどやるのは命知らずの暴挙といっていい。

夜間の運動は交感神経が活発になって、寝つきが悪くなる。

最適な時間帯は、食後1時間~2時間後。消化も進んでいて、血糖値も安定している。

夕方から夜にかけて、できれば夕食前に、少しの食べ物と水分を摂って歩き、そのあと夕食を食べるのがベスト。

言うまでもないことだが、酒を飲んで走るなど、もってのほか。

風邪気味で熱がある、体がだるいなどの症状があるとき、睡眠不足が続いているときも、運動は控えたほうがよい。

前回述べたように過激な運動は免疫力を低下させるが、適度な運動は逆に免疫力を上げ、病気を防いで寿命を延ばしてくれる。

運動をしている人は、していない人に比べて、細胞の老化が10年分ほど遅い―という細胞レベルでの「抗加齢効果」もわかっている。

さあ、爽やか五月! ニコニコペースの運動を始めよう! 続けよう!
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「スポーツは体にわるい」はホントか? [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(44) 

「スポーツは体にわるい」はホントか?

風薫る五月。

絶好の運動日和がつづいている。

にわかスポーツマンがどっとふえる季節だが、はまり過ぎちゃいけませんよ。

過激な運動のあとには免疫力が低下し、感染症にかかりやすいことがわかっているからだ。

アスリートが意外に風邪を引きやすかったり、だいじな試合の前に体調を崩したりしがちなのは、よく聞く話である。

なぜか? 

運動免疫学の専門家の説明は、こうだ。

激しい運動のあと、血液中の物質を測ると、「IgG値」と「NK細胞」の活性度が低下し、「インターロイキン6」がふえている。

IgGは、体内に侵入した抗原(病原体やウイルス・細菌など)に対する抗体として働く5種類の免疫グロブリン(Ig)のうちいちばん多いグロブリン(単純たんぱく質)だ。

NK(ナチュラルキラー)細胞は、白血球の一種のリンパ球の15~20%を占める細胞。

体のおまわりさんのようなもので、体内をいつもくまなくパトロールして、がん細胞の芽やさまざまなウイルスに感染した細胞をやっつけている。

NK活性が低下すると、感染症やがんにかかりやすくなる。

インターロイキン6(IL-6)は、免疫にかかわるたんぱく質=サイトカインの一種。

免疫を抑制し、炎症を引き起こすので炎症性サイトカインと呼ばれる。

通常の状態ではIL-6はほとんど検出されないが、フルマラソンのあとの血液中では約100倍もふえることがあり、関節リウマチ患者の関節液中には著しく増加する。

IL-6の激増は、生体が酷使されていることの証拠といえる。

過激な運動のあとで生じるこうした血中物質の変動によって、免疫のはたらきが数時間から数日、一過性に低下した状態を「オープンウィンドウ」と呼ぶ。

感染症などに「窓を開けた」状態というわけだ。

実際、マラソンのあと参加選手の多くに風邪の症状がみられたり、感染症にかかるリスクが高まったりすることは、内外の研究報告でも確かめられている。

そうした過激な運動を長く続けていると、当然、寿命にも影響する。
こんな調査研究がある。

体育学部をもつある国立大学の卒業生の110年間の死亡者のなかから、生年と没年の明白な3113人を抽出し(戦死・戦病死、事故死などを除き)、体育系、文科系、理科系に分けてそれぞれの平均寿命を算出した。

結果、体育系=60.6歳、文科系=66.8歳、理科系=66.1歳だった。

「直接の死因についての資料はなかったが、体に重い負荷のかかる激しい運動を、長期にわたって続けた体育系卒業者が、他のグループに比べて短命なのは明らか」

 と、調査を行った研究者は話している。

なぜ、激しい運動が寿命を縮めるのか。

「ひとことでいってしまえば、運動によって酸素の消費量が増え、それにつれて体内に『活性酸素』と呼ばれる猛烈な毒が発生し、生体を傷つけることと、運動がストレスになることである」

基礎運動科学が専門の加藤邦彦・理愽(東京大学理学部)は、著書『スポーツは体にわるい』(カッパサイエンス=光文社)にそう記している。

同書には、運動量の増大によって生じる活性酸素が、老化・短命を促進すること、スポーツがストレスであること―が、多くの研究実験をもとに詳しく明快に説かれている。

過激な運動が健康長寿の妨害因子であることに異論を差しはさむ余地はないようだ。

反面、適度な運動が、免疫力を高め、感染症のリスクを減弱し、生活習慣病を防ぎ、健康寿命を延ばす大きな要因であることも事実である。

では、「適度な運動」とは?

自分が出せる最大限の力(最大運動強度)の半分ぐらいの「ニコニコペース」が、よい。

それだったら血液中にエネルギー源の糖質の代謝産物の乳酸がふえてこないので、らくらく続けられる。

楽しく体を動かすと、エンドルフィンという快感ホルモンが脳内から分泌され、NK細胞の活性が上がる。

健康のための運動は無理せず楽しくやるに限る。

なお、「ニコニコペース」の運動は「荒川方式(アラカワメソッド)」と呼ばれ、WHO(世界保健機構)が推奨している。

これについては次回に─。
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菜食vs肉食、長命はどちら? [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(43) 

菜食vs肉食、長命はどちら?


「元気に長生きするのにいちばんだいじなことは?」 と聞かれたら、「正しい食生活です」。

だれでもそう答えるだろう。

そこで古来さまざまな食事法が説かれてきた。

なかで、最もえんえんと信奉されてきた一つが「菜食長命」説で、これを裏返すと「肉食短命」になるので、しばしば両者の激突がみられた。

最近も、『長生きしたけりゃ肉は食べるな』と唱導する本と、『肉を食べる人は長生きする』と推奨する本が、ほとんど同時に出版されて話題になった。

「肉食べるな」の若杉友子さんは、桜沢如一氏などが提唱した「マクロビオティック(東洋の陰陽説による長寿法)」の流れを汲む食養生の指導者。

「日本人に肉は合わない」と断言している。

農耕民族の日本人は穀物菜食をしてきたため腸が長く、肉のカスが腸内に長く残り、腐敗し、さまざまな毒素が発生、血液が汚され、細胞のガン化を招いてしまう、と。

「肉、食べろ」の柴田博さんは、東京都老人総合研究所副所長、桜美林大学大学院老年学教授を経て、現在は日本応用老年学会理事長。

「肉こそ長寿の秘訣」と強調する。

年をとっても体は新陳代謝をするので、体内では合成できない必須アミノ酸を多く含む動物性たんぱく質が欠かせない。

年をとればたんぱく質の合成能力そのものも落ちるので、肉をきちんと食べる必要がある。

「80代でなお元気盛んな人は、70代のときよりも1週間に肉を食べる回数が、むしろ多くなっています」と。

肉大好き人間としてはつい肉食派の肩を持ちたくなる。

えこ贔屓のついでに、もう少し引用する。

東京都老人総合研究所は、東京都小金井市などで、多くの老人たちを十数年間、追跡調査した。

それによると、ある種の信念によって、あるいは医師の指示によって、肉や魚をほとんどまったく食べないような食生活をしていた人たちが、最も早く亡くなったり、あるいは体力が弱って働けなくなったりしている。

肉も魚もよく食べる、牛乳もよく飲む―という人たちが、いちばん元気で長生きしているという。

昔の田舎のじいさん、ばあさんは、たいてい腰が曲がっていた。顔はしわだらけだった。

だがいまはめったにそんな人は見かけない。いまの日本人は寿命が延びただけではなく、若々しい。

これは労働形態が変わり、昔のように腰をかがめて長時間の農作業をするといったことがなくなったからでもあるだろう。

しかし、最大の原因は食生活が豊かになり、栄養がよくなったからだ。

明治以来、日本人の食事は、1日約2000㌔㌍というエネルギー摂取量は(戦中戦後の食糧難時代を除いて)それほど変わってない。変わったのはそのエネルギー構成の内容だ。

明治の末期、日本人は1日平均で動物性たんぱく質を3グラム(12㌔㌍)、脂肪を13グラム(117㌔㌍)しかとってなかった。両方合わせて129㌔㌍、総エネルギー摂取量の1割にも達しない。

あとの大半のエネルギーは、大豆などの植物性たんぱく質がいくらかあったにせよ、米、麦、イモ類などの炭水化物(でんぷんや糖質)で補っていたわけだ。

現在の日本人の動物性たんぱく質の摂取量は一日約45グラム(明治時代の15倍)、脂肪は58グラム(同4・5倍)。

早くいえば肉や魚を15倍多く食べるようになった。これが長命と若さの最大原因だ。

体格がよくなり、寿命が延び、腰が曲がらず、しわくちゃにもならなくなった。

東京都健康長寿医療センター長の井藤英喜先生も、こう話している。

「たんぱく質のとり過ぎはよくないとされていますが、高齢者へのたんぱく質制限は、長寿には結びつかないことがわかってきました。高齢者では、筋肉の減少が大きな問題になります。たんぱく質は筋肉減少の防止に大いに役立ちますから、十分に摂取することが大切です」

元気で若々しくありたいと思うのなら、肉も、魚も、卵も、そしてもちろん野菜も、バランスよく食べるべきだ。

ただし、脂肪のとりすぎは動脈硬化のもと。それだけはよくよく注意が必要だ。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年4月25日掲載の「コラム」より再録。
 同サイトは、美容・ヘルスケア・妊娠・介護福祉に関するニュースや体によい食事のレシピなど、健康・医療に関する情報を日々発信している。
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赤ちゃんのうつぶせ寝の危険度 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(42)  

うつぶせ寝の転変。

育児書の名著中の名著といわれる松田道雄著『私は赤ちゃん』のなかに、うつぶせ寝に触れた箇所がある。

赤ちゃんの「私」が、うつぶせに寝ていると、ママやパパはそのたびに仰向けにしてしまう。

「私はうつむいてねるほうがらくなんだ。大地にしっかりとつかまっていたいんだ。

やわらかいフトンに胸を押し当てているほうが、気持ちがいいんだ」。

同書の初版発行は1960年。うつぶせ寝はそのころのはやりでもあった。

その風習は、進駐軍の夫人たちが持ち込んだものだった。

しかし、ベッドとちがって軟らかい布団に寝かせたための窒息死が相次ぎ、「近ごろ流行、うつぶせ寝の危険度」といった記事が週刊誌をにぎわしたりして、いつの間にか消えた。

再びはやり始めたのは1980年代だった。

1988年の「小児保健セミナー」(日本小児保健協会主催)で、うつぶせ寝を採用している産婦人科医や小児科医が、うつぶせ寝の臨床報告をしている。

「吐乳が予防できる」「ミルクをよく飲み、よく眠る」「運動神経機能の発達がよく、首のすわり、ハイハイが早い」「頭の変形予防によい」「うつぶせ寝になるときにとるカエル足は、先天股脱の予防によい」など、プラス面が多いというものであった。

そして、当時、最も強くママたちの心をとらえたのは、うつぶせ寝で育てると「絶壁頭にならない」という美容家、大関早苗さんの推奨だった。

大関さんは、孫が生まれたロンドンの病院を訪ねて、うつぶせ寝を知り、西洋人の彫りの深い顔立ち、ヒップアップした体形の原点はここにあるのではないか、と考えた。

「うつぶせ寝で育てた赤ちゃんに絶壁頭はない」と新聞・雑誌に書き、テレビ・ラジオで話した。

東京オペグループ(主な会員は産婦人科の開業医)を主宰する杉山四郎・杉山産婦人科院長は、欧米の産院を何度も視察し、うつぶせ寝の採用に踏み切り、それに追随する産院がふえた。

東京オペグループのセミナーの講師として大関さんを招いたこともあった。

杉山医師は、うつぶせ寝のさい厳守しなければならない、次のようなルールを母親たちに指導した。
寝具は軟らかい布団をやめて、硬いベッドかマットレスを用いる。

②シーツはしわが寄らないように張る。

③赤ちゃんの衣類は袖口がフイットした半袖が理想。

④寝ている1㍍以内にはガーゼ、そのほかのものを置かない。

⑤母子相互関係を密にする。

ところが、1992年、米小児科学会が、突然死した乳児にはうつぶせ寝が多く、乳幼児突然死症候群(SIDS=シッズ)の発生率は、乳児を仰向けに寝かせることで有意に減少し得るという声明を発表した。

日本でも1997年、厚生省(現・厚生労働省)の研究班が、うつぶせ寝にすると、仰向け寝よりもSIDSの発症リスクが約3倍も高いことがわかったと発表。

同省は、うつぶせ寝とたばこ(両親の喫煙もSIDS発生の大きな危険因子)をやめる啓発キャンペーンを展開した。

結果、年間600例にも達した発症数が年々減少、2011年には148例になった。

「うつぶせ寝がSIDSを引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。

また、なるべく赤ちゃんを一人にしないことや、寝かせ方に対する配慮をすることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことになります」(同省HP)

成人のうつぶせ寝を勧める「腹臥位療法推進研究会」の名誉会長、日野原重明先生もこう話している。

「赤ちゃんがうつぶせ寝で窒息死するのは、一つは布団や枕に問題があるんです。顔が枕や布団に埋まらなければ窒息する心配はない。

布団はかためのものにして、うつぶせになったとき顔が埋まらないよう気をつける。

そうすれば、うつぶせ寝のほうが呼吸が楽で心臓にも負担が少ないし、うつぶせ寝で育てると、頭の形がよくなるともいわれています」(雑誌『壮快』2004年11月号「名医に聞く うつぶせ寝の効用」)。
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寝相と健康、関係ない? ある? [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(41)  

寝相と健康、関係ない? ある?

寝相と健康については、じつにいろいろさまざまな「常識」が語られている。

「左下に寝ると心臓を圧迫する。こわい夢をみる」という人があるかと思うと、「右下に寝るのは不吉だ」と戒める人がある。

それじゃ、仰向きかうつぶせで寝るしかないが、「仰向きはよくない」と教える先生もいるし、「うつぶせ寝は危険だ」と警告する先生もいる。

一々、素直に聞いてたら、立って寝るしかないじゃないか。そんなことできっこない。みんなウソなのである。

「左下に寝ると心臓を圧迫する」は、もっともらしいが、胸部は12個の胸椎と左右12対の肋骨、さらに1個の胸骨から成り立っていて、ここに肋骨筋、胸筋という硬い筋肉がつき、その内側にある左右の肺と心臓などをがっちり保護している。寝相ぐらいで心臓が圧迫されるなんて100%、ない。

「右下は不吉」は、釈迦涅槃図の釈尊が右下にて入寂されているところから生じた迷信だ─という解釈を聞いたことがある。

「仰向き寝」否定説の言いだしっぺは貝原益軒だろう。『養生訓』巻五にこうある。

「夜ふすには必ず側(かたわら)にそばたち、わきを下にしてふすべし。仰のきふすべからず。仰のきふせば、気ふさがりて、おそはるる事あり(夜寝るときは、必ず側臥位で寝ないといけない。仰向き寝はいけない。仰向きに寝ると、気がふさがって、うなされることがある)」

このレクチャーが江戸時代から明治大正にかけて日本人を支配した。

生理学上そんなことはあり得ない。

「寝る位置は意志と無関係に当人のもっとも楽な姿勢になるものだから就眠時の位置は眠りやすいようにすればよい。益軒は側臥位が眠りやすかったまでだ」とは、『養生訓』の現代語訳の筆者、松田道雄先生の注釈。

「うつぶせ寝は危険だ」は、乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息死の最も大きな危険因子がうつぶせ寝だという理由だった。

だが一方では、赤ちゃんのうつぶせ寝を推奨する説が広まったこともある。

賛否両論、それぞれ小児科の専門家がけっこう説得力のある主張を展開し、ついには厚生省(現・厚生労働省)が啓発キャンペーンを行うということあった。

この赤ちゃんの寝かせ方=うつぶせ寝の当否についての詳説は、次回にご紹介します。

では、乳幼児以外のうつぶせ寝(腹臥位)はどうなのか。これは大いによろしい。

「腹臥位療法推進研究会」なる専門家の集まりもあり、その名誉会長は日野原重明先生である。

10年以上も前のことだが、日野原先生にお話をうかがい、記事をつくった。(「名医に聞く うつぶせ寝の効用」=『壮快』2004年11月号)。その記事をごくごく短く要約してみる。うつぶせ寝の効用は―。

①腹側には骨がないから床ずれができない。

②自力で体位が変えられるので、寝たきりになりにくい。

③呼吸が楽になり、痰(たん)が出やすい。

④飲食物の誤飲がへる。

⑤胃に食物が停滞せず、ガスが出やすい。便秘が解消する。

⑥腹圧が加わるので膀胱内の残尿が少なくなり、尿失禁が改善する。

⑦両ひじが上がり肩を広げる形になるので、肩関節の緊張がとれ、肩こりが解消する。

⑧仰向けよりも肺活量がふえ、肺の中に残る空気の量(残気量)が少なくなり、動脈血酸素飽和度が上昇する。ひらたくいえば、血液の中の酸素の量がふえて炭酸ガスがへるので、血行がよくなり、脳の働きが活発になる。

「頭がスッキリしないときには30分ほどうつぶせ寝をするといいんです」と、日野原先生はおっしゃった。この面接取材のとき、先生は92歳だった。

「私は85歳ごろからこのエクササイズを始め、すっかりうつぶせ寝になりました。若いころ病んだ結核の後遺症で気管支拡張があって、仰向けに寝ていると肺に痰がたまるのですが、いまは朝起きたときも痰が出ず、快適です。腹臥位研究会所属の病院では、脳卒中後のリハビリテーションや呼吸不全の患者や気管支ぜんそく発作患者に、この療法が行われています」

それを受けて、記者は、「坂本九ちゃん、上を向いて歩こう。日野原先生、下を向いて寝よう、ですね」と答えている。

長期連載中の先生のエッセーにちなんでいうなら、「104歳・私の証」を支える一因は、夜の健康な眠り=うつぶせ寝であるだろう。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年4月11日掲載の「コラム」より再録。
 同サイトは、美容・ヘルスケア・妊娠・介護福祉に関するニュースや体によい食事のレシピなど、健康・医療に関する情報を日々発信している。

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睡眠不足は肥満も招く! [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(40)  

睡眠不足は肥満も招く!

「春は眠くなる。猫は鼠(ねずみ)を捕る事を忘れ、人は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さへ忘れて正体なくなる」

ご存じ、夏目漱石「草枕」の一節。

春に眠くなるわけは、気候変化(寒暖の差)の影響で―、

①自律神経のバランスが崩れる。

②ホルモン分泌が乱れる。

新陳代謝が盛んになり、ビタミンB1が不足する。

─など諸説ある。

それらがこもごも相まって疲労感を増し、眠い、だるい、に結びつくのだろう。

中国のことわざに「春困秋乏」というのがある。

「春は眠くてけだるく、秋は疲れやすい」の意味だという。

「春眠暁を覚えず」と詠んだ孟浩然(もうこうねん)は、ざっと1300年前、盛唐の詩人だ。

人間の体のしくみが1000年やそこらではすこしも変わるものではないことを教えてくれる。

そこへもってきて、24時間型社会の現代人の睡眠時間は短くなるばかりで、春のみならず年中眠い。

日本人の平均睡眠時間は7~8時間、サラリーマンの週日のそれは6~7時間。寝不足が常態化している。

寝不足の朝は頭も体もしゃきっとしない。それが何日も続けば体をこわす。

睡眠不足は栄養失調や運動不足と同じように─いや、あるいはそれ以上に大きな問題だ。

「睡眠時間と生活習慣病のリスク」を調べたいくつかの文献によると、睡眠不眠の中年の男性は、そうでない同年の男性に比べて、4年後の高血圧のリスクが約2倍、8年後の糖尿病のリスクが約2~3倍、12年後には約4.8倍と、睡眠不足が続けば続くほどリスクが高くなっている。

肥満の発症と睡眠時間の変化との関係性を調べた研究データをみると、睡眠時間の短い人ほど肥満の発症率が高い。

なぜ、そんなことになるのか?

睡眠不足だと、インスリン抵抗性が低下し、食欲にかかわるレプチンとかグレリンといったホルモンの分泌がアンバランスになるためだという。

インスリン抵抗性とは、糖質を処理するインスリンの作用─インスリンの「効き具合」のこと。

レプチンは、物を食べておなかがいっぱいになってくると、脂肪から分泌されるホルモンで、脳の視床下部にある摂食中枢に「満腹」のサインを送る。

グレリンは、胃や十二指腸から分泌されるホルモンで、「空腹」のサインを送って、食欲を亢進させる。

睡眠時間を短くすると、レプチンの分泌はへり、グレリンの分泌がふえることがわかっている。

つまり睡眠不足だと、糖質を処理するインスリンの効力が落ちるうえ、満腹のサインは出にくくなり、空腹のサインが出やすくなる。

寝不足の日は食欲がないように思われがちだが、実際は反対で、食欲(特に甘い物への欲求)が亢進し、肥満に直結しやすいことが実験的に確かめられている。

また、睡眠時間が短い人は欠食が多い、喫煙率が高い、寝酒をすると睡眠がかえって障害される─など、睡眠は、さまざまな生活習慣と密接に関係している。

これまで生活習慣病の予防は、食事、運動、酒、たばこ―の四つの生活習慣を主として対策が進められてきたが、睡眠が五つ目の生活習慣として非常に重要であることを示すエビデンス(医学的証拠)が集積されつつある。

人間は一生の3分の1近くは眠って過ごすわけだから、これが生活習慣病に無関係であるはずがない。

睡眠習慣は、酒やたばこと違って、特定の人だけではなく、すべての人にかかわる生活習慣だ。

元気に長生きするためには睡眠を含めた包括的な健康づくりが大切なのである。

あってはならぬ「過労死」にしても、煎じつめると「睡眠不足死」といえるのではないか。

よく眠り、よく働こう。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年4月4日掲載の「コラム」より再録。
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酒は肝臓病の「主犯」ではない [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(39)

酒は肝臓病の「主犯」ではない


むかしは肝臓病で亡くなると、きまって酒が「犯人」扱いされた。

「あの人、よく飲んだからなあ」

それがもし酒飲みとはいえない人だったら、「飲まない人だったのにねえ…」と不思議がられたりもした。

いや、いまでもその古い通念はりっぱに残っているようだ。近刊の小説のなかにこんな会話を見つけた。

「確か昨年お亡くなりになったとか」
「そうなんです。肝臓癌でした。お酒をそんなに飲む人ではなかったんですけど、なぜかやられてしまったんです」(林真理子作『マイストーリー』)

肝臓がんは、肝臓に初発する原発性肝臓がんと、ほかの臓器のがんが肝臓に移ってきた転移性肝臓がんに分けられる。

原発性肝臓がんの原因は90%以上、肝炎ウイルスである。

まだA型肝炎とB型肝炎のウイルスしか見つかってなく、未発見のウイルスを「非A・非B型」と呼んでいた1970年代初めからそのことはわかっていた。

アルコール性脂肪肝炎(ASH=アッシュ)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)、薬剤性肝炎などが進行した肝硬変や肝臓がんもあるが、日本人ではそれは10%程度にすぎない。

肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、A型からE型まで5種類ある(F型、G型、TT型の発見も報告されているが確定してない)。

A型とE型は、ウイルスに汚染された水や食物から経口感染する。

発熱、全身倦怠感、食欲低下などの症状や黄疸が出るが、一度かかると免疫ができて二度とかからない。

B型、C型、D型は血液や体液を介して感染する。

が、D型は日本には存在しない特殊なウイルスなので、日本人にとって実際的な問題となる肝炎はB型とC型である。

B型肝炎は、乳幼児期に感染するとキャリア(ウイルスの持続感染者)になる確率が高い。

成人の感染の多くはA型などと同じ一過性で終わるが、まれに劇症肝炎を発症、命にかかわる。

キャリアの母親からの感染を防ぐための赤ちゃんへのワクチン接種が1986年に始まり、キャリアになる子はいなくなった。

2016年からはすべての0歳児へのB型肝炎ワクチンの定期接種が実施される。

近い将来、B型肝炎ウイルスが原因の肝臓病は消滅するだろう。

残るはC型のみで、これが最も厄介だ。

感染した人の70%が慢性肝炎になり、適切な治療を受けないと、10年から30年の間に肝硬変、肝臓がんへと進行する。

原発性肝臓がんの原因の70%以上がC型、20%がB型である。

現在、C型肝炎ウイルスの感染者は約190万人~230万人と推定され、その8割以上が40歳以上、高齢者ほど感染率が高いことがわかっている。

そのうち約150万人は、自分が感染していることを知らず、治療の機会を逃していると考えられている。

高齢者ほど感染率が高いのは、献血時のウイルスのチェックが行われるようになったのが、B型は1972年、C型は92年からなので、それ以前の輸血による感染者が多いためである。

92年以前に輸血や血液製剤の治療を受けた人は、ウイルス検査を受けて感染の有無を確かめるべきである。

結果が陽性なら早期治療の機会が得られるし、陰性だったら肝臓がんの心配はまずしなくてもよい。

─というところで、話は戻る。

酒が肝臓病の「主犯」とされたのは、長きにわたる誤解であった。

では、多くの肝臓病に関して、酒は無罪なのか? 残念ながらそうではないようだ。

適量を超える飲酒を長く続けていると、最初は脂肪肝になり、それでも飲み続けていると肝炎になり、さらに飲み続けると肝硬変になり、ついには肝臓がんになる。

C型肝炎ウイルスに感染した肝細胞にアルコールを加えると、特殊なたんぱく質の遺伝子が活性化し、ウイルスの増殖が起こり、肝炎が発症することが実験で確かめられている。

酒の飲み過ぎがC型肝炎を発症させたり、病状を悪化させたりするわけだ。

酒は重大な「共犯」といわねばならない。

肝炎ウイルス検査が陽性であったら、C型肝炎はもとよりB型肝炎の人も、禁酒すべきだと専門医は強調している。


健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月28日掲載の「コラム」より再録。
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ピロリ菌が「胃がんの常識」を変えた [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(38)  

ピロリ菌が「胃がんの常識」を変えた

日本人には胃がんが多い。

最新がん統計(2015年4月)によると、

男性では死亡数は肺がんに次ぐ2位。罹患数は1位。

女性では死亡数は大腸がん、肺がんに次ぐ3位。罹患数は乳がん、大腸がんに次ぐ3位。

だが、これは比較的近年のこと。

男性の胃がん死亡数が肺がんに抜かれたのが1993年で、女性のそれが大腸がんに抜かれたのは2002年。

それまでは男女ともに死亡数も罹患数もずっと胃がんが1位だった。

なぜ、日本人にはそんなに胃がんが多い(多かった)のか?

まず戦後間もなくのころは「熱い食べ物」が危ないといわれた。

当時、日本でいちばん胃がんの死亡率が高かった奈良県に着目した高名な医学者が、原因は奈良県民が愛好する熱い茶がゆではないかと指摘し、茶がゆの廃止が呼びかけられた。

だが、この茶がゆ犯人説はその後の研究でほぼ完全に否定された。

茶がゆを愛好する地方は、奈良県以外にも和歌山県、三重県、山口県、佐渡などあちこちにあり、奈良県ほど胃がん死亡率が高くないなど、矛盾する事実がいろいろ出てきたからだ。

そのあと、「胃潰瘍前がん説」と「塩分過剰摂取説」が提唱され、近年まで最も有力な説として認められてきた。

たしかに胃潰瘍から始まる胃がんが多いことや、塩分の取りすぎが胃がんの悪化に関係していることは事実だが、それが胃がんの原因ではないことがいまは明らかになっている。

1983年、オーストラリアの研究者らが発見した、ヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)の研究が進み、胃がんの原因が特定されたからである。

以下、ピロリ菌に関する現代医学の定説を要約してみる。

ピロリ菌に感染すると、ほぼ100%の人に「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」という慢性胃炎の一種が生じ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のもとになる。

慢性胃炎が長く続いて萎縮性胃炎に変わると、その一部から胃がんが発生してくる。

ピロリ菌に感染している人が必ずしもみな胃がんになるわけではないが、遺伝性のスキルス胃がんなどを除き、ほとんどすべての胃がんの人はピロリ菌に感染しているという。

国立国際医療センターの研究チームは、ピロリ菌に感染した1246人と、感染していない280人を、8年間追跡調査した。

結果、感染者では約3%に胃がんが発生したが、非感染者ではゼロだった。

WHO(世界保健機関)は、「ピロリ菌は煙草なみの発がん物質」といい、

ピロリ菌が胃がんを引き起こすメカニズムを解明した畠山昌則・東京大教授(病因・病理学)は、「胃がんの99%はピロリ菌感染が原因です」と明言している。

日本ヘリコバクター学会は、胃がん予防のため、胃の粘膜にピロリ菌がいる人は全員、薬で除菌することを勧めている。

学会の提言を受けて、まず2000年に胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者のピロリ菌の除菌治療が公的医療保険の適用となり、

2010年には、

①ピロリ菌が原因の胃MALTリンパ腫、

②特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、

③内視鏡治療でがんを取り去った早期胃がんの再発防止─と対象が広がり、

2013年からは慢性胃炎の人のピロリ菌除菌も保険でできるようになった。

ヘリコバクター・ピロリ胃炎であるかどうかを医療機関でチェックし、陽性とわかったら除菌を行うことをお勧めしたい。

無症状の若い人たちでは、胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などを完全に抑えることができる。

中高年ではすでに前がん状態に進んでいる場合もあり、除菌後も定期的にフォローする必要がある。

「除菌後も必ず胃がん検診を受け続けます」と一筆とってから、治療を始める専門医もいる。

なお、食塩は胃粘膜のバリアーを侵し、ピロリ菌の毒素がしみ込みやすくなる。

胃がん予防には、塩分の取りすぎにも注意したい。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月21日掲載の「コラム」より再録。

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ガスの医学「屁一つは薬千服」 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(37)

ガスの医学「屁一つは薬千服」


あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり
                                 小野老朝臣(おののおゆのあそみ)

『万葉集』巻三に収められたこの有名な歌が「おなら」の語源だという説があり、花の季節にはつい思い出してしまう。もちろん俗説である。

ほんとうは「鳴らす」に接頭語の「お」がついたもの、と辞書には記されてある。

「漢(から)にては放屁(ほうひ)といい、上方にては屁(へ)をこくといい、関東にてはひるといい、女中はすべておならという。

その言葉は異なれども、鳴ると臭きは同じことなり」

と、風来山人こと平賀源内は『放屁論』のなかで言っている。

しかし、数あるなかには、鳴らないモノもあれば、そんなに臭くないモノもあるのは、ご存じのとおりである。

自家製のモノは、その当人にはむしろ芳香でさえある。

ともあれ、普通に出ているぶんにはどのように鳴ろうが、どれほど臭かろうが、心配はいらない。

どれくらいが「普通」かといえば、1回量50~500cc、1日量100~2800cc、とNASA(米航空宇宙局)のデータにはあるそうだ。

風来山人は、

「プッと鳴るもの上品にしてその形円く、ブウと鳴るもの中品にしてその形いびつなり。スーとすかすもの下品にて細長くして少しひらたし」といっているが(『放屁論』)、

ブーでもスーでも1日2~10回程度だったら通常の発射回数としていいのではないか。

思わずも一つもらして幼児(おさなご)はわれと驚き高笑ひせり   若山喜志子

もしガスのなかに有毒成分が含まれていたりすると、密閉空間の宇宙船内では重大なトラブルが発生しかねない。

で、NASAはおならの研究を徹底的に行った。

結果、おならの含有成分は約400種類、人間を死に至らしめるような有毒成分は含まれてないことが確認された。

「屁一つは薬千服」と、ことわざが教えているように健全?な一発は、健康な胃腸と肛門の証明である。

だが小さなガス漏れが、大事故の前ぶれであったりするように、おならの背後に思わぬ病気が隠れていることもある。

臭いガスが頻繁に出る(発生亢進)

ガスがたまって腹が張る(吸収障害)

ガスが出にくく、出るとき痛みを感じる(排泄障害)

─といった症状が長くつづくときは要注意、と専門医は警告している。

発生亢進は、食物の種類(サツマイモなど発酵しやすい食物や、ゴボウなど消化のわるい食物)と、消化液の分泌に関係がある。

サツマイモやゴボウなどを食べ過ぎたり、消化液の分泌が悪かったりすると、食べた物がつまでも腸内に残り、発酵や腐敗がふえ、ガスがたくさん発生する。

小腸に炎症があるときも食物の消化吸収がわるくなってガスの発生が亢進するし、肝臓病でもガスが発生しやすくなる。

肝臓病が進むと、ガス頻発期のあと腹水がたまってくる。

このことをフランスの肝臓専門医は「風のち雨」と表現しているそうだ。

ガスの吸収障害は、大腸の炎症によっても起きるが、心臓病や肝硬変、便秘や低血圧が原因のこともある。

三つめの排泄障害は、大腸の運動が減退したり、大腸・直腸に癒着や狭窄などの異常がある場合、しばしばみられる。

おならが出にくいだけでなく、出るとき痛みを感じるようであれば要注意。

そのうえ大便に血がまじっていたら大腸がんの初期かもしれない。すぐ精密検査を!

なお、呑気症(どんきしょう)といって、無意識のうちに空気をたくさんのみ込むクセのせいで、ガスやゲップが多発することもある。

早食い、ガブ飲み、炭酸飲料の飲み過ぎ、口呼吸、不安、緊張、ストレスなどが原因になりやすい。

ヒステリーも呑気症を伴いがちでガス・ゲップの多発を招きやすいのだそう。ヘェー。


健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月14日掲載の「コラム」より再録。
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