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大型連休/旅の心得 [ひとこと養生記]

かくれ脱水

長距離ドライブ、日盛りの道路を走る車のなかは、直射日光+輻射熱に、エアコンによる乾燥が加わり、体から水分が失われやすい環境です。

しかし、涼しい乾燥した空気にだまされて、気づかないうちに進行する「かくれ脱水」を招きがちです。

1~2時間に15分休憩をとり、100~200mlの水分補給をすれば、集中力の減退も防げます。飲むのはノンカフェイン飲料を─。

車内温度

JAFが行った「車内の温度変化」テストによると、春の最高外気温は23.3℃でしたが、窓を閉め切った車内室温は最高48.7℃まで上昇しました。

「春でも車内気温は真夏と同じぐらい上昇することを知って─」と警告しています。

脱水症を起こしやすい高齢者や小児は直射日光の当たりにくい座席に─。

窓に貼る透明な「遮熱カーフィルム」を用い、輻射熱をへらすのもおすすめです。

危険信号!

ドライブ中の脱水症状を防ぐには、「べた・だる・ふら」
の危険信号を見逃さないことが大切です。

べたは、べたつく汗。だるは、体のだるさ。ふらは、体のふらつき。

肌がべたべたしたり、体がだるかったり、ふらっとしたりするのは、脱水症の初期症状です。

すぐ運転を止めて水分補給。そんなときのために車内に経口補水液の常備を─。

トイレ我慢しないで!

長時間のフライトで、足の静脈にできた血栓が、血管を流れて、肺の動脈に詰まる通称「エコノミークラス症候群」は、ビジネスファーストクラス、新幹線や長距離バスでの発症例もあります。

「通路側の人に遠慮してトイレを我慢していた」という窓側席の人が多いそうです。

予防の心得。

①2~3時間ごとに立って歩き、②水分を補給し、③座席でかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を、1時間ごとに3~5分。
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仲良きことは美しきかな [雑感小文]

夫婦の会話

お茶の水女子大学の研究グループが行った「夫婦の満足度調査」によると、定年後の生活では当然、夫婦が一緒に過ごす時間が増え、夫婦そろっての外出や会話の機会も増えるが、そうした生活の変化のなかで夫婦の会話が多いほど満足度が高いという、これまた当然の結果が出ている。

けだし会話の量こそ、夫婦仲を測定する最も正確なバロメーターといえるだろう。

老いては子よりも夫あるいは妻であり、充実した老後生活を送るためには、夫婦の会話が決め手となる。

楽しい会話のある夫婦は、心が満たされるばかりでなく、頭もぼけないし、体も元気になる。

いきいきとした言葉のやりとりが頭脳を刺激し、体の働きを活性化するからで、医学的にも確かな説明のつくことだろう。

「仲よきことは美しきかな」とは、よく知られた武者小路実篤の美しい名言だが、夫婦仲のよさは心身の健康にとっても不可欠の要因、「仲よきことは健やかなり」である。

こうみてくると、夫婦円満が心身の健康の重要なカギであることがよくわかる。

円満夫婦は健康夫婦だ。

 厳守三原則

ストレスの解消法の一つに「打ち明け」ということがある。

胸中の思いをだれかに打ち明けるだけでも、心が晴れる。

若いころは、親兄弟にも話せないような悩みを、親しい友人に聞いてもらって、苦悩から解放されることがある。

年をとると、その打ち明けの最も主な相手が配偶者になる。

独居の老人にはその相手がいない。吐き出されぬままのストレスが胸の中にたまり、それが心身の劣化につながっていく。

孤独な高齢者に老年性うつ病が多くみられるのはよく知られている。

この老年の孤独地獄を解消するために夫婦という一組の男女はあるのではないか、とさえ思われる。

とはいえ、家庭の天気図にも晴れの日もあれば雨の日もある。

一つ屋根の下に暮らしていれば、ときに感情的衝突が発生するのは自然の成り行きだ。

心得るべきは、夫婦げんかにもルールがあるということ。

故齋藤茂太先生が挙げた三原則は、

①過去のキズにふれてはならない

②他人と比較して批判してはならない

③親兄弟や親類のことを引き合いに出してはならない─だった。
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ヨモギはおいしい薬です [健康雑談]

ヨモギと脂肪

ブタのえさにヨモギを混ぜると、肉が格段にうまくなるという話を聞いた。

肉の水分が少なく固くしまって、ヨモギを与えなかったブタと比べると、脂肪の厚さが平均して2%薄く、脂肪の融点(固体が液体になり始める温度)が6度も低かった。

脂肪の中の不飽和脂肪酸が増えたためらしい。

脂肪は、脂肪酸とグリセリンの結合体だが、バターやラードのような常温で固形の脂肪には飽和脂肪酸が多い。

一方、常温で液体の植物油には不飽和脂肪酸が多い。

ブタのラードも不飽和脂肪酸が多くなると、そのぶん溶けやすく、融点が低くなったわけだ。

ヨモギのエサの効果で、ブタは脂身が少なく、肉の味がよくなった。

ブタと一緒にしてはいけないが、ヨモギ葉のお茶を飲み続けてすっきりやせた女性がいるとも聞いた。

人気のウーロン茶には脂肪の吸収を抑制する作用があるが、ヨモギ茶は余分な脂肪を分解して体外に排せつする。

韓国では「やせるお茶」として常用されているそうだ。

無理なダイエットをしなくても自然にやせられると、漢方の専門医はいう。


ヨモギの葉緑素


蓬(よもぎ)萌(も)ゆ 憶良旅人に亦(また)吾に   竹下しづの女

ヨモギは昔から日本人が最も愛好してきた野草だ。

ヨモギを詠んだ歌は万葉集や古今和歌集の中にいくつも探しだすことができる。

山上憶良も大伴旅人も早春の野にヨモギを摘み、ヨモギもちを食べたのだろう。

ヨモギは、草もちの材料としてだけでなく、薬用植物としても優れている。
お灸(きゅう)に使うモグサはヨモギの葉から作られるが、漢方では艾葉(がいよう)といい、止血、補血、鎮痛などの効能があるとされる。

ちょっとした傷はヨモギの葉をもんで張れば治る。

排便のたびに便器が真っ赤になるほどの切れ痔(じ)が、ヨモギ茶を飲み、その茶がらをよくしぼって薄いガーゼに包み、患部に当てていたら、1カ月ほどで出血が止まった症例があるそうだ。

これらはヨモギの葉緑素の効果と考えられるという。

ヨモギの葉緑素は、ほかのいろいろな緑葉植物の葉緑素に比べて効果が強力で、体内に入って速やかに作用する特徴を持っているそうだ。
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野菜の薬効 [健康雑談]

野菜の薬効

春は、なぜ、「はる」なのか。草木の芽の「張ル候」だから、と『大言海』。

野菜も「春野菜」と呼ばれると、みずみずしいうまさがさらに引き立つ感じだ。

野菜を「食養生」に生かす知恵を漢方の専門家に聞いた。「医食同源」は東洋医学の基本的理念である。

タマネギ=漢方薬にひけをとらない薬効をもつ野菜の一つ。

煎じて脳血栓や心臓病など循環器系の病気に用いる。その薬効成分は現代薬理学的にも証明されている。

血糖値を下げる効果も明らかに─。インスリンの分泌を促進し、糖代謝を助ける成分の働きによるといわれる。

血圧を下げる作用もよく知られている。

キャベツ=胃・十二指腸かいようを防ぎ・治す成分が含まれている。その成分をもとにした薬剤はロングセラーとなっている。

青汁療法の元祖ともいうべきものがキャベツだ。食物繊維が豊富だから胃腸のクリーナー役として最もすぐれた一品といえる。

ニンジン=「高麗ニンジン」の超薬的効能は昔から有名だが、西洋ニンジンの薬効もなかなかのもの。

薬効成分は皮とヒゲ根の部分に多く含まれる。赤や黄色の色素に強いパワーがあることも確かめられている。

サヤエンドウ=植物の種は生命力の源。強いパワーが秘められている。

サヤエンドウは、種子類中、最も多くたんぱく質と糖質を含む。

春の〝キヌサヤ〟は柔らかく、すじも食べられる。

食物はなんであれ、丸ごと食べるのが栄養素をバランスよく取るコツだ。

菜の花=食用にするのは開花する前のつぼみ。

体内でビタミンAに変わるカロチンやビタミンCが豊富。

高血圧や糖尿病などの食事療法として用いるさいはタンポポと一緒に食べると薬効が倍増する。

タラの芽=春の息吹を感じさせる代表的な山菜。樹皮は古くから糖尿病の薬として用いられてきた。

高血圧を改善するともいわれる。同様の効果は若芽を食べても期待できるだろう。強壮強精作用もある。

ブロッコリー=ゆでサラダ用の代表的野菜。最大の特徴は豊富なカロチン。

ケルセチンという鮮黄色の色素も多く、がん細胞の増殖を抑える作用が明らかにされている。
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赤ちゃんのうつぶせ寝の危険度 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(42)  

うつぶせ寝の転変。

育児書の名著中の名著といわれる松田道雄著『私は赤ちゃん』のなかに、うつぶせ寝に触れた箇所がある。

赤ちゃんの「私」が、うつぶせに寝ていると、ママやパパはそのたびに仰向けにしてしまう。

「私はうつむいてねるほうがらくなんだ。大地にしっかりとつかまっていたいんだ。

やわらかいフトンに胸を押し当てているほうが、気持ちがいいんだ」。

同書の初版発行は1960年。うつぶせ寝はそのころのはやりでもあった。

その風習は、進駐軍の夫人たちが持ち込んだものだった。

しかし、ベッドとちがって軟らかい布団に寝かせたための窒息死が相次ぎ、「近ごろ流行、うつぶせ寝の危険度」といった記事が週刊誌をにぎわしたりして、いつの間にか消えた。

再びはやり始めたのは1980年代だった。

1988年の「小児保健セミナー」(日本小児保健協会主催)で、うつぶせ寝を採用している産婦人科医や小児科医が、うつぶせ寝の臨床報告をしている。

「吐乳が予防できる」「ミルクをよく飲み、よく眠る」「運動神経機能の発達がよく、首のすわり、ハイハイが早い」「頭の変形予防によい」「うつぶせ寝になるときにとるカエル足は、先天股脱の予防によい」など、プラス面が多いというものであった。

そして、当時、最も強くママたちの心をとらえたのは、うつぶせ寝で育てると「絶壁頭にならない」という美容家、大関早苗さんの推奨だった。

大関さんは、孫が生まれたロンドンの病院を訪ねて、うつぶせ寝を知り、西洋人の彫りの深い顔立ち、ヒップアップした体形の原点はここにあるのではないか、と考えた。

「うつぶせ寝で育てた赤ちゃんに絶壁頭はない」と新聞・雑誌に書き、テレビ・ラジオで話した。

東京オペグループ(主な会員は産婦人科の開業医)を主宰する杉山四郎・杉山産婦人科院長は、欧米の産院を何度も視察し、うつぶせ寝の採用に踏み切り、それに追随する産院がふえた。

東京オペグループのセミナーの講師として大関さんを招いたこともあった。

杉山医師は、うつぶせ寝のさい厳守しなければならない、次のようなルールを母親たちに指導した。
寝具は軟らかい布団をやめて、硬いベッドかマットレスを用いる。

②シーツはしわが寄らないように張る。

③赤ちゃんの衣類は袖口がフイットした半袖が理想。

④寝ている1㍍以内にはガーゼ、そのほかのものを置かない。

⑤母子相互関係を密にする。

ところが、1992年、米小児科学会が、突然死した乳児にはうつぶせ寝が多く、乳幼児突然死症候群(SIDS=シッズ)の発生率は、乳児を仰向けに寝かせることで有意に減少し得るという声明を発表した。

日本でも1997年、厚生省(現・厚生労働省)の研究班が、うつぶせ寝にすると、仰向け寝よりもSIDSの発症リスクが約3倍も高いことがわかったと発表。

同省は、うつぶせ寝とたばこ(両親の喫煙もSIDS発生の大きな危険因子)をやめる啓発キャンペーンを展開した。

結果、年間600例にも達した発症数が年々減少、2011年には148例になった。

「うつぶせ寝がSIDSを引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。

また、なるべく赤ちゃんを一人にしないことや、寝かせ方に対する配慮をすることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことになります」(同省HP)

成人のうつぶせ寝を勧める「腹臥位療法推進研究会」の名誉会長、日野原重明先生もこう話している。

「赤ちゃんがうつぶせ寝で窒息死するのは、一つは布団や枕に問題があるんです。顔が枕や布団に埋まらなければ窒息する心配はない。

布団はかためのものにして、うつぶせになったとき顔が埋まらないよう気をつける。

そうすれば、うつぶせ寝のほうが呼吸が楽で心臓にも負担が少ないし、うつぶせ寝で育てると、頭の形がよくなるともいわれています」(雑誌『壮快』2004年11月号「名医に聞く うつぶせ寝の効用」)。
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寝相と健康、関係ない? ある? [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(41)  

寝相と健康、関係ない? ある?

寝相と健康については、じつにいろいろさまざまな「常識」が語られている。

「左下に寝ると心臓を圧迫する。こわい夢をみる」という人があるかと思うと、「右下に寝るのは不吉だ」と戒める人がある。

それじゃ、仰向きかうつぶせで寝るしかないが、「仰向きはよくない」と教える先生もいるし、「うつぶせ寝は危険だ」と警告する先生もいる。

一々、素直に聞いてたら、立って寝るしかないじゃないか。そんなことできっこない。みんなウソなのである。

「左下に寝ると心臓を圧迫する」は、もっともらしいが、胸部は12個の胸椎と左右12対の肋骨、さらに1個の胸骨から成り立っていて、ここに肋骨筋、胸筋という硬い筋肉がつき、その内側にある左右の肺と心臓などをがっちり保護している。寝相ぐらいで心臓が圧迫されるなんて100%、ない。

「右下は不吉」は、釈迦涅槃図の釈尊が右下にて入寂されているところから生じた迷信だ─という解釈を聞いたことがある。

「仰向き寝」否定説の言いだしっぺは貝原益軒だろう。『養生訓』巻五にこうある。

「夜ふすには必ず側(かたわら)にそばたち、わきを下にしてふすべし。仰のきふすべからず。仰のきふせば、気ふさがりて、おそはるる事あり(夜寝るときは、必ず側臥位で寝ないといけない。仰向き寝はいけない。仰向きに寝ると、気がふさがって、うなされることがある)」

このレクチャーが江戸時代から明治大正にかけて日本人を支配した。

生理学上そんなことはあり得ない。

「寝る位置は意志と無関係に当人のもっとも楽な姿勢になるものだから就眠時の位置は眠りやすいようにすればよい。益軒は側臥位が眠りやすかったまでだ」とは、『養生訓』の現代語訳の筆者、松田道雄先生の注釈。

「うつぶせ寝は危険だ」は、乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息死の最も大きな危険因子がうつぶせ寝だという理由だった。

だが一方では、赤ちゃんのうつぶせ寝を推奨する説が広まったこともある。

賛否両論、それぞれ小児科の専門家がけっこう説得力のある主張を展開し、ついには厚生省(現・厚生労働省)が啓発キャンペーンを行うということあった。

この赤ちゃんの寝かせ方=うつぶせ寝の当否についての詳説は、次回にご紹介します。

では、乳幼児以外のうつぶせ寝(腹臥位)はどうなのか。これは大いによろしい。

「腹臥位療法推進研究会」なる専門家の集まりもあり、その名誉会長は日野原重明先生である。

10年以上も前のことだが、日野原先生にお話をうかがい、記事をつくった。(「名医に聞く うつぶせ寝の効用」=『壮快』2004年11月号)。その記事をごくごく短く要約してみる。うつぶせ寝の効用は―。

①腹側には骨がないから床ずれができない。

②自力で体位が変えられるので、寝たきりになりにくい。

③呼吸が楽になり、痰(たん)が出やすい。

④飲食物の誤飲がへる。

⑤胃に食物が停滞せず、ガスが出やすい。便秘が解消する。

⑥腹圧が加わるので膀胱内の残尿が少なくなり、尿失禁が改善する。

⑦両ひじが上がり肩を広げる形になるので、肩関節の緊張がとれ、肩こりが解消する。

⑧仰向けよりも肺活量がふえ、肺の中に残る空気の量(残気量)が少なくなり、動脈血酸素飽和度が上昇する。ひらたくいえば、血液の中の酸素の量がふえて炭酸ガスがへるので、血行がよくなり、脳の働きが活発になる。

「頭がスッキリしないときには30分ほどうつぶせ寝をするといいんです」と、日野原先生はおっしゃった。この面接取材のとき、先生は92歳だった。

「私は85歳ごろからこのエクササイズを始め、すっかりうつぶせ寝になりました。若いころ病んだ結核の後遺症で気管支拡張があって、仰向けに寝ていると肺に痰がたまるのですが、いまは朝起きたときも痰が出ず、快適です。腹臥位研究会所属の病院では、脳卒中後のリハビリテーションや呼吸不全の患者や気管支ぜんそく発作患者に、この療法が行われています」

それを受けて、記者は、「坂本九ちゃん、上を向いて歩こう。日野原先生、下を向いて寝よう、ですね」と答えている。

長期連載中の先生のエッセーにちなんでいうなら、「104歳・私の証」を支える一因は、夜の健康な眠り=うつぶせ寝であるだろう。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年4月11日掲載の「コラム」より再録。
 同サイトは、美容・ヘルスケア・妊娠・介護福祉に関するニュースや体によい食事のレシピなど、健康・医療に関する情報を日々発信している。

拙稿の過去の掲載分は同サイトの「特集」→「コラム」でお読みいただけます。
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睡眠不足は肥満も招く! [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(40)  

睡眠不足は肥満も招く!

「春は眠くなる。猫は鼠(ねずみ)を捕る事を忘れ、人は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さへ忘れて正体なくなる」

ご存じ、夏目漱石「草枕」の一節。

春に眠くなるわけは、気候変化(寒暖の差)の影響で―、

①自律神経のバランスが崩れる。

②ホルモン分泌が乱れる。

新陳代謝が盛んになり、ビタミンB1が不足する。

─など諸説ある。

それらがこもごも相まって疲労感を増し、眠い、だるい、に結びつくのだろう。

中国のことわざに「春困秋乏」というのがある。

「春は眠くてけだるく、秋は疲れやすい」の意味だという。

「春眠暁を覚えず」と詠んだ孟浩然(もうこうねん)は、ざっと1300年前、盛唐の詩人だ。

人間の体のしくみが1000年やそこらではすこしも変わるものではないことを教えてくれる。

そこへもってきて、24時間型社会の現代人の睡眠時間は短くなるばかりで、春のみならず年中眠い。

日本人の平均睡眠時間は7~8時間、サラリーマンの週日のそれは6~7時間。寝不足が常態化している。

寝不足の朝は頭も体もしゃきっとしない。それが何日も続けば体をこわす。

睡眠不足は栄養失調や運動不足と同じように─いや、あるいはそれ以上に大きな問題だ。

「睡眠時間と生活習慣病のリスク」を調べたいくつかの文献によると、睡眠不眠の中年の男性は、そうでない同年の男性に比べて、4年後の高血圧のリスクが約2倍、8年後の糖尿病のリスクが約2~3倍、12年後には約4.8倍と、睡眠不足が続けば続くほどリスクが高くなっている。

肥満の発症と睡眠時間の変化との関係性を調べた研究データをみると、睡眠時間の短い人ほど肥満の発症率が高い。

なぜ、そんなことになるのか?

睡眠不足だと、インスリン抵抗性が低下し、食欲にかかわるレプチンとかグレリンといったホルモンの分泌がアンバランスになるためだという。

インスリン抵抗性とは、糖質を処理するインスリンの作用─インスリンの「効き具合」のこと。

レプチンは、物を食べておなかがいっぱいになってくると、脂肪から分泌されるホルモンで、脳の視床下部にある摂食中枢に「満腹」のサインを送る。

グレリンは、胃や十二指腸から分泌されるホルモンで、「空腹」のサインを送って、食欲を亢進させる。

睡眠時間を短くすると、レプチンの分泌はへり、グレリンの分泌がふえることがわかっている。

つまり睡眠不足だと、糖質を処理するインスリンの効力が落ちるうえ、満腹のサインは出にくくなり、空腹のサインが出やすくなる。

寝不足の日は食欲がないように思われがちだが、実際は反対で、食欲(特に甘い物への欲求)が亢進し、肥満に直結しやすいことが実験的に確かめられている。

また、睡眠時間が短い人は欠食が多い、喫煙率が高い、寝酒をすると睡眠がかえって障害される─など、睡眠は、さまざまな生活習慣と密接に関係している。

これまで生活習慣病の予防は、食事、運動、酒、たばこ―の四つの生活習慣を主として対策が進められてきたが、睡眠が五つ目の生活習慣として非常に重要であることを示すエビデンス(医学的証拠)が集積されつつある。

人間は一生の3分の1近くは眠って過ごすわけだから、これが生活習慣病に無関係であるはずがない。

睡眠習慣は、酒やたばこと違って、特定の人だけではなく、すべての人にかかわる生活習慣だ。

元気に長生きするためには睡眠を含めた包括的な健康づくりが大切なのである。

あってはならぬ「過労死」にしても、煎じつめると「睡眠不足死」といえるのではないか。

よく眠り、よく働こう。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年4月4日掲載の「コラム」より再録。
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酒は肝臓病の「主犯」ではない [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(39)

酒は肝臓病の「主犯」ではない


むかしは肝臓病で亡くなると、きまって酒が「犯人」扱いされた。

「あの人、よく飲んだからなあ」

それがもし酒飲みとはいえない人だったら、「飲まない人だったのにねえ…」と不思議がられたりもした。

いや、いまでもその古い通念はりっぱに残っているようだ。近刊の小説のなかにこんな会話を見つけた。

「確か昨年お亡くなりになったとか」
「そうなんです。肝臓癌でした。お酒をそんなに飲む人ではなかったんですけど、なぜかやられてしまったんです」(林真理子作『マイストーリー』)

肝臓がんは、肝臓に初発する原発性肝臓がんと、ほかの臓器のがんが肝臓に移ってきた転移性肝臓がんに分けられる。

原発性肝臓がんの原因は90%以上、肝炎ウイルスである。

まだA型肝炎とB型肝炎のウイルスしか見つかってなく、未発見のウイルスを「非A・非B型」と呼んでいた1970年代初めからそのことはわかっていた。

アルコール性脂肪肝炎(ASH=アッシュ)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)、薬剤性肝炎などが進行した肝硬変や肝臓がんもあるが、日本人ではそれは10%程度にすぎない。

肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、A型からE型まで5種類ある(F型、G型、TT型の発見も報告されているが確定してない)。

A型とE型は、ウイルスに汚染された水や食物から経口感染する。

発熱、全身倦怠感、食欲低下などの症状や黄疸が出るが、一度かかると免疫ができて二度とかからない。

B型、C型、D型は血液や体液を介して感染する。

が、D型は日本には存在しない特殊なウイルスなので、日本人にとって実際的な問題となる肝炎はB型とC型である。

B型肝炎は、乳幼児期に感染するとキャリア(ウイルスの持続感染者)になる確率が高い。

成人の感染の多くはA型などと同じ一過性で終わるが、まれに劇症肝炎を発症、命にかかわる。

キャリアの母親からの感染を防ぐための赤ちゃんへのワクチン接種が1986年に始まり、キャリアになる子はいなくなった。

2016年からはすべての0歳児へのB型肝炎ワクチンの定期接種が実施される。

近い将来、B型肝炎ウイルスが原因の肝臓病は消滅するだろう。

残るはC型のみで、これが最も厄介だ。

感染した人の70%が慢性肝炎になり、適切な治療を受けないと、10年から30年の間に肝硬変、肝臓がんへと進行する。

原発性肝臓がんの原因の70%以上がC型、20%がB型である。

現在、C型肝炎ウイルスの感染者は約190万人~230万人と推定され、その8割以上が40歳以上、高齢者ほど感染率が高いことがわかっている。

そのうち約150万人は、自分が感染していることを知らず、治療の機会を逃していると考えられている。

高齢者ほど感染率が高いのは、献血時のウイルスのチェックが行われるようになったのが、B型は1972年、C型は92年からなので、それ以前の輸血による感染者が多いためである。

92年以前に輸血や血液製剤の治療を受けた人は、ウイルス検査を受けて感染の有無を確かめるべきである。

結果が陽性なら早期治療の機会が得られるし、陰性だったら肝臓がんの心配はまずしなくてもよい。

─というところで、話は戻る。

酒が肝臓病の「主犯」とされたのは、長きにわたる誤解であった。

では、多くの肝臓病に関して、酒は無罪なのか? 残念ながらそうではないようだ。

適量を超える飲酒を長く続けていると、最初は脂肪肝になり、それでも飲み続けていると肝炎になり、さらに飲み続けると肝硬変になり、ついには肝臓がんになる。

C型肝炎ウイルスに感染した肝細胞にアルコールを加えると、特殊なたんぱく質の遺伝子が活性化し、ウイルスの増殖が起こり、肝炎が発症することが実験で確かめられている。

酒の飲み過ぎがC型肝炎を発症させたり、病状を悪化させたりするわけだ。

酒は重大な「共犯」といわねばならない。

肝炎ウイルス検査が陽性であったら、C型肝炎はもとよりB型肝炎の人も、禁酒すべきだと専門医は強調している。


健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月28日掲載の「コラム」より再録。
 同サイトは、美容・ヘルスケア・妊娠・介護福祉に関するニュースや体によい食事のレシピなど、健康・医療に関する情報を日々発信している。
拙稿の過去の掲載分は同サイトの「特集」→「コラム」でお読みいただけます。
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ピロリ菌が「胃がんの常識」を変えた [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(38)  

ピロリ菌が「胃がんの常識」を変えた

日本人には胃がんが多い。

最新がん統計(2015年4月)によると、

男性では死亡数は肺がんに次ぐ2位。罹患数は1位。

女性では死亡数は大腸がん、肺がんに次ぐ3位。罹患数は乳がん、大腸がんに次ぐ3位。

だが、これは比較的近年のこと。

男性の胃がん死亡数が肺がんに抜かれたのが1993年で、女性のそれが大腸がんに抜かれたのは2002年。

それまでは男女ともに死亡数も罹患数もずっと胃がんが1位だった。

なぜ、日本人にはそんなに胃がんが多い(多かった)のか?

まず戦後間もなくのころは「熱い食べ物」が危ないといわれた。

当時、日本でいちばん胃がんの死亡率が高かった奈良県に着目した高名な医学者が、原因は奈良県民が愛好する熱い茶がゆではないかと指摘し、茶がゆの廃止が呼びかけられた。

だが、この茶がゆ犯人説はその後の研究でほぼ完全に否定された。

茶がゆを愛好する地方は、奈良県以外にも和歌山県、三重県、山口県、佐渡などあちこちにあり、奈良県ほど胃がん死亡率が高くないなど、矛盾する事実がいろいろ出てきたからだ。

そのあと、「胃潰瘍前がん説」と「塩分過剰摂取説」が提唱され、近年まで最も有力な説として認められてきた。

たしかに胃潰瘍から始まる胃がんが多いことや、塩分の取りすぎが胃がんの悪化に関係していることは事実だが、それが胃がんの原因ではないことがいまは明らかになっている。

1983年、オーストラリアの研究者らが発見した、ヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)の研究が進み、胃がんの原因が特定されたからである。

以下、ピロリ菌に関する現代医学の定説を要約してみる。

ピロリ菌に感染すると、ほぼ100%の人に「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」という慢性胃炎の一種が生じ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のもとになる。

慢性胃炎が長く続いて萎縮性胃炎に変わると、その一部から胃がんが発生してくる。

ピロリ菌に感染している人が必ずしもみな胃がんになるわけではないが、遺伝性のスキルス胃がんなどを除き、ほとんどすべての胃がんの人はピロリ菌に感染しているという。

国立国際医療センターの研究チームは、ピロリ菌に感染した1246人と、感染していない280人を、8年間追跡調査した。

結果、感染者では約3%に胃がんが発生したが、非感染者ではゼロだった。

WHO(世界保健機関)は、「ピロリ菌は煙草なみの発がん物質」といい、

ピロリ菌が胃がんを引き起こすメカニズムを解明した畠山昌則・東京大教授(病因・病理学)は、「胃がんの99%はピロリ菌感染が原因です」と明言している。

日本ヘリコバクター学会は、胃がん予防のため、胃の粘膜にピロリ菌がいる人は全員、薬で除菌することを勧めている。

学会の提言を受けて、まず2000年に胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者のピロリ菌の除菌治療が公的医療保険の適用となり、

2010年には、

①ピロリ菌が原因の胃MALTリンパ腫、

②特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、

③内視鏡治療でがんを取り去った早期胃がんの再発防止─と対象が広がり、

2013年からは慢性胃炎の人のピロリ菌除菌も保険でできるようになった。

ヘリコバクター・ピロリ胃炎であるかどうかを医療機関でチェックし、陽性とわかったら除菌を行うことをお勧めしたい。

無症状の若い人たちでは、胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などを完全に抑えることができる。

中高年ではすでに前がん状態に進んでいる場合もあり、除菌後も定期的にフォローする必要がある。

「除菌後も必ず胃がん検診を受け続けます」と一筆とってから、治療を始める専門医もいる。

なお、食塩は胃粘膜のバリアーを侵し、ピロリ菌の毒素がしみ込みやすくなる。

胃がん予防には、塩分の取りすぎにも注意したい。

健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月21日掲載の「コラム」より再録。

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ガスの医学「屁一つは薬千服」 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(37)

ガスの医学「屁一つは薬千服」


あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり
                                 小野老朝臣(おののおゆのあそみ)

『万葉集』巻三に収められたこの有名な歌が「おなら」の語源だという説があり、花の季節にはつい思い出してしまう。もちろん俗説である。

ほんとうは「鳴らす」に接頭語の「お」がついたもの、と辞書には記されてある。

「漢(から)にては放屁(ほうひ)といい、上方にては屁(へ)をこくといい、関東にてはひるといい、女中はすべておならという。

その言葉は異なれども、鳴ると臭きは同じことなり」

と、風来山人こと平賀源内は『放屁論』のなかで言っている。

しかし、数あるなかには、鳴らないモノもあれば、そんなに臭くないモノもあるのは、ご存じのとおりである。

自家製のモノは、その当人にはむしろ芳香でさえある。

ともあれ、普通に出ているぶんにはどのように鳴ろうが、どれほど臭かろうが、心配はいらない。

どれくらいが「普通」かといえば、1回量50~500cc、1日量100~2800cc、とNASA(米航空宇宙局)のデータにはあるそうだ。

風来山人は、

「プッと鳴るもの上品にしてその形円く、ブウと鳴るもの中品にしてその形いびつなり。スーとすかすもの下品にて細長くして少しひらたし」といっているが(『放屁論』)、

ブーでもスーでも1日2~10回程度だったら通常の発射回数としていいのではないか。

思わずも一つもらして幼児(おさなご)はわれと驚き高笑ひせり   若山喜志子

もしガスのなかに有毒成分が含まれていたりすると、密閉空間の宇宙船内では重大なトラブルが発生しかねない。

で、NASAはおならの研究を徹底的に行った。

結果、おならの含有成分は約400種類、人間を死に至らしめるような有毒成分は含まれてないことが確認された。

「屁一つは薬千服」と、ことわざが教えているように健全?な一発は、健康な胃腸と肛門の証明である。

だが小さなガス漏れが、大事故の前ぶれであったりするように、おならの背後に思わぬ病気が隠れていることもある。

臭いガスが頻繁に出る(発生亢進)

ガスがたまって腹が張る(吸収障害)

ガスが出にくく、出るとき痛みを感じる(排泄障害)

─といった症状が長くつづくときは要注意、と専門医は警告している。

発生亢進は、食物の種類(サツマイモなど発酵しやすい食物や、ゴボウなど消化のわるい食物)と、消化液の分泌に関係がある。

サツマイモやゴボウなどを食べ過ぎたり、消化液の分泌が悪かったりすると、食べた物がつまでも腸内に残り、発酵や腐敗がふえ、ガスがたくさん発生する。

小腸に炎症があるときも食物の消化吸収がわるくなってガスの発生が亢進するし、肝臓病でもガスが発生しやすくなる。

肝臓病が進むと、ガス頻発期のあと腹水がたまってくる。

このことをフランスの肝臓専門医は「風のち雨」と表現しているそうだ。

ガスの吸収障害は、大腸の炎症によっても起きるが、心臓病や肝硬変、便秘や低血圧が原因のこともある。

三つめの排泄障害は、大腸の運動が減退したり、大腸・直腸に癒着や狭窄などの異常がある場合、しばしばみられる。

おならが出にくいだけでなく、出るとき痛みを感じるようであれば要注意。

そのうえ大便に血がまじっていたら大腸がんの初期かもしれない。すぐ精密検査を!

なお、呑気症(どんきしょう)といって、無意識のうちに空気をたくさんのみ込むクセのせいで、ガスやゲップが多発することもある。

早食い、ガブ飲み、炭酸飲料の飲み過ぎ、口呼吸、不安、緊張、ストレスなどが原因になりやすい。

ヒステリーも呑気症を伴いがちでガス・ゲップの多発を招きやすいのだそう。ヘェー。


健康総合ニュースサイト「One's Life」2015年3月14日掲載の「コラム」より再録。
同サイトは、美容・ヘルスケア・妊娠・介護福祉に関するニュースや体によい食事のレシピなど、健康・医療に関する情報を日々発信している。

拙稿の過去の掲載分は同サイトの「特集」→「コラム」でお読みいただけます。
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