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「胸焼けに重曹」は逆効果 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(21)  

「胸焼けに重曹」は逆効果

焼き芋のうまい季節が到来した。

焼き芋や甘いもの、脂っこいものを食い過ぎると胸焼けがする。

このとき、重曹を一と匙、冷たい水で飲み下すと、たちまちスーッとおさまる。

子どものころ、祖母がそれをやっているのを見たことがある。

そのように「胸焼けにはソーダ」は、昔からよく知られている庶民的な健康常識だ。

だが、この「おばあさんの知恵」は、一見ホントみたいだが、ウソである。

たしかに重曹を飲むと、胸焼けの症状はたちまち解消される。

しかしその効果は一時的なものでしかない。

30分もすれば元に戻ってしまう。

なぜか?

胸焼けは、酸性の胃液が食道内に逆流するために起こる。

胃の中にアルカリ性の重曹(炭酸水素ナトリウム)が入ると、胃酸(胃液中の塩酸)と反応し、中和する。

胸焼けがしずまる。

ところが、中和によって二酸化炭素(炭酸ガス)が発生する(ゲップがでるのは、そのためだ)。

この炭酸ガスが刺激となって新たな胃酸が分泌される。

再生産された胃酸は食道へ逆流し、胸焼けが再発する。

「あれ? ソーダー、効かなかった。量が少なかった?」

と、もう一度、重曹を飲むと、また同じことがくり返される。

食道の炎症はさらに悪化する。

つまり、胸焼けの重曹服用は根本的な解消法にはならないばかりか、かえって症状を増悪させる。逆効果でしかない。

では、どうする?

牛乳を飲めばよい。

牛乳も同じように胃酸を中和するが、炭酸ガスは生じない。ゲップはでない。

細かな粒子となって胃壁に付着し、胃を保護する。

ただし、ごくごくと一気に飲むと、胃酸と一度に反応・凝固し、胃壁を保護する効果はえられない。

ゆっくり、唾液と混ざるような感じで飲むのがよい。

ところで、胸焼けにもいくつか種類がある。

焼き芋などを食べ過ぎたときの胸焼けは、糖質や脂質の過剰摂取によって胃酸の分泌促進が起こるためだ。

急いで食事をしたりしたときも、胸焼けがよく起こる。

食道の中の圧力が上がったり、食道の下部が押し広げられ、胃液が逆流しやすいからだ。

食べ物が食道内に入ると、正常では収縮波が食道にあらわれ、食べ物を胃のほうに向かって押し進める。

そうした食道の動きがうまく調節されず、収縮がくり返し起こっても先に進んでいかないことがある。

この場合も食べ物がつかえる感じと一緒に胸焼けが生じる。

高齢者ではこのような胸焼けがよくみられる。

病気の症状として起こる胸焼けも多い。

食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍、食道けいれん症などだ。

精神的ストレスによる胸焼けもある。

大きな心配事があり、ものがのどを通らないときの胸やけが、それだ。

妊娠初期にみられる胸焼けには、このような精神的な面も関係しているようだ。

胸焼けがひんぱんに起こるときは消化器内科へ―。

余談。

呑酸嘈囃。なんのことだか、おわかりですか?

『広辞苑』によると、

呑酸(どんさん)は、

「酸味のある胃液が口腔内に逆流する現象。胃酸過多症などの一症状。げっぷ」である。

嘈囃(そうそう)は、本見出しではなく、「むねやけ」の項に

むねやけ【胸焼け・嘈囃】食道内に灼熱感の起こること。云々―。

と、空見出しとしてだけある。

―てなわけで、ゲップ、胸焼けの症状を、むかしのお医者さんは「呑酸嘈囃」とカルテに記した。

なお、同音類似語の「嘈嘈(そうそう)」は、「①声の調子のはやいさま。②声のさわがしいさま」のことである。


血液型性格分類は心理的マジックだ [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(20)

血液型性格分類は心理的マジックだ

B型の私が冷めている次女の私を今日もつつき始める     (富山市)松田わこ
「朝日歌壇」=朝日新聞2015年9月13日掲載。

月曜の朝の小さなタノシミの一つは、朝日歌壇のなかに、松田梨子、松田わこ、の名をさがすことだ。

去年ぐらいまではほとんど毎週、姉妹どちらか(しばしばお二人とも)の名を見つけることができた。

明るいウイットに富む口語詠に微笑を誘われ心なごむひとときである。

昨春、梨子さんが高校へ、わこさんが中学へ進んで、このごろは梨子さんの作品にふれることが少なくなった。

高校生活、なにかと忙しく、作歌の時間が得られにくいのだろうか。

それはさておき―。

上掲の句から察するに、わこさんの血液型は「B型」で、心のなかに「次女」の「冷めている」性格が同居しているらしい。

このような血液型による性格分類は、いまや日本人のジョーシキになっている。

たとえば―、

「私、A型だから、生真面目で面白みのない女だって、よく言われるわ」とか、

「あいつ、B型なんで大ザッパで短絡的なところがあるんだよ」

なんてセリフは年中そこらじゅうで耳にする。

なんとなく(あるいは、けっこう)説得力があるように聞こえる。

だが、それはまことしやかなウソなのだ。

「血液型から性格が分かるとか、行動から血液型が当たるといった話に科学的根拠はありません」というのが、まともな専門家の一致した見解なのである。

血液型と性格が相関するという説は、1927(昭和2)年、古川竹二・東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大)教授の論文「血液型による気質の研究」に始まるとされる。

教授は、家族、同僚、学生らにアンケートし、「A型=おとなしい、心配性、B型=世話好き、陽気」などと分類した。

ざっと半世紀後の1971(昭和46)年、この古川学説をもとに、芸能人など有名人の例をたくさんあげて、俗受けする読み物に仕立てたのが、能見正比古著『血液型でわかる相性』である。

これが大ベストセラーになったのがきっかけで、血液型による性格分類が一般に広まった。

だからこれは日本人好みの「占い」のようなもので、その限りで話の種にする分には何ら不都合はない。

だが、これに確かな科学的根拠があるとして、例えば幼稚園で血液型別のクラス編成を行ったとか、企業の採用面接で特定の血液型は採用しないと言われた─となると、問題だ。

いわゆる「ブラッド・ハラスメント」(ブラハラ)の典型である。

ある会社の社長は、仕事の実績に血液型による指数をかけて、社員の賞与を決めている。

A型はもともと几帳面だから0.8、B型はマイペースなのに成果をあげられたから1.2倍……といった話を新聞で読んで、

「B型はトクだなあ」と笑ったことがある。

しかし、同じ成果を上げて賞与に格差がつくのは不公平だ。

当人にとっては笑いごとではない。

なぜ、この社長は、「仕事には血液型など関係ないんだな」と気づかないのだろう。

血液型性格診断なんて偽科学だといわれても、「でも、自分の場合は当たっている」と思う人は多いだろう。

その理由は、心理学では「バーナム効果」という理論で説明されている。

これは、誰にでも当てはまるようなあいまいで一般的な性格を記した文章を、自分だけに合った正確なものだと思い込む心理現象のことだ。

アメリカの心理学者フォアラーは、心理学専攻の学生に「性格診断テスト」を行い、回答を無視して、すべての学生に同文の「診断結果」を示した。

そして、それが「よく当たっている」と思う場合は5、「比較的当たっている」場合は4、と評価するように求めた。

学生たちはその「正確な診断結果」に驚き、全員が5ないし4と答えた。

フォアラーが用いた「診断結果」は、スタンド売りされている新聞の占星術欄から星座を無視して、適当に抜き出してつなぎ合わせたものだった。

なお、バーナムとは、「地上最大のショー」などさまざまな興行を成功させた、アメリカの有名な興行師。

バーナム効果は、彼の「誰にでも当てはまる要点がある」ということばにちなむものだそう。

耳と寿命は無関係 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(19) 

耳と寿命は無関係


私事だが、私は10年前にほとんど全聾同然の重度難聴になった。

「ミンツン(聾を意味する屋久島方言。ミン=耳)になったよ」といったら、「目でなくてよかったな」といわれたり、「耳が遠くなると長生きするそうだよ」と慰められたりした。

目と耳とどちらがより重要か。これは一概にはいえない。

視力には、感覚・知覚・認知のすべてが反映され、人間は外部情報のほとんどを目から収集しており、その割合は約80%にもなるといわれる。

一方、聴力の欠如は人間関係をいちじるしく希薄にする。人の肉声(話)を聞くことができないことが、どれほど寂しいものか、なった者でなければわからないだろう。

「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」と、カントがいっているそうだ。

なるほど、目、耳、どちらを選ぶ? という問いを突き詰めると、物か? 人か? の二者択一、人それぞれの価値観を問うことに通じることになるようだ。つまり一概にはいえないってわけ。

─と、書いて、いま、目を閉じて全盲の状態をつくってみて、これが死ぬまでつづくのかと想像したら、怖くなった。

ミンツンのほうがまだしも救いがあるなと思い、わが精神性の低さを自覚したしだい。

さて、本題の「耳が遠くなると長生き」だが、これ、ホントか? ウソか?

まるっきりウソ、ナンセンスな俗説である。

難聴は伝音難聴と感音難聴に大別される。

前者は、外耳から中耳までの音を伝える働きが障害された場合に起こる。

後者は、内耳から大脳までの音を感じる神経系が壊れる。

内耳は、耳の奥にある体の中で最も硬い骨に囲まれている。

そこの蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形の器官に、有毛細胞という毛の生えた細胞がびっしり並んでいる。

この有毛細胞の壁に収縮たんぱく(プレスチン)という物質があり、音の振動が伝わると、伸び縮みしてその刺激を脳へ伝える。

蝸牛の中にひしめき合うように生えている有毛細胞は、生まれたときから減り始めて、けっして再生しない。

だから年をとるにつれてだんだん耳が遠くなるのは(個人差はあるが)、だれも避けられない。いわゆる老人性難聴である。

昔、「人生50年」といわれた短命時代には、老人性難聴が起こるまで長生きする人はごく少なかった。

結果、長生きした人はみんな耳が遠かった。

その原因と結果が逆立ちして、「耳が遠くなると長生きする」という俗説が生まれ、信じられるようになったわけだ。

いまや「人生80年」どころか「90年」の時代になりかけている。

だれもが避けられぬ加齢性難聴の進行を抑えるにはどうしたらよいか。

小川郁・慶応大教授(耳鼻咽喉科)らは、10年以上前から「イヤー・フード」の実験的研究を続けていて、抗酸化物質が難聴の進行を抑えることを実証した。

一口に抗酸化物質といっても、フィトケミカル、カロテノイド、ポリフェノール、ビタミン、CoQ10などさまざま。

これを多く含む抗酸化食品となると、とてもここには挙げきれない。

「小さく産んで─」は迷信 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(18)  

「小さく産んで─」は迷信

妊娠出産は、女性の生涯最大のイベントの一つだから、古来、虚実ごちゃまぜ(虚のほうがずっと多い)のさまざまな民間療法的助言がいわれてきた。

そのなかでもっともよく知られているのが、「小さく産んで大きく育てよ」である。

赤ちゃんが大きすぎると、産道につかえて難産になる。小さな赤ちゃんだとらくに出てくる。

そこで臨月にはなるべく体を動かし、赤ちゃんの発育を抑えたほうがよい─というのである。
このもっともらしい助言にはウソが二つある。

①母体が動こうが動くまいが、そんなこととは関係なく、赤ちゃんは大きくなる。胎児は自律的に成長していく生命なのだから─。

②お産のときは、ふだんは緊張している産道がやわらかくなって、児頭が通れるくらい骨盤腔いっぱいに広がる。

狭骨盤のような病的な骨盤でない限り、赤ちゃんが大きすぎてつかえるなどということはない。

お産の重い軽いは、胎児の大小には関係なく、陣痛(子宮筋肉の収縮)の大小に左右される。
胎児が正常の発育をして大きいと、陣痛も大きく、安産である。

胎児の発育が悪く小さいと、微弱陣痛のためにお産が長引き、難産になる。

それなのに、「小さく産んで…」の前時代的迷信がいまも信じられているのだろうか。

赤ちゃんがだんだん小さくなっているのだ。

厚生労働省の乳幼児身体発育調査によると、赤ちゃんが最も大きかったのは、1980年。

男児の出生時体重は平均3230㌘、女児のそれは平均3160㌘だった。

以来、年ごとに小さくなり続けて2010年には男の子が平均2980㌘、女の子が平均2910㌘。

どちらも250㌘減った

背景に、若い女性のスリム化と、少子化で初産の割合がふえたことがある、という。

低体重の女性が妊娠すると、低体重児を出産する傾向があり、その子が成長すると生活習慣病になりやすい。

ヨーロッパで栄養状態が悪かった1930~40年の新生児を追跡調査したデータから導かれた仮説だ。

近年の日本の調査研究でもそのことが実証されている。

名古屋大の玉腰浩司教授(公衆衛生学)らの調査(35~66歳の男女約3100人)によると、出生時の体重が2500~3000㌘のグループは高血圧(最高140以上、最低90以上)の比率が26.1%で、3000~3500㌘は22.8%、3500㌘以上は19.4%─と、出生時体重が少ないほど、高血圧の割合が高い傾向がみられた。

新潟大医歯学総合病院の内山聖院長(小児科)や菊池透小児科講師らの調査では、出生時体重が軽いほど、インスリンの働きが弱いなど糖尿病になるリスクが高かった。

このように、小さく産まれた低体重児は、将来の生活習慣病の予備群になりやすい。

半面、妊娠中に体重がふえ過ぎる「妊娠肥満」にも問題がある。

妊娠糖尿病や妊娠高血圧症(妊娠中毒症)のリスクが高くなりやすい。

妊娠による体重増加は、体格による個人差はあるが、一般的には7~10キロ程度が望ましい。

妊娠中に大切なのは、適切・適量の食事と適切な運動を続けること。

柿が赤くなると医者は青くなる [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(17)  

柿が赤くなると医者は青くなる

このことわざの意味を、鈴木・広田編『故事ことわざ辞典』は、

「晩秋は健康な季節で病人が少ないこと」としているが、それだけでは説明不足だと思う。

秋の収穫期の最中には、多少、体のぐあいがわるくても医者に行くどころではないという生活背景とか、柿の栄養価への称揚も含まれているのではないか。

同類のことわざに、

「柚(ゆ)が色付くと医者が青くなる」

「蜜柑(みかん)が赤くなれば医者は青くなる」

「秋刀魚(さんま)が出ると按摩(あんま)が引っ込む」などがある。

柿も柚子(ゆず)も蜜柑も栄養面の特徴はよく似ていて、ビタミンAとC、そしてカリウムが多い。

ビタミンAは、眼、呼吸器、皮膚、髪などの健康を保つうえで欠かせない。

ビタミンCは、皮膚や歯ぐきの出血を治し、風邪などの感染症を防ぎ、きれいな肌をつくる。

発がん物質ニトロソアミンの生成を抑える。

カリウムは、血圧を下げる。体の老廃物を排出する。

サンマで特記しなければならないのは、多価不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の含有量が豊富なことだ。

EPAは、血管の中で血液が固まる血栓症を防ぎ、心血管系疾患(心筋梗塞、脳梗塞)のリスクをへらす。

DHAは、脳の記憶学習中枢の構成物質で、知能向上、精神障害の緩和などのメリットが確かめられている。

DHAを与えたネズミの学習能力が向上した実験などにもとづき、「魚を食べると頭がよくなる」といわれる。

ま、医者やマッサージ師の出番がなくなるかどうかはともかく、カキ、ミカン、ユズ、サンマ、それぞれいずれもスグレモノ食品であることは間違いない。

ところで、江戸中期の俳人、横井也有作とされる(ホントはそうではないようだが)「健康十訓」というものがある。

①少肉多菜。②少塩多酢。③少糖多果。④少食多齟(そ=噛む)。⑤少衣多浴。⑥少車多歩。⑦少煩多眠。⑧少忿(ふん=怒る)多笑。⑨少言多行。⑩少欲多施。

いちいち、ごもっとも。ビタミンやミネラル、EPAだのDHAだのは知らなくても、現代栄養学、生理学、精神医学その他にちゃんと通じている。見事というほかない。

ただ一つ、注文をつけておくと、多果(果物を多く食べる)が過ぎると、果糖の過剰摂取になる。

果物の過食が原因のNASH(非アルコール性脂肪肝)が少なくないと、専門医が注意している。

実りの秋。食卓が豊かになる。

柿ばかりか、牡蠣(かき)も一段とうまさを増す。

食欲の秋にうかれていると、糖尿病やメタボ傾向の人は、検査データに青くなる

現代人のことわざとしては、

「柿が赤くなると患者が青くなる」としたほうがよいようだ。

「食品添加物=危険」に潜む危険 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(16)  

「食品添加物=危険」に潜む危険


「神さまと肉屋だけがソーセージの中身を知っている」ということわざが、スウェーデンにあるそうだ。

ソーセージに限らず、いまどきそんな中身のハッキリしない食品があれば、神さまより先に、消費者という王様が黙ってはいまい。

たちまちネットで叩かれ、不買運動が展開されるだろう。

消費者が食品の中身について強い関心をもつのは正しいことであり、望ましいことである。

だが、そのためにときに偏った風潮が導き出されるのは、問題だ。

その最も大きな一例が、世間に広がる食品添加物に対する否定的風潮だろう。

あらゆる食品添加物を危険視し、「無添加」の表示があれば、安全だと判断する。

そこに危険な落とし穴がある。

食品添加物といえば、まず真っ先に挙げられるのは、亜硝酸ナトリウムとソルビン酸だ。

亜硝酸ナトリウムはハムやソーセージの発色(あの淡い紅色)と防腐の目的でつかわれている。

亜硝酸ナトリウム自体もわりと強い毒性をもっているうえ、肉の成分(2級アミンというたんぱく質の成分)と反応して、発がん物質のニトロソアミンをつくる。

ソルビン酸は世界で最も多くの種類の食品に用いられる保存料で、カビや酵母の発育を抑える作用が強く、抗菌作用も強いが、動物実験で毒性と発がん性が確かめられている。

そこで亜硝酸ナトリウムやソルビン酸を用いない「無添加ハム」などが、一部でもてはやされている。
だがこれはまかり間違うと、じつに危険きわまりないことなのである。

亜硝酸ナトリウムやソルビン酸を用いないために、そうしたハムなどの保存期間中に繁殖するボツリヌス菌は、それによって食中毒を起こした人の50%は死亡するという恐ろしい細菌だからだ。

だからアメリカではハム・ソーセージ類には亜硝酸ナトリウムの添加を義務づけている。

日本でも非加熱のソーセージには添加が義務づけられている。

食品添加物は、食品衛生法に基づいて厚生労働省が指定した物質が「指定添加物」としてリスト化されており、このリストにないものは使えない。

現在、指定されているのは、447品目。

むろん亜硝酸ナトリウムやソルビン酸も入っている。

厚労省は、動物実験などのデータをもとに、人が一生その食品添加物を毎日食べ続けたとしても健康への影響がみられない量「ADI(1日摂取許容量)」を設定、この値を超えないように、食品への使用基準を定めている。

実際にはないが、もしADI値最大限度の亜硝酸ナトリウムを添加したとしても、ハムやソーセージにできるニトロソアミンは2PPB(PPBはPPMの1000分の1、すなわち10億分の1の濃度を表す単位)以下だという。

まあ、仮に毎日ごはん代わりにハムを食べ続けたとしても、それだけではがんになることはあり得ない。ADIとはそういうことなのである。

死亡率50%のボツリヌス菌と、濃度10億分の2のニトロソアミンと、どちらがコワイか、よーくかんがえてみよう。

無益な用心をするたとえを「羹(あつもの)にこりて鱠(なます)を吹く」というが、極端な食品添加物排斥論者には、アツモノにこりたことがないのにナマスを吹いている人が多いようだ。

むろん使わずにすむ添加物なら使わないにこしたことはないが、日本人の食費の約6割が加工食品でそのほとんどに添加物が含まれている。

小さな欠点をあげつらって大きな害を招いてはならない。

火事場の馬鹿力の生理学 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(15)  

火事場の馬鹿力の生理学

夏休み中の高校の講堂からボヤが出た。

駆けつけた生徒2人でピアノを運び出した。

鎮火後、元に戻す段になったら、同じ2人の力ではもうピアノはびくともしなかった。

──という話を、むかし聞いたことがある。当方も当時、その高校の生徒の1人だった。

筋肉は、無数の筋線維(収縮能をもつ細胞)でできていて、たんぱく質の一種のアクチンとミオシンの相互作用によって収縮し、力を出す。

通常、筋線維は20~30%しか収縮せず、ほかの部分は交替で休息するしくみになっていて、健康な人間なら自分の体重と同じ重さくらいまでの物は持ち上げられる。

ところが、なにか極限に近い状況に追い込まれると、60%以上の筋線維がいちどきに収縮して意外な力を発揮する。

それが「火事場の馬鹿力」だ。

ボクシングなどの「瞬発力」というのもそれだと考えられている。

これも昔、不良(いまでいうヤンキー)をやっていた男から聞いた話だが、アベックをおどしたとき、相手の男が死に物狂いで向かってきたら「ちょっとヤバイ」とのことだった。

男が体を張って愛する女性を守ろうとするとき、自分でも思いがけぬ力が出るものらしい。

そんなときは交感神経が急激に緊張する。

すると、ストレスホルモンのアドレナリンが大量に分泌され、神経の情報伝達を迅速にする。

それまではのんびり交代制でやっていた筋線維に緊急出動の命令が出て、筋線維フル活動となるわけだ。

運動生理学では「緊急反応」というそうだが、そうしたモチベーションが強いほど行動のパワーは強く現われる。体内の予備能力が出てくる。

別の言葉でいえば気力が体力を過剰に引き出すわけだ。

体力とは、狭い意味では、ある力がある時間内にどれだけ出せるかというスポーツ能力のようなもののこと。

広い意味では、長いあいだ病気をせずに働いている状態のことである。

そのどちらの場合にも気力の影響は大きい。

多くの場合、気力と体力は平行し、しばしば一致する。

われわれは経験的にそのことをよく知っている。

ダウンしたボクサーが立ち上がるのも気力なら、高校野球の投手が炎天下の甲子園で3連投、4連投できるのも気力の占める割合が大きいはずだ。

むろん、二日酔いの体を自ら敢然と満員電車の中に押し込むなんてのも、気力以外のなにものでもあるまい(3連投投手などとの状況レベルとはだいぶ差はあるけど)。

では、気力とはなにか。

それは努力をいとわない精神のことだろう。

結果のいかんを問わず、ひたむきに努力しつづける精神、それが気力だろうと思う。

ところで、諸兄。

気力に欠くる勿(な)かりしか!

努力に憾(うら)み勿かりしか!

食べてすぐ寝ると牛になる [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(14)  

食べてすぐ寝ると牛になる

誰でも、子どものころ親によく言い聞かされ、記憶の深層に沈着したことわざや格言の類の一つ、二つを持っているだろう。

たとえば、浪費や怠惰を戒める「一円を笑う者は一円に泣く」とか、「今日の仕事を明日に延ばすな」など、口うるさく言われたのがどんな子で、その親がどんなにそのことを気にしていたかわかるようだ(それ、じつはおれのことだけど)。

もう一つ、「食べてすぐ寝ると牛になる」もよく言われた。

これは誰に聞いてもたいてい「覚えがある」という答えが返ってくる。

つまり子どもというのは、いや大人だって、食べたあとはつい体を横にしたくなるのではないか。
そして、むかしの家の「茶の間」という畳敷きのダイニングルームは、それをするのに好適の部屋だった。

なぜ、食べると眠くなるのか?

食物が胃腸に入ると、消化のため血液がそこに集まり、頭のほうに回る血液が少なくなるからだ。
「腹の皮が張れば目の皮がたるむ」というわけで、ごく自然な生理的現象なのである。

そんなとき、気ままに横になって、その兆しが生じたらガス放出なんかも気がねなくやれて、とろとろまどろむことができたら、ゴクラク、ゴクラクである。

昔の人もその効用をよく知っていて、「食後の一睡、万病円」といっている。

万病円とは、江戸時代、万病に効能があるとされた丸薬である。

この食後の横臥は、右腹を下にすればさらによろしい。

胃袋は腹のなかで左上から右下にかけて斜めに位置している。

右腹を下にすれば、胃の中の食物が流れやすく、消化作用を促進する。

体を横にすれば、肝臓の働きもよくなる。

食後の一睡は、胃腸の弱い人や肝機能の落ちている人にとっては、適切な養生法であるともいえる。

反対に、食後すぐ風呂に入ったり、運動したりするのは、よくない。

胃に回る血液が少なくなり、消化作用を妨げる。

もっとも、食べて寝るのがよいといっても、それはあくまで「一睡(30分くらい)」であって、就寝前に食べてそのまま朝まで寝てしまうのは、最悪だ。

食物が胃と腸で消化されるには4~5時間はかかる。

就寝中、頭は休んでいても、腹はえんえん徹夜作業していたのでは、体の疲労は回復しない。

就寝前3~4時間は食べないほうがよい。

胃がんの患者には、①15分以内に食べ終わる「早めし」で、②食後すぐに働き始め、③夕食をとる時刻が遅い人が多かった──という研究調査がある。

昔の人は「親が死んでも食(じき)休み」とも言っている。

──といったようなわけで、食べてすぐ横になるのが悪いことではない─のは、医学的にも検証ずみ。

「牛になる」を、「牛のような丈夫な胃になる」と解釈すれば正解だ。

「牛になるよ!」と叱るのは、牛に対しても失礼だ。

タバコと肥満の関係 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(13)  

タバコと肥満の関係

フランスのなんとかいう女優は、ウソつきで有名だった。
「どうしてそうウソばかり言うの?」と聞かれて、彼女は答えた。

「だって、ウソを言うと歯がキレイになるそうじゃありませんか」

日本のなんとかいう女性(ということにしておこう)は、どうしようもないタバコのみである。

タバコのさまざまな健康障害は世界の常識であり、むろん彼女もそのことは知っている。

知っていながら、やめないのはなぜかと聞いてみたら、

「だって、タバコをやめると太るんだもの」。

昔から女という生きものは、痩せるためと色が白くなるためだったら、草でも食う。

おれじゃないよ。斎藤緑雨(さいとうりょくう)だったか、薄田泣菫(すすきだきゅうきん)だったかの、そんな意味の警句を読んだことがある。

いや、草にはヨモギ、ドクダミ、セリ、ナズナ、ゲンノショウコ……、体にいいものがいくらでもある。

タバコ(煙草)もれっきとした草の一種、これくらい世界中に愛好者の多い、加工技術の粋をきわめた草は、ほかにはない。

タバコは文化、現代文明が創造した最も普遍的な嗜好品の一つである。

だからまあ、体にはよくないと知りながら吸う愛煙家に文句をいう筋合いはない。
受動喫煙のはた迷惑さえかけなければ、自由存分に吸うがよろしい。

だが、しかし、「タバコをやめると太る」は大間違い、ウソである。

実際はタバコを吸うとかえって太ることが、これまでに行われた2回の調査によって証明されている。

最初の調査は1986年の秋、厚生省(現厚生労働省)が行った。

その20歳以上の約1万2000人対象の面接調査で、喫煙者の多くが喫煙を続ける理由として「タバコをやめると太る」を挙げている。

だが、喫煙者と非喫煙者とでは、相対的に肥満の差はなく、むしろタバコの本数がふえるにつれて肥満者の割合が増加した。

とくに1日40本以上吸う男性、30本以上吸う女性では目立ってその割合が増加、なかでも女性は、非喫煙者と比べ、肥満者の数が2倍以上も多いことがわかった。

ついで1989年の夏、浜松医大と静岡健康管理センターが報告した共同調査のデータでも、同じような結果が出ている。

34歳から49までの健康な男性2146人を対象にしたこの調査によれば、タバコを全く吸ったことのない非喫煙者(634人)の平均体重は60.9㌔、吸ったことはあるがいまは吸ってない禁煙者(480人)は61.5㌔だった。

これに対し、1日の本数が10本以下の喫煙者(131人)は60.8㌔、11~20本(232人)は60.7㌔で、いずれも非喫煙者よりも少ない。

しかし、21~30本(232人)は61.6㌔、31~40本(130人)は62.2㌔、

41本以上(46人)は63.4㌔と、いずれも非喫煙者・禁煙者を上回り、本数がふえるにつれて体重も増加していた。

これを要するに、本数が少ないと体重をやや抑えるが、1日に20本(1箱)以上吸うと逆に体重がふえる。

つまり頭からタバコは肥満防止の効果があると信じ込むのは、ハッキリいってなんとかの一つ覚え、ウソが歯みがき剤の代わりになると強弁するようなものである。

キズ治療の常識の変化 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(12)  

キズ治療の常識の変化

日常のちょっとしたケガ(すり傷、切り傷)の手当ては、①毎日消毒する。②患部を乾かす。──が、かつての常識だった。

いまでもまだそうしている人が多いようだ。

これ、二つともマチガイ! 理由はこうだ。

すり傷、切り傷の傷口は、皮膚が欠損した状態である。欠損した皮膚細胞が再生し、新しい皮膚ができることで、傷はふさがっていく。
消毒薬は、雑菌を殺すとともに新しい皮膚細胞まで殺してしまう。

毎日消毒をする乾いたキズ面は治りが遅く、傷跡が残りやすい。傷口をぴったり覆ったキズ面のほうが早くきれいに治る。

生まれたばかりの皮膚細胞が育つためには、適度な水分が必要で、乾かすと皮膚細胞は死んでしまうからだ。

この創傷治療の湿潤療法(モイスト・ヒーリング)の正しさが実験的に証明されたのは、1962年である。

それまでは─じつに100年以上にわたって─キズやヤケドや床ずれなどの治療は、「開放した状態で早く乾燥させるのがベスト」と信じられてきた。

モイスト・ヒーリングが報告されてからも、それが普及するのに欧米では20年も30年もかかった。

日本ではさらに遅れて2000年ごろようやく一部の医師たちが行うようになった。なぜ、そんなに時間がかかったのか?

2004年7月、湿潤療法の普及啓発を目的として設立されたNPO法人「創傷治療センター」の理事長、塩谷信幸・北里大名誉教授(形成外科)は、当時開かれたプレスセミナーで、こう話した。

「いわゆる〝習慣の奴隷〟というやつで、新しい提言がなかなか受け入れなかったのです。

その最大の理由は、キズ面を閉鎖した湿潤環境ではバイ菌が繁殖しやすく、感染を誘発するのではないか。キズ面は開放しておいたほうがよい──とする根強い固定観念=習慣にとらわれていたのです。

その根源を辿ると、リスターの石炭酸消毒法に行き着きます」。

リスターの石炭酸消毒法とはなにか?

『広辞苑』をひいてみた。

「リスター【Joseph Listr】イギリスの外科医。石炭酸溶液による消毒法の開発で近代外科手術に貢献。(1827~1912)」。

19世紀の後半まで、外科手術は、術後に起こる敗血症(細菌、とくに化膿菌が血管やリンパ管に入って起こる病気)による高い死亡率との戦いだった。

これを解決したのが、リスターの石炭酸消毒法だった。

以来、キズの治療は、アルコールや消毒液で消毒したあと、通気性のよいガーゼで覆って早く乾燥させるのがよい、とされてきた。

だが前述のように消毒薬は細菌を殺すが、同時に、傷口の再生に必要な生きた細胞まで傷つけてしまう。

また、傷口からしみ出してくる浸出液にはキズを修復する成分が含まれているが、ガーゼで覆うと乾燥してかさぶたになる。

かさぶたはガーゼにくっつき、ガーゼ交換のたびに治りかけの皮膚も一緒にはがれて痛いうえに、治りも悪くしてしまう。

これに対し、湿潤療法は、

1 傷口を生理食塩水や水道水で洗い、異物を除く。

2 傷口の潤いを保てる被覆材で覆い、乾燥を防ぐ、という方法だ。

結論。キズ治療の消毒&乾燥の常識は、ウソ。

家庭で治せるようなキズは、水道の水でよく洗い、被覆材(バンドエイド・キズパワーパッドなど)で覆うのがホント。

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