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頭痛鉢巻きの理論 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(9)  

頭痛鉢巻きの理論

吉村昭さんのエッセーで知ったことだが、昭和20年ごろの肺結核の手術は、局所麻酔で行われていた。

その麻酔があまりよく効かず、痛みを感じ、患者が身動きすると、手術の妨げになる。

これを防ぐため、手術台上の患者のほっぺたに平手打ちをくわせる役目の看護婦がいた。

ほっぺたをピシャッ! とやられる瞬間、メスの痛みがまぎれるというわけ。

体のどこかに痛みがあるとき、ほかの部位に強い刺激を加えると、元の痛みを感じにくくなる。

この現象に着目して、兵頭正義・大阪医大教授(麻酔学)は、注射を打つとき、針を差し込む5~10秒前から注射が終わるまで、体の敏感なところをつねると、注射の痛みがへることを確かめた。

最も効果的だったのは、太ももをつねったときだったそうだ。

どうしてそんな効果が生じるのか。

「ゲートコントロール(門調節)説」という理論で説明できる。

体の痛みは、脊髄を通って脳へいき、痛みとして認知される。

脊髄には、痛みの信号にゴー・ストップをかける「門番細胞」があり、脳へいく痛みをコントロールしている。

痛みの信号と同時にほかの感覚刺激がやってくると、門番細胞は門を閉じる。

つまり、どこかが痛いとき、そこをなでたりさすったり、あるいはほかの部位をつねったりすると、その感覚刺激が門を閉じさせ、痛みが弱くなる。

この門のはたらきには、脳からの影響も及ぶから、なにかに熱中しているときは、あまり痛みを感じない。

近年の研究で、門番機構は、脊髄だけでなく、脳の中枢にもあることがわかった。

また、ある種の刺激によってエンドルフィンというモルヒネ様の物質が分泌され、痛みをやわらげることもわかった。

さて、そうしてみると、「頭痛鉢巻き」もリッパに理屈に合っているわけで、昔の人の経験的知恵というのはほんとうに大したものだと思う。

もっとも、鉢巻きが有効なのは、片頭痛、風邪、二日酔いなどのような血管性頭痛で、肩こりなどによる筋収縮性頭痛には、さほどの効果は望めない。

この場合は、後頭部をもむとよいそうだ。

頭痛は、じつにいろいろな原因によって起こる。

入れ歯を直したとか、老眼鏡をかけるようにしたとかで、長いことつづいていた頭痛がウソのように消えた例もある。

中耳炎などの耳の病気が頭痛の原因になることもある。

このように頭痛には眼科、耳鼻科、歯科などが絡んでいるものがある。

頭を詳しく調べても原因が見つからなかったら、目じゃないか? 鼻じゃないか? 歯じゃないか? と、頭を切り換えてみよう。

●ひとこと追記

皮膚に塗るクリーム状の局所麻酔薬エムラクリーム(主成分=リドカイン、プロピトカイン)が、去年6月から子どもに注射するときにも使えるようになった。

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コンブと髪の毛 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(8)

コンブと髪の毛

男にとって、AGA(早くいえばハゲ)と、ED(漢字で書けば勃起不全)と、どちらがより重大問題か?

小生の小さな見聞では、どうも前者のほうのようである。

製薬会社は新薬を発売するとき、医学・医療担当の報道関係者を対象とした説明会を開催する。

多くのばあい、新聞・雑誌・放送の記者たち、小生のようなフリーランスのライターなど50人ばかりが集まる。

だが「バイアグラ」発売のさいは様相一変。

参集した記者の数はいつもの2倍以上、100人を超え、その空前の人数が、このクスリに対する社会的関心の強さを現していた。

しかし、「リアップ」のときはさらにすごかった。

なんと200人を突破する記者たちが詰めかけて、仄聞だが、大いによろこんだ広報担当者が、「勝った!」と叫んだそうだ。

ご存じのとおり、バイアグラはEDの治療薬で、リアップはAGAへの育毛剤である。

すなわち、ハゲがインポに「勝った」わけだ。

リアップ発売の記者会見は、経団連会館のホールで行われた。

ちょっと遅刻した小生は、もう下の階のドアは閉めきったからと、2階席へ通された。

席について見下ろすと、1階のホールは黒い頭で埋めつくされていた。

隅から隅まで見渡しても、毛髪の過疎化の著しい頭部はたった2コしか発見できなかった。

つまり、リアップ発表会に集まった記者たちのなかで、ハゲは小生を含めて3人しかいなかった。

「なるほど、男たちはみんな先行きの心配をしてるんだなあ」と思ったものだ。

─というところで「コンブと髪の毛」の話。

ハゲ防止にコンブ、という昔からよく知られている俗信はどこからきたのだろう。

たぶん、海藻(とくにコンブ)にはヨードが多く含まれているのが、誤解のもとではないだろうか。

ヨードは、甲状腺にとってなくてはならない物質である。
甲状腺はヨードを主たる材料にしてホルモンをつくる。

この甲状腺ホルモンの役目は、体の新陳代謝の刺激だ。

ヨードが不足すると、甲状腺の機能が低下し、新陳代謝が不活発になる。

甲状腺機能低下症とか単純性甲状腺腫といった病気が、それだ。

その症状の一つとして、毛髪が艶を失い、もろく折れやすくなり、脱毛が起こる。

ヨードが欠乏するとハゲる。だったらヨード(コンブ)を食べればよいという短絡思考。

それが、ハゲにコンブの由来ではないだろうか。

だが、大陸内部や山岳地帯の住民ならともかく、日本人の食生活でヨード不足による甲状腺疾患はほとんど考えられない。

そもそも、そんな病気による脱毛症と、AGA(Androgenetic Alopecia=男性型脱毛症)とは何の関係もない。

コンブなんかじゃ、われらのハゲは絶対止められないのだ。

そのことは、同憂の男性諸兄全員、とっくに体験ずみの事実のはずである。

だが……、いまだに食卓にコンブを見つけると、ついいそいそと箸を出してしまうのは、なぜだろうか?
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夏風邪は馬鹿がひく? [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(7)  

夏風邪は馬鹿がひく?

冬の手紙に「寒気厳しき折柄、お風邪など召しませんように─」などと書くのは、古風で月並みだが、常識的な時候の挨拶である。

だが、夏の手紙に「暑い日が続いています。風邪をひかないようにしてください」と書いたとする。

バカじゃないかとその非常識を笑われたり、バカにするなと怒られたりするかもしれない。

古人もこんなことわざを残している。

「夏の風邪は犬も食わぬ」

「夏の風邪は猿でもひかぬ」

「夏風邪は馬鹿がひく」

夏に風邪をひくのは、犬よりも悪食で、猿よりも知能が低く、馬か鹿なみの人間である─というのである。

そうだろうか?

そうではないのである。

古人は、ヘルパンギーナを知らなかったし、昔はプール熱なんてものもなかった。

いまの夏風邪は、バカでなくても、ひく。

バカにするとひどい目に遭うこともある。

ヘルパンギーナは、最初に発見されたアメリカの村の名をとってコクサッキーウイルスと呼ばれるウイルスで起こる。

乳幼児の夏風邪の一種である。

突然、高い熱が出て、のどの痛みを訴えるのが主症状で、食欲がなくなり、吐いたり、腹痛が起こったりする。

のどをのぞいて見ると、口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)の上の辺に小さな白い斑点がブツブツと横に這うように並んでいる。

ヘルパンギーナ(ヘルプ+アンギーナ)とは、この症状を表現した合成語で、ヘルプは「這う」、アンギーナは「のどの炎症」という意味。

厚生労働省は、「感染症発生動向調査」にもとづき、毎年夏がくると「ヘルパンギーナ警報」を出している。

ことしもただいま「警報」発令中である。

一方、プール熱は、学童がプールで感染して集団発生することがあり、俗にそう呼ばれるが、正しい病名は咽頭結膜熱だ。

やはり突然、高熱を発し、のどが赤く腫れて痛み、結膜(白目)が充血し、涙や目やにが出る。

アデノウィルスの感染によっておこる。

もう一つ、夏(または秋)に流行する子どもの病気に手足口病がある。

名のとおり、手のひら、足の裏、口の中に小さな水疱ができる。

熱が出ることもある。

口の中の水疱はすぐ破れて、口内炎のように痛い。

年長の子どもなら「痛い!」と訴えることができるが、赤ちゃんはなにも言ってくれない。

「赤ちゃんが、食べ物を口に入れただけで出してしまったり、食べるのをいやがるようなときは、口の中になにかできているのではないか、のぞいてみましょう」と、小児科医。

手足口病の病原菌は、コクサッキーウイルスと、エンテロウイルスなどの腸内ウイルスだ。

ウイルスに効く薬はないから(インフルエンザウイルスに対するタミフルなどを除いて)、ヘルパンギーナもプール熱も手足口病も、特別の治療法はない。

普通の風邪と同じ対症療法でじゅうぶんだ。

たいていは3~4日で自然に熱が下がり、数日で治る。

だいじなのは回復期。きっちり治さないとぐずぐずと長引く。大人の夏風邪と同じだ。

ともあれ─、

暑い日が続いています。風邪をひかないようにしてください。
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「麻薬迷信」を打破せよ! [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(6) 

「麻薬迷信」を打破せよ!


俳優の今井雅之さんの生前最後の壮絶な記者会見をテレビで見て、感動した。

すごい! 強い! 男だ!

胸がふるえた。目頭が熱くなった。

それだけにモーレツに腹が立った。

「夜中に痛みと戦うのはつらいです。モルヒネで殺してくれ、と言いました。安楽死ですね」

今井さんがしぼり出すような声でそう話したときだ。

今井さんに対してではない。

どこの病院の何という医者かしらないが、緩和ケアを怠った、能天気なバカ医者に対してである。

そもそも今井さんが最初に受診した病院では誤診があったという話もある。

ステージⅣの大腸がんを「腸の風邪」と診断したというのだが、これはちょっと信じられない。

いまどきそんなとんでもないヤブ医者がいるだろうか?

もしかしたら、それは今井さんが周りの人を心配させまいとして、つくった病名だったのかも?

事実はどうだったのか、当方にはわからないから、この件はひとまず保留としたい。

いま、ここで問題にしたいのは、今井さんが最後の病床で受けた治療のことである。

がんの末期には7割の人が強い痛みに襲われるといわれる。

このがん性疼痛(とうつう)について、WHO(世界保健機関)は1986年、鎮痛薬の段階的使用法などを含む「WHO方式がん疼痛治療法」を公表、各国で80~90%の患者が痛みから解放された。

だが、日本のみ先進国中最低の成績が続いている。

日本のがん疼痛治療がなかなか進まない要因として、次の三つを専門家は指摘している。

①医師に遠慮して患者が痛みを積極的に訴えない。

②医師が抗がん治療のみを考え、痛みを病気が示す症状の一つにすぎないとみて、痛みへの関心が浅い。

③痛みの治療に用いる医療用麻薬に対する偏見と誤解がいまだに強い。

①には「我慢が美徳」という日本人的心情も働いているようだ。

緩和医療の専門医は強くこう言っている。

「痛みの感じ方は人それぞれで、他人にはわかりません。はっきりしているのは、痛みは伝えてもらわなければ、無いものとして扱われかねないということです。我慢せずに、まずは訴えるべきです」

さらに問題は、③だ。

「モルヒネは怖い、寿命を縮める」というまことしやかなウソを信じる人が、まだずいぶん多いようなのだ。

事実は全く逆で、モルヒネなどで痛みを抑えたほうが病状も安定し、延命効果につながることが医学的に証明されている。

なのに、今井さんにあのような苦痛を強いた原因は、②に属する担当医の無知な怠慢以外にはかんがえられない。

テレビも今井さんの苦闘を伝えるだけではなく、がんの痛みは緩和できることを報じるべきだったのではないか。
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突き指、引っぱるな! [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(5)  

突き指、引っぱるな!


甲子園の熱闘をテレビ観戦していて、子どものころの草野球を思い出した。

いつもライトで9番だった。

あるとき、気まぐれみたいに飛んできたフライを(当然のことながら)捕りそこねて、おまけに突き指した。

「いてぇ!」とベソをかいたら、セカンドのトシローが、「タイム!」と叫んで駆け寄り、兄貴顔して指を引っぱってくれた。

そうだった。

あのころの突き指は引っぱるものだった。

いまも、それをやっている子がけっこう多いのではないだろうか。

あの「常識」は、まちがってるだけでなく、非常に危険でさえある─と、整形外科医は警告している。

突き指には、捻挫、打撲、脱臼、骨折、腱または靭帯の断裂など、さまざまな傷害が混じっている。

腱(けん)=筋肉と骨を結びつけている丈夫な筋。

靭帯(じんたい)=関節の運動を制御する弾力性のある繊維性の組織。

軽い捻挫や打撲は放っておいてもたいてい大丈夫だ。

だが、放っておいてはまずい場合もある。

指先を伸ばす腱(伸筋腱)が切れたり、剥離骨折(腱の付着部で末節骨が剥がれた状態)を起こしたり、脱臼したり、あるいは関節を固定している靭帯(側副靭帯)が切れたりしたときが、そうだ。

腱が切れると、指先が曲がってまっすぐ伸ばせない。

そのうえ腫れてきたら剥離骨折を起こしている可能性がある。

靭帯が切れると、関節がぐらぐらする。

いずれの場合もひどく痛い。

そういう状態の指を引っぱればどんなことになるか。申し上げるまでもないだろう。

では、軽い捻挫や打撲だったら引っぱってもいいのか。

そうはいかない。

捻挫の大部分は靭帯がねじれたり、傷ついたりしたものだ。

引っぱればさらに傷んでしまう。

突き指、引っぱるな!

もんだりさすったりするのもよくない。

突き指したら、氷(か、冷水)を入れたポリ袋を当てて冷やすと、痛みが薄らぎ、明日には治る。

冷やすと、血管が収縮し、内出血や炎症がいくらか抑えられる。

しかし、痛みがなかなか引かなかったり、腫れてきたり、指先が曲がったままだったりしたら、急いで専門医(整形外科)の治療を受けなければいけない。

余談だが、『広辞苑』第一版(昭和30年発行)には、「突き指」の項目がない。

44年の第二版以降の各版には、

「突指 外力によって指先を突かれたために起る症状。指先と付近の関節の腫脹・疼痛・運動障害を伴う」とある。『広辞苑』らしい生硬な語釈だ。

少年の日の草野球の思い出とともにある突き指は、こんなシチ面倒なものではなかった。

せいぜい「ボールなどが当たって指をくじくこと」(『新潮国語辞典』)だった。
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腹が減ってはいくさができぬ生理学 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(4)  

空腹の運動生理学

〈腹が減っては軍(いくさ)はできぬ 空腹では活動ができない=『広辞苑』〉。

これはホントのことである。

東京大学教養学部の宮下充正教授(運動生理学)は、そのことを実験的に証明した。

若い元気な男性が、朝飯抜きで、息がちょっとはずみ、胸がわずかにドキドキする程度の軽い運動をやったとき、血液中の糖分の数値=血糖値が、どのように変わっていくかを調べた。

血液中の糖分(ブドウ糖)は、運動のエネルギー源となる物質で、空腹時の血糖値の正常値は80~100㍉㌘(血液1㌥㍑中)とされている。

詳しいデータは省略するが、運動開始から60分後には、血糖値が70㍉㌘に減った。

さらに90~120分後には60㍉㌘に下がった。

そして、60㍉㌘を境目としてそれ以下になると、運動を続けることができなくなった。

つまり、朝飯前の運動や仕事は1時間が限度──ということが、まずわかった。

そこで、次の実験として、血糖値が下がってきて、60㍉㌘近くになったとき、角砂糖を吸収しやすいように水に溶かして飲ませた。

すると、血糖値が上がり、元気が出て、運動を続けることができた。

だが、砂糖水を飲ませない(糖分を補給しない)と、血糖値はそのまま下がり続けて、60㍉㌘を切ると、「もうイヤです」と運動をやめてしまった。

体がへばるだけでなく、ヤル気もなくなったわけだ。

このように血糖値が下がってくると、体の働きが低下するだけではなく、脳の働きも低下する。

いや、体よりも先に脳がへばってくる。

体ではたんぱく質や脂肪もエネルギー源となるが、脳のエネルギー源となるのはブドウ糖だけだからだ。

ひどく疲れたとき、甘いものを口にすると元気がでるのは、血糖値が上がり、脳と体の働きが回復するからである。

会議などが長引いてだれてきたら(頭が疲れてきたら)、コーヒーや紅茶に少し多めに砂糖を入れて飲むとよい。

また、運動の前にとる食事も糖質の多いものがよい。

運動のエネルギーとして直接使われるのは糖分だけだからだ。

試合の2時間ぐらい前にごはん、もち、うどん、パン、ようかん、カステラなど、糖質たっぷりの食品食べる

肉や卵などを食べても、たんぱく質が分解されてエネルギー源となるのには時間がかかるので、即効性は得られない。

しかし、体を構成するのはたんぱく質なのだから、日常、肉や卵もしっかり食べなければいけない。

たんぱく質と糖質、脂肪の関係を車にたとえると、たんぱく質は車体やエンジンで、糖質と脂肪はガソリンである。

どれが欠けても車は走らない。
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頭寒足熱のエピソード [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(3)

頭寒足熱・和&洋

18世紀初頭のオランダにヘルマン・ブールハーフェという天下に隠れもない名医がいた。

いくら名医でも寿命には勝てない。

病名は不明だが、70歳で没し、どういう理由でか、遺産が競売されることになった。

競売品のなかに1冊の手稿本(手書きの本)があった。

手づくりの書物がしっかり封じられ、表紙に「医学の無類で最も深い秘密」と記されてある。

競り合いの末、裕福な町医者が非常な高価でこの本を落札した。

さあ、なにはともあれ、当代の名医が書き遺した「医学の秘密」である。

なにか画期的な治療法か、あるいは不老長寿の妙薬の処方か、さぞかし貴重な学殖知識が述べられてあるだろう。

ふるえる手で封印を切り、本を開いた。

なんと、どのページも白紙である。

いや、第1ページだけに大きな文字で、こう書いてあった。
「頭を冷やし、足を温かくし、体を窮屈にするな。そうすれば、お前はすべての医者をあざ笑うことができる!」

ことの真偽はともかく、これは「健康説話」としてよくできた話である。

実際、頭を熱くしない、足を冷やさない、窮屈な衣服を着ない──どれも、健康法の基本的な心得である。

「頭を冷やし、足を温かくし」が、いわゆる「頭寒足熱」のことであるのは言うまでもないだろう。

「頭寒足熱【意味】頭部はのぼせず、足のほうは冷えないのが人体の健康な状態であること。また頭を冷やして足をあたためるのが、健康を保つためにはよい方法であること。」─とは、鈴木棠三・広田栄太郎編『故事ことわざ辞典』の簡にして要を得た説明。

人間の体は、上半身は温度が高くて(心臓を中心に37度前後)、下半身は低く、とくに足は31度以下だ。

このような体温の上下差は、全身の血液循環をわるくする。

血液循環がわるくなると、動脈からはじゅうぶんな酸素や栄養が送られてこない。

静脈からは老廃物や炭酸ガスがスムーズに出ていかない。

そういう状態が長く続くと、しだいに体調が低下し、本格的な悪化(つまり病気)を招くことにもなる。

だから、病気を防ぎ、病気を治し、健康を保つためには、まず体温の上下差を解消し、下半身の冷えのない状態をつくらなければいけない。

そのための最も効果的な方法は「靴下の重ねばき」と「半身浴」である。

─と、「冷えとり健康法」の第一人者、進藤義晴先生は勧める。
冬はもとより夏でも靴下をしっかりはき、毎日一度は、みずおちから下をぬるま湯(体温よりやや高い程度の湯)に20~30分つけてじっくり温める

この二つを励行するだけで、多くの病気や症状が軽快し、体調がめきめきよくなるはずだ。現代日本のブールハーフェは、そう力説した。

内輪話─。

いま「半身浴」という言葉はだれでも知っていて、『広辞苑』(第六版)にも載っているが、そもそもの始まりは、小生が進藤先生の話を聞いて、雑誌『壮快』(1989年3月号=マキノ出版)に記事を書いたとき、編集部がかんがえた造語である。

取材に同行した若い編集者は、現在、同社の社長である。

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焼け焦げの発がん性 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(2)

 焼け焦げの発がん性

 友人にいわゆるキャンサー・フォビア(がん恐怖症)みたいな男がいて、焼き鳥、焼き肉、焼き魚などはいっさい口にしない。

 動物性たんぱく質に多く含まれるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)が焼けると、発がん物質に変わるから─というのだ。

 目玉焼きの焦げた部分も絶対、食べない。

 パンの耳もむしり取って自分は食わないのだが、近所の小公園に集まるハトに投げ与えている。

 ハトはがんになってもいいと思っているのか?

 ま、なにを食おうが食うまいが、他人に強制さえしなければ、当人の勝手である。

 しかし、それを一般論にされては困る。焼け焦げを食べても、がんにはならないことがわかっているからだ。

 こう言うと、国立がんセンターの「がんを防ぐための12ヶ条」には「焦げた部分はさける」とあるではないか─と反問する人がいるかもしれない。

 あなたも古いのです。

 2011年発表の「がんを防ぐための新12か条」ではその条項は削除されています。

 肉や魚にたくさん含まれているアミノ酸が焼けると、細胞の遺伝子に突然変異を起こす物質(変異原性物質)ができる。

 なかでもトリプトファンからできる2種類の物質〈トリプP1、トリプP2〉は、特に強い変異原性=発がん性をもつことが動物実験によって確かめられた。

 そのため肉や魚の焼け焦げを食べるとがんになる─ということになった。

 だが、その発がん実験は、合成された純粋なトリプP1やP2を、マウスに大量に与えて行ったものである。

 実際の肉や魚の焼け焦げのなかに含まれるトリプP1やP2は、1㌘当たり1ナノ㌘というきわめて微量なものでしかない。(1ナノ㌘は10億分の1㌘)。

 もし実験で与えたトリプP1やP2と同じ量を、本物の焼け焦げの状態で食べさせるとしたら、体重30㌘のマウスが、真っ黒焦げに焼いたイワシを毎日70㌔㌘、1年以上も食べ続けなければならない計算になるそうだ。

 仮にマウスと人間の、発がん物質に対する感受性が同質のものだとして、これを人間に当てはめてみると、体重60㌔の人が毎日140㌧もの真っ黒に焼いたイワシを食べ続けることになる。

 つまり、現実の問題として重要なのは、発がん性があるかないかではなく、どれだけの量あるか─なのである。

 物質の性質をみることを定性分析、量をみることを定量分析というが、定性分析だけにこだわると、人は往々にして科学的迷信のとりこになる。

 焼け焦げ恐怖はその最たる一つといえるだろう。

 むろんパンの焼け焦げも問題外だ。

 それはあのハトたちのためにもよろこばしいことである。
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食い合わせの真偽 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

 健康常識ウソ・ホント(1) 

「同食」の禁忌少なし

 食い合わせ─というものがある。

 ウナギに梅干し、スイカに天ぷら、タニシにそば……などというあれだ。

 むかし(昭和10年代)、いなかの家の台所の壁に食い合わせの絵が貼ってあった。

 雑誌『家の光』の付録か、富山の薬屋さんの景品だったか。

 タブロイド判ほどの紙にいくつもの食品の組み合わせが原色で描いてあった。

 一々は憶えていないが、いま記したもののほか、カニと氷水、サバとカボチャ、肉とホウレン草……といったふうだったはずだ。

 この食い合わせの原典は、たぶん貝原益軒の『養生訓』だろう。

 同書を開いてみると、

「同食(くいあわせ)の禁忌多し、その要(おも)なるをここに記す。

 猪肉(ぶたにく)に、生薑(しょうが)、蕎麦(そば)、胡荽(こすい=コエンドロの漢名)、炊豆(いりまめ)、梅、牛肉、鹿肉、鼈(すっぽん)、鶴、鶉(うずら)をいむ」とはじまり、

「南瓜(ぼうふり)を、魚鱠(なます)に合せ食すべからず」まで、100を超える食い合わせが挙げてある。(『養生訓』巻第四)。

 もしもそれがホントなら、うっかり食うことも飲むこともできない。

 なにしろ「酒後に茶を飲むべからず、腎をやぶる」というのだから─。

 無茶苦茶とはこのことだろう。

 栄養学の大家、川島四郎先生は、食い合わせの真偽を確かめるため、一つ一つ試食された。

「全部、大丈夫でしたよ」と笑っておっしゃった。

 では「食い合わせ」などないのか。

 あながちそうともいえない。

『養生訓』が挙げた食品には、牛肉、鹿肉など肉類、魚鱠、魚の鮓(すし)、生菜、冷水…その他、いたみやすく、食あたりしやすいものが多い。

 また、ちょっと想像してみても、ウナギのかば焼きと梅干しとか、天ぷらとスイカなんて、とても一緒に食う気がしない。

 味の調和がとれないと、心理的に不快感を覚え、腹の調子がおかしくなることだってあるのではないか。

 この点について、『養生訓』に、

「食物の気味、わが心にかなわざる物は、養いとならず。かへって害となる」とあるのは正解だと思う。

 益軒という人は、徹底した少食主義で、肉でも、魚でも、飯でも、野菜でも、「多食すべからず」の一点張りである。

 食べ物ばかりか、酒も「少しのみ、少し酔へるは、酒の禍なく」と説いている。

 ごもっともだけど、ちっとも盛り上がらない酒を飲んだ人のようだ。

 もっとも、考えてみると(考えるまでもなく)、なにがいけないといって、暴飲暴食ほど体を害するものはない。

 その意味では、この二つこそ「食い合わせ」の最たるもの─であるだろう。
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